表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/92

第80話 試作品

「タマキさんタマキさん! ウチな、ちょっと試作品作ってみたんやけど、コレ……見てもらえる?」

 差し出されたのは、いかにも安っぽいシンプルな杖。

 だがよく見ると、中央辺りに何かを取り付けるアダプターらしきものが増設されている。

「ん?……あ! コレもしかして!!」

「せやねん!この部品、さっき道具屋に寄ってきてな、半端もんから削り出してきたんよ!」

 

 で、タヌっ娘が雑嚢からおもむろに取り出したのは……スコープ。

 ストックがボロボロで構えることすら出来ない、M24狙撃銃についていた10倍率のスコープだ。

 ああ、確かこのあいだ発掘してたのを預けていたけど、わざわざ持ってきてたんだ……。


 スコープのネジを緩めて、それを杖に取り付け、杖先のキャップをポンと抜くと……確かにそれっぽいね?

 で、取り付けたスコープの下側に小さな穴が開けられていて、そこにマッチ棒を差し込んでいる。

 ……引き金の代わり? にしては強度が足らんような?


「コレで準備完了や♪」

 杖のグリップを肩付けし、スコープを覗いてみせるタヌ娘。

「ココ覗いた状態でマッチ棒を引くと、パチンって折れて音が鳴るやろ?」

「あーなるほど、そうきたか!! コレはアイディア賞ものですよ!」

「せやろ? まあでも折れる音が小さいから、たぶん静かな所じゃないと使えないとは思うねんけんどな?w」

「でもコンセプトはコレで合っているはずです、すごいですね!」

「えへへ、あとはアイナさんに試してもらうだけやん!」


 杖そのものの形なのでちょっと構えにくいが、スコープを覗くと10倍の割には意外と手ブレが少なく像が見やすい。

 コレはまるで『ジャッカルの日』の暗殺銃っぽいね?(※1)

 小さい弾薬だったら、1発くらいは撃てるかもしれんなぁ?w


 港の船にスコープを向けると、SVDの倍以上の倍率なだけに、より細かいところまで観察できる。

「お!新しい遠眼鏡作ったんですか? あたしも見たいです!」

 ポニテ猫さん、明らかにワクワク顔。

 皆さん、こういう新しいものには興味があるものなのだろうかね?


 杖を構えてスコープを覗いては、みんな「おぉ〜〜!!」と感嘆の声をあげている。

「黒船もちゃんとみえるんだろか?」と魔導士ネコさん。

「まだまだですよ。あともう半分近づけばマシかもですね?」

 あと1〜2時間というところか……それでも船までは10km程度はあるだろうから、詳しくは見えないだろうけど。

 もちろんそれだと、弾丸も魔法も届かない距離。

 


 

「飲みもん切れたから、ウチら買い出し行ってくるで!」

 タヌ娘とポニテ猫の2人が、観測業務?を離脱する。

 皆さん明らかにヒマを持て余しているけど、まぁ喉は乾くからねぇ……w

 

 ボクは相変わらず、スコープで港の方を観察する。

 大きな商船が帆を揚げて、出航準備を始めているらしい。

 ネコミミ・イヌミミの船員たちが、荷物を担いだり綱を引っ張ったりする様は、見てて飽きない。

 まぁ1kmも離れていると……いくら10倍スコープで見ても、芥子粒のようにしか見えないけどね?

 2人の魔法使いの解説を聞きながら、杖とSVDを取り替えっこしながら3人で港を見張る。

 単眼鏡では視野も狭いので、双眼鏡があると便利そうだね。

 今度また、あのガラクタ倉庫を漁ってみるとしよう。

 

 1時間もすると、買い出し班が帰ってきた。

 ふと海を眺めると、黒い船がかなり近づいてきたのを感じる。

 片膝をついて座り、杖を構えると……赤い旗らしきものがはためいているのが見えた。

 まだこの距離では旗の模様は確認できないが、黒船が3本マストの大型船だということだけは確認できる。

 

「あの黒船、船尾に赤っぽい旗が立っていますね。」

「赤なら多分、サル国船籍じゃろうて。商船か軍艦かは模様をよく見ないと分からんのじゃがな?」

「わたしも見たいです〜! 代わってくださいよ!」

 魔導士ネコに杖を渡すと、タヌっ娘から代わりに瓶を手渡される。


「珍しい飲みもんがあったから、買うて来たんよ? 何でも『シャンパン』とかいうらしいんやけど……タマキさん、栓の開け方知ってはる?」

「ええ、そんなに難しくないですよ? 開けてみましょうか?」

「助かるわぁ〜 あ、一緒にイカの一夜干しを買うて来たで!」

「それは……ちょっと火で炙ると美味そうじゃのう?」

「じゃあそこらの枯れ木を集めて、火でも焚きます?」

「……火を焚く前に、飲み物の方がなくなってしまいそうじゃがな?」

「あはは、それは言えてますね〜」

 

「あ、そろそろコップを準備してくださいね。もう直ぐ栓が開きますよ?」

 と言いながら、ボクはコルク栓に力を込める。

 

 そして『ポン!!』と勢いよく栓が抜けたその時……不思議なことが起こった!!(※2)


 ――――――――――


 ※1 1971年に刊行された、フレデリック・フォーサイスの小説。

 ※2 またかよ!?w

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ