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第84話 炎上

 しばらくすると、なぜかボクは焚き火をしていた。

 そういえば、数年前に無人島でテント張ってバーベキューしたっけ。

 薪が燃えるパチパチという音と、煙の焦げ臭いにおい。

 ……ああ、何だかあの頃が懐かしいなぁ。


 すると、どこかでボクを呼ぶ声がする。

「……さん、タマキさん」

 誰だろう?ボクを呼んでいるのは。

「起きて、起きて……」

 あー飯盒飯が炊き上がったのかな?

 炊き上がったら、火から下ろして逆さ――



 

「火事です!! 起きて!」

 しまった!夢か!

 どおりで音や臭いが随分とリアルだと思ったよ!

「状況は?」

「出火元は裏口付近です!また魔法が効かなくなってて、消火が出来ません!」

「くっ……またか! 2階の皆さんは?」

「はい、全員下に降りて貰いました。」


 裏が火元ということは、奴らは表玄関側で待ち受けているはず。

 ボクはピストルベルトを付け、AKMを片手に玄関へと走る。

 ロビーには2階から降りて来た人たちで騒然としている。

「やられたよ!まさか火をかけられるとは!」とヒョウ局長。

「ボクもうっかり油断してました。どこから避難しましょう?正面突破はかなり危険な気がしますが。」

「ワタシもそう思う。玄関の向かいに魔導士を含め8名程度が陣取ってコチラを狙っている。」

「他の出口は?」

「あるにはある。が、ちょっと狭い。地下通路だ。」

 

「……時間を稼ぐ必要があるということですね? では今すぐ始めましょう!」

「既に数名でルートを確保しているから、すでに避難を始めているよ。」

「戦える者はどのくらいいますか?」

「ワタシを含め5人、後は君くらいだ。」


「ところで地下通路の出口の危険性は?」

「大丈夫だ、警察に繋がっている。」

「ならば全員こちらへ回せますね?」

「ああ。しかし今回はちょっと面倒かもしれん。奴ら、弓使いを4人は連れてきている。」


 表玄関側のカーテンの隙間から表を覗くと……確かにいるね。

 しかも火矢の準備を始めている。

 表側からも火を掛けてくるつもりか!


 ネコ村の魔導士が、ボウガンを持って来た。

「タマキさん、どうしましょう?」

「とにかく火矢と奥の魔導士を先に潰したいですね。できますか?」

「もちろん。ただこの距離だと、奴らの盾に阻まれて一撃で仕留めるのは無理です。」


 ボクはAKMにマガジンをセットし、ボルトを引くとネコ魔導士に渡す。

「コレはボウガンと同じで、狙って引き金を引くと30回は撃てます。2階で爆発音がしたら、外の奴らにバンバン撃ち込んでくれますか?」

「わかりました!なるべく早めに始めてください。気が急いてしまって……。」

「なるほど、奴らが来るのをじっと待っている道理は無いな! まずはワタシたちも同じように弓やボウガンで出来ることはやろう。みんな、すぐに取り掛かるぞ!」


 ボクはマカロフを手に階段を上り、カーテンを開けながら廊下の端まで走る。

 カーテンを開ける度に何かが飛んできて、窓ガラスをバリバリ割ってきた。

 おそらく向かいにいる奴らが、矢か何かを撃ってきているのだろう。

 

 窓が割れたおかげで、充満した煙がゆっくり抜けてきた。

 実に好都合。

 するとボクを追って、ロープとSVDを持ったスカウトタヌキも2階へ上がってきた。

「あん魔導士ば先に倒してくいたら、昨日と同じように催眠魔法で仕留めるぜよ!」


 ボクたちは身を屈めながら移動し、それぞれ別の窓からそっと外を観察する。

 弓を構えたサル人1人がコチラ側をチラチラ見ているようだが、今のところまだボクたちが覗いているのには気づいていないようだ。

 よし、ココからなら盾も邪魔にならず、あの魔導士たちに弾を送り込める。

 そのままゆっくり床に座り、マカロフのマガジンをいくつか引っ張り出そうとダンプポーチを探ると、なぜかSVDのマガジンが出てきた。

 

 ……が、何だかズッシリ重い?

 昨日ポーチに入れた時は、空っぽだったはずだが?

 見ると、確かに7.62x54mmR弾(※1)がみっちり入っている。

 SVDは10発弾倉……重さからしても、間違いなくフルロード。

 

 コレは……撃てるのか?

 土壇場だが、試してみるしか無い!


「アイナさん、そのSVDをコチラへ!」

「コレか?……一体何を始めるぜよ?」

 SVDを貰い受けると、代わりにマカロフを渡す。

「コレを持って中央あたりへ移動してください。ボクが合図したら、外の奴らに2〜3発撃ち込んで、すぐに隠れて。」

「ワシに当てられるじゃろか?」

「当たれば儲けもん。目的は陽動です。」

「なるほど、あい分かった。」

 

 SVDからスコープ(※2)を外して、ダンプポーチへ。

 ゼロインが終わっていない照準器など、なんの役にも立たないからね?(※3)

 そしてマガジンをセットし、ボルトを引いて弾薬を送り込む。

 動きは至ってスムーズ。

 ……『魔法のダンプポーチ』から取り出したならば、奇跡は起こるはずだ。


 窓の端からそっと銃を構え、杖を持って魔導士らしい格好をしたイヌ人男性に向ける。

 やはりコイツは、AKと違ってボクには長すぎて扱いづらい。

 しかも、このアイアンサイト(※4)でさえ未調整だから、前回のような狙撃は難しい。

 ただ、胴体中心を狙っていれば、この距離なら体の何処かには命中する。

 数発撃てば、おおまかな傾向もわかるはず。

 もっともそれは……ちゃんと弾が出れば、の話だけどね?


 スカウトタヌさんが移動したのを確認すると、ボクは合図を送る。

 さぁ、作戦開始だ。

 

 ――――――――――


 ※1 SVDやモシン・ナガン等のロシア系狙撃銃で使用されている、小銃用実包。1891年から使用されている結構レトロな銃弾。AKM用とは大きさも威力もまるで違う。

 ※2 SVDの場合、本来ならスコープを外すと同時に、ストックに付いているチークパッド(高さ調整用の小さな『枕』)も外すべきである。が、今回は試作ストックなので、そもそもチークパッドが付いていなかったのだ。

 ※3 スコープを銃に取り付けただけでは、そのまま狙ってもまず命中はしない。必ず厳密な調整が必要なのだ。コレがまぁまぁ面倒な作業なのだよ……。

 ※4 SVDは狙撃銃のカテゴリーに入っているが、標準で金属製照準器が備えられており、光学照準器が破損した場合等に使用される。ただコレも調整は必要……。

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