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第76話 夜襲

「タマキさん、タマキさん」

 2時間は眠っただろうか。

 ボクは、ネコ娘のささやき声で起こされる。

 

「悪意が……やってきます。」

 彼女はボクにすがりついて離れない。

「どうしたの?悪い夢でも見た――」

 あ!この娘、『解る』んだな?!

 

「詳しいことが何かわかるかな?」

「詳しくは……でも、もうすぐ囲まれます。」

「分かった。ボクは『警戒』に入るから、まずミレイネさんを起こして一緒にいてくれる?」

「はい、分かりました。」

 

 そうなると、そろそろあの2人が張った『網』に何か掛かっててもおかしくないはず。

 ボクはAKMを手にして、大広間からロビーへ。

 すると、ネコ村自警団の魔導師が階段を駆け下りてきた。

 

「どうですか?セーラさん。」

「数名の足音を感知しました。音の重さからして、武装しているものと思われます。探知魔法が阻害されていて、詳細は分かりません。」

「魔法を阻害されているということは、相手に悪意があるものと見て間違いないでしょう。2階の人を起こしてもらって、引き続き警戒をお願いできますか?」

「承知しました。」


 やはり、『悪意』の正体はコレか。

 まぁそうだろね……ココに来れば、簡単に目的のものを得られるわけだからね。

 

 大広間の扉を開けると、のじゃロリさんも目を覚ましていた。

「どうじゃ、状況は?」

「武装した数名がこちらに向かっていると思われますが、探知魔法が効かないそうです。」

「……となると、少なくとも1人は魔導士を連れているということになるのう?」

「ええ、おそらくは。」

「分かった、とりあえず皆を起こすとするかの。ミーナ、お前も一緒に頼むぞよ?」

「はい、ミレイネ様。」


 そうなると――

 ボクはロビーにある円卓で、ダンプポーチの中身を確認する。

 AKMのマガジンが13本に、マカロフ用は5本。何とかなるか?

 ってか、こんな時に何だけど……何だかだんだん数が合わなくなってきた気もするなぁ……?


 局長も起きてきた。

「どうやら奴らは、ワタシたちを寝かせてはくれないらしいな。」

「使える武器はありますか?」

「いくつかはな。奥の倉庫から、マディたちが持って来てくれるはずだ。」


 ボクは玄関横に行き、ゆっくり窓のカーテンをめくって外を観察。

 向かい側の建物の際に2人、手前の茂みに1人か。

 距離はざっと15m。

 

【もう既に囲まれているわね!】

 あらら、母ネコさん起こしてしまった。

【私がいないと情報の連携ができないでしょ? あなたとセーラさんが確認したのを合わせると、ざっと8名ね。長剣で武装しているわ。】

 なるほど、でも……問題はおそらく魔導士だなぁ。

【確認はできていないけど、恐らく向かいの建物の2階に潜んでいるわ。そこが特等席だからね?】

 なるほど。探してみるか。


 ヒョウ局長に、母ネコさんの分析の内容を伝える。

「奴らはどう来ると思う?」

「そうですね。武器からして、突入して来るしかないと思います。1階の窓は全て鉄格子が嵌っているので、まず一番弱そうな正面玄関を破壊して侵入。裏口は鉄の補強が入っているので、破るのに時間がかかりそうなので……ボクならパスします。」

「よく観察してるね。まぁ君のいう通りだろう。」

 

「でも問題は、恐らくコチラの魔法が封じられていること、でしょうか。正面玄関を突破されれば、逆にボクたちにはあまり逃げ場がないですね。」

「うむ、そうなんだよ。攻撃魔法を使えないとなると、コチラの戦力は思った以上に少ないからな。奴らになだれ込まれると厄介だ。 ……コレだとみんなを守りきれんかもしれん。」

「一旦このカウンターの中に、皆さんに入ってもらうのはどうでしょう?このカウンターの鉄格子なら、ちょっとやそっとでは破られないでしょう。」

「なるほど、君は面白いことを考えるね? この中からなら、弓矢も使えそうだしな!」

 早速、2階の皆さんを含めて、近接戦闘ができない人はカウンター内に移動してもらう。

 

「ただ、このままだと戦力が少ないのには変わりないですから、とにかくあの目障りな魔導士を潰したいと思うのですが。おそらく向かいの建物に潜んでいるはずです。」

「可能なのか?」

「分かりません。が、まずはコレでやってみます。」

 とAKMを掲げる。

 

「ふむ、だがそれも魔法なのだろう?」

「うーん、どちらかというと……弩弓(※1)や投石器に近いですね。牢にあった『魔法消滅器』を破壊できたから、おそらく今回も可能かと。」

「おお、そうなのか?……よく分からんが、まず試してみてはくれまいか?」

「ええ、すぐにでも。それまで何とか持ち堪えてください。」

「うむ、手短に頼む。」


 ボクはAKMとSVDを手に階段を駆け上がる。

 向かいの建物が見える窓に取り付くと、窓を開けて観察を始める。

 しばらくするとアイナさんが来て、ボクを窓から引き剥がした。

「2階右から2番目!見られとるぜよ!」

「ありがとう、助かりました。」

 

 その窓は開けたまま、ボクたちは身をかがめて建物奥まで走る。

 カーテンの隙間から向かいの窓を確認。

 ああ、確かに……いるね、サル人女性か?ローブっぽい服のようだ。

 下品なほど大きな魔石が嵌った魔法杖も見える。


 出来うる限りゆっくりとカーテンを引き、10cm程度の隙間をつくると、窓から離れてもう一度確認。

 相手はまだ、開け放った窓の方ばかりを見ているようで、まだコチラに気づいてはいないようだ。


 まずはスカウトタヌキさんに、SVDで『失神魔法』が使えるかどうか試してもらう……が、1分経っても倒れない。

 やはり今のままではコチラの魔法は通用しないようだ。

 

 ……ならば、予定通りこのAKMで。

 ボルトを引き初弾を装填し、窓は閉めたまま狙いを定める。

「耳は塞いでおいてください。あとで後悔しますよ?」


 ――――――――――


 ※1 弩弓どきゅうは、いわゆるクロスボウのこと。通常の弓に比べ、太く短い矢を使用する。

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