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ダンジョンの救助部隊  作者: 結城一
第二章 肉塊

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17/33

17 音と恐怖

「……俺の鞄は置いていこう」

「ユート――――」

「シロイ。俺の分の最低限の飲食だけをお前の鞄に移してくれ。確かにこのダンジョンを長期間出られないんだったら鞄がないとマズいが、今日を乗り切れないと意味がない」

「……分かった」

 ユートはパニックにも投げやりになっている訳でもなさそうだ。だが終わりの分からないダンジョンは恐ろしい。特に知られざる階層数を持つダンジョンで怪我だなんて最悪の中の最悪な状況だ。

 荷物の移動を終え、軽く傷の手当てをする。ユートの少し変色し始めた傷の縁については何も言わなかった。

 私達が落ちてきた穴の反対側へと繋がっている通路の奥の方で何かが這い回る音がし始める。

「移動するよ」

「分かった。お前もその足で無理はするな。必要ならば俺を置いて行け。お前を恨んだりはしねぇ」

「ここまで来て置いて行く訳ないでしょう。私の頑張りを無駄にするんじゃない」

「減らず口だけはいっちょ前に元気いいな」

 彼は苦笑しながら私の右側へと回って肩に腕を回す。私は左足を、彼は右腕を失っている。遠慮する事なく圧しかかる彼の体重を支えながらゆっくりと歩いて行く。もうすでに自分の体重を支えられるほどの体力はないのだろう。

 彼の左腕を掴んで音から遠ざかる方へと進んでいく。僅かに足元を照らす明かりが非常にありがたい。

 とても埃っぽく、湿った空気が澱んでいる。深層過ぎるのかここにはあの変な蔦は生えていない。だが時たま壁の中を、影の中を這いずり回る音は相変わらず健在だ。

 

カチッ

 

 小さな音がユートの足元からする。

「トラップ!」

 お互いの声が重なるのと同時に、上半身を低くして飛びのく。私は前方に、ユートは背後に。

 私達がいた床が震え、軋み、一気に沈み込む。天井が音を立てて僅かに降下する。

 

ドォン ドォオン

 

 数秒前まで私達がいた場所に重い石が重なり合うように落ちる。

「大丈夫⁉︎」

「ぁあ! ギリギリセーフだったぜ!」

 見えないが聞こえてくる彼の返事に安堵する。ちょうど通路のあちら側とこちら側とで別れてしまったらしい。

 

カタカタ

 

 異様な音が来た方向、ユートのいる方向から聞こえてくる。

「おいおい、勘弁してくれよぉ」

 彼の小さな呟きが聞こえるよりも先に急いで石をどかしていく。

 

カタカタカタカタ

 

「急いでくれ! 何も見えねぇが腕の毛が逆立っていやがる! 気のせいかさっきよりも寒ぃ!」

 叫びながらもユートは石を投げながら私の方へと進んでくる。私も掴めるだけ岩を掴みながら彼の為の道を作っていく。


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