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ダンジョンの救助部隊  作者: 結城一
第二章 肉塊

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18/33

18 奪われる腕

 やっと瓦礫(がれき)の上から覗く彼の顔が見える。

 そして向こうの空気が流れ込んでくる。

 その途端、吐く息が白く見えるほどに気温が急下降する。

「本当に寒い! 何も見えない⁉︎」

 両手で目の前の大きな石を動かすと彼がその狭い隙間に体を無理矢理押し込んでくる。伸ばされた腕を掴んで力一杯引っ張りはじめる。彼の腕の包帯に血が滲んでいる。きっとぶつけた時に焼き切れていなかった部分が開いてしまったのだろう。

 

カタカタカタカタカタカタ

 

 音があまりにも近い。まるで隣にいるようだ。私はユートに気を付けるように言おうと彼の表情を再び見る。

 

カタカタカタカタカタカタ

 

 彼の上顎と下顎が激しくぶつかり合っている。私の顔を見ながら、顔面いっぱいに広がった笑顔で歯だけが高速で動いている。限界まで広がった目は私と視線が合うと嬉しそうに細まる。

 

カタカタカタカタカタカタ

 

 物凄い力で手首を掴まれる。

「はは……はははははははははは」

「ユート! 手を放せ! ユート!」

「はははははははは!」

 彼は狂ったように笑いながら私の腕を自分の方へと引っ張る。そして徐々に裂けていく頬。糸を引きながら肉が割れ、口内の赤い粘膜がうごめく。歯茎は腐ったかのように赤紫に変色をし、浮腫んでいる。

 私の手をその恐ろしい彼の口元へと引っ張られていく。

 

――――食われる!

 

 戦慄をする。ユートの頭部に手を叩き付け、すぐに右脚を頭の横に叩き込む。肉の潰れる音がして彼の手が緩む。その隙に手を引き抜き、彼から下がる。

「シロイィィィィイイ」

 彼がゆらりとした動きで立ち上がる。彼の姿で、彼の声で、だがねっとりとした話し方は普段の彼とは別人のように聞こえる。

 メキメキと音がして彼の首が真横に曲がる。

 その異様さにまるでこの世の物とは思えない異物を見ている感じを受ける。彼の裂けた頬から少しずつ皮膚が爛れ落ち、下顎の皮膚がズルリと滑り落ちる。

 

ビチャ……

 

 それは濡れたと共に冷たい床石へと落ちる。皮膚の下の筋肉が露出をし、白黄色っぽい粒々とした皮脂が筋肉の隙間に埋もれている。

「シロオォォォオイイィィィ」

 どこまでも続くか分からない廊下を彼の声がこだまする。

  先程荷物の整理中に出した傷の手当て用の小さなナイフを右手に構え、彼の首に刃先を走らせる。

 腐った匂いと濡れた音に首元がぱっくりと割れる。

 私は腕を振り上げて今度は反対側からナイフを振り下ろす。

 

ゴトン

 

 重そうな音で彼の頭が地面へと落ちる。あの蔦の中を流れる血のような液体が切り傷から噴き出る。

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