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ダンジョンの救助部隊  作者: 結城一
第二章 肉塊

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第10話 軟体は怪力

 私は唸りながらそれに剣を振り回し、足を進める。目に液体が入り、視界が濁る。強烈な腐臭に嘔吐反射で喉が引きつる。

 止まらない滴る音や引きずる音にアドレナリンが爆発する。

 左腕に何かが絡み付き、屈んで腕を地面に叩き付ける。肉片が四方へと飛び散り、私はすぐに止まっていた足を動かす。

 ユートの背に飛び付いた肉片に体重を乗せた蹴りを叩き込む。

「シロイ!」

 ユートの腕が伸びて私の頭上の方をとっさに殴る。彼の腕に何かが絡み付き、肉片に埋もれた歯で手首から肘に掛けて噛み裂かれる。

「……ぐっ!」

 ユートの裂かれた傷から真っ赤な血飛沫が吹き出す。片膝で床に崩れ落ちる。

「ユート!」

 彼の前腕に追い被さる肉片を斬り落とす。私は彼の胸倉を掴むと強引に立たせて引っ張り、走り出す。

「深い⁉」

「大丈夫だ! 畜生、軟体なのにどうしてこんなに力が強いんだ!」

 

ィイイイイイイイヤァァァア

 

 異様に甲高い悲鳴に二人共部屋の左の方を見る。

 肉片に半分取り込まれた人間だ。

 顔が肉片と融合したように皮膚が伸びている。

 

――――あれはゴロノフの仲間!

 

 情報塔で見た資料にあったパーティーメンバーの一人だ。確か……ゴロノフの副隊長!

 その男の顔は痛みで歪み、叫び声を上げているように口を大きく縦に開いている。顎の下から指先が五十本近く露出している。それが全てあらぬ方向へ向き、うごめいている。顔の表情は動かないのに舌が異様に伸び、蛇のようにくねり廻る。

「ユート、カバーして!」

 私はすぐに走り出す。また雫が目に入る。悪くなる視界に片目を腕で拭ってから剣を持ち直す。

 

カチャッ

 

 小さな金属質の音がし、私はその個体に剣を振る。肉塊から細い蔦が物凄いスピードで飛び出す。それを切りながら進むが一本一本の強靭さに驚愕する。真っ直ぐに伸びるワイヤーみたいだ。

 

ザシュッ

 

 剣がその男の頭部を斬り落とす。

 ゆっくりと床の上に転がる頭部。肉塊は震え、新しい瘤を次々と切断面から生やし、腐敗した血飛沫を滴らせる。新しい蔦が断面からうごめき始める。

 

ヌチュヌチュヌチュ

 

 頭部の方から音がする。急いで視線を向けると断面から数多の蔦が伸びてくる。それが地面を探し、硬い石に触れるとゆっくりと頭部の傾きを正していく。ムカデのような足の蔦をせわしなく動かし、その頭部がこちらへと向く。

 歪んだ口と表情が更に縦長へと伸びてくる。眼窩が割れ、粘着液が飛び散る。真っ黒な影となった眼窩に夢を思い出し、恐怖を感じる。

「逃げるぞ、シロイ!」

 暗い通路を走る。私達の足が進むにつれて背後でしていた物音が少しずつ小さくなっていく。

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