表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/93

第83話 視線

 そして3本の一升瓶が空になった頃、会はお開きとなった。

「もうちぃと飲み足らんけんど……今日も見張りせんといかんき、ワシゃ先に風呂入るぜよ!」

「ウチらも先にお風呂いただきますよって。タマキはんも一緒にどうどす?」

 皆さんとりあえず、お風呂の気分になったようだね。

 でもボクはもう一仕事……。

「あ、ごめんなさい……まだ打ち合わせが残っているもので。どうぞごゆっくり。」


 もうそろそろ正午か。

 部屋の主灯を消し、間接照明と小さなテーブルランプを点灯させる。

 カーテンの隙間から町の様子を伺いながら、ギルド長はワイングラスを傾けている。

「夜も更けてくると、さすがに人通りもまばらになって来た。今のところは問題なさそうだな。」

「今のところ、私の探知魔法にも異常はないですね。」

 10倍スコープのついた杖を傍に置いて、ネコ魔導士はチビチビとウイスキーを楽しんでいる。


「タマキさん、明日はみんなで村に帰るのかい?」とヒョウ局長。

「そうですね。いろいろとやりたいこともありますし。ついでに隣村の被害者さん2人も、お送りしなくてはなりませんので。」

「そうだな? ああ、そういえば……昨夜捕らえたサル人の魔導士は、その『隣村』で攫われた内の1人だったというじゃないか?」

「ええ。ボクもそれをさっき聞いて驚きました。」

「つまり……村に内通者がいたというコトになるな?」

「そうです。なので……もしかしたら、まだあの村の中に紛れている可能性も否定できません。」


 局長はしばらく考えた後、話を続ける。

「その状況で被害者を村に返すのも、得策とは思えないなぁ。」

「そうなんですよ。ボクもそう思ってはいたのですが……だからと言ってココに留め置くわけにもいかないでしょうし。何しろ『最前線』ですから。」

「だよなぁ〜? まぁでも、村よりもこの町のほうが危険にさらされる確率は高いからな?」

「ええ、どこか安全なところに移送できるとイイのですがね?」


 すると、のじゃロリがシャンパンの瓶を抱えてやってきた。

「ん? おぬしたちどうした? 浮かない顔じゃのう? 何ぞあったか?」

「あ、ミレイネ様、実は――」と、さっきの件の説明をするヒョウ局長。

「……ふぅむ、なるほどのう? ワシの一存じゃ決められんが、ウチの村でしばらく預かるというのはどうじゃろうか?」

「それは願ってもない! ギルド側としても、そうしてもらえるとありがたいのですが。」

「明日帰ったら、ユリミや皆とも話をしてみるでのう? 結論はそれまで待ってもらえるかの?」

「ええ、それでお願いします。良い返答を期待しています。」


 シャンパンを少しだけ頂いた後、ボクは2階への階段を上りながら、窓の外を確認する。

 すると、不意に向かいの建物から妙な視線を感じたので、スッと窓から離れてその場に座り込む。

 ……誰かがコチラを監視している?

 

 マカロフを抜き、サイレンサーをねじ込んだ。

 そして身を屈めながら別の窓へと移り、カーテンの隙間から辺りを伺う。

 う〜ん、何も見当たらないようだな……勘違いか?


 しばらくすると、猫の事務員さんが2階から降りて来た。

「どうかなさいましたか?」

「あ、いや、ちょっと向かいの建物から視線を感じたような気がして。辺りを見回したのですが……気のせいですかね?」

「ああそれは……ウチの局員が向こうの建物の部屋から、ギルド側を監視しているからだと思います。 あなたは随分と敏感なんですね?」

「そうなんですか? そういうのは早く言っといてくださいよ……。ボクがもし見つけてたら、うっかりコレで攻撃してたかもしれません。」と、マカロフをチラつかせる。

「これは失礼しました。監視員の配置については誰にも知られるな、との局長の厳命でしたので……。」

 まぁ確かに、『敵を欺くにはまず味方から』とは言うけどね?


「今晩は、昨日のこともありますので、この建物の内外から監視をしております。何かあったらお知らせしますので、今日はどうぞごゆっくりお休みください。」

「ありがとうございます。そろそろお風呂が空いたと思うので、軽くお湯に浸かってから休ませていただきますね。」

 

 そういうことで、ボクはマカロフをホルスターにしまうと、早々にお風呂を頂くことにする。

 さすがにネコの村の温泉とまではいかないが、ココのお風呂は思ったよりも大きかった。


 湯船に浸かりながら手足を伸ばし、ゆっくりとお湯を堪能する。

 

 しっかし……異世界に来てまだ1週間も経っていないというのに、毎日何だかいろんなことが満載だなぁ?

 まるでもう、数ヶ月くらいコチラで暮らしているような中身の濃さだよ。

 ……などと考えながら、湯の中でウツラウツラしてしまう。

 

 おっとっと、あんまり長く浸かっていると……このまま寝落ちしそうだ。

 今日は早めにお湯から上がって、さっさと布団に入るとしようかね。

 このまま……朝まで寝かせてくれると有難いんだけどなぁ?


 そしてボクが布団に入る頃……どこか遠くで、犬の遠吠えが聞こえた気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ