漕ぐ
空に雲を浮かべる
畝のようにつづく雲を
うすく広がり透ける雲を
指先で細かく千切った雲を
浮かべても浮かべても
足らない空に気付けばいつも描いている
海に波を響かせる
岩肌に砕け散る波を
巻き貝のなかで唸る波を
砂に沈む足跡すべて覆い隠す波を
響かせても響かせても
埋まらない海原に飽きもせず綴っている
波に被さり打ち寄せる波のように
言葉を越えようとする言葉を探している
永遠と繋がる一瞬の輝きを
余白を走り抜けてゆく未来を
幾重にも内包し続ける過去を
水平線に降り立てば
また新たな水平線が産み出されるように
追いかけては遠ざかるそこへと
諦めることもできずに並べ続けている