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第73話 感傷

「……しっかしまぁ、スネイクのアホが消息を絶ってもう16年か。」

「そうだな……。ホントあれからずいぶん経ったものだな。」

「ワイはなぁ……あのアホがまたいつか、ココにひょっこり顔を出すんやないか思うとんねん。せやからなぁ、夜になったらこのバーをずうっと開けとるんや……。」

「ふふ……『ミナミの悪魔』も、たまには感傷に浸るものなんだな?」

「はは、お前もワイも……そんだけトシとったっちゅうこっちゃ。」

 

 そう言いながら、強面のおっさんはグラスにバーボンを注ぎ、グイと一気に呷った。

「あのドアホがな、いつもんように階段を駆け上がってきてなぁ……『待たせたな!』っちゅうて現れるんやないか、って思うんや。」

「あはは、それ! あいつ……いつもそればっかだったよなぁ。」

 ……えっ!!!


「今、何ていいました?!」

 ボクは思わず、カウンターに身を乗り出す。

「お?どないしたんや嬢ちゃん!」

「ええと、スネイクが遅刻魔だってやつかい?」

「いえ、あの……ボクの知り合いにも、口癖が『待たせたな!』って人がいて! でもスネイクって人、写真、いや光画で見たんですが……ボクの知っている人よりも若すぎて違うと感じて。でも!もしかして……!」

 ……そしてボクは、『熊さん』のことを3人に話した。


「なるほどのう? 確かにおぬしの言う通り、同一人物かもしれんのう?」

「せやなぁ? 何しろコッチに転生するときは……必ず20代の姿で来るんやからなぁ?」

「え!そんな法則があるんですか?!」

「ああ、あるんや! ワイなんか、日本にいたときは63歳やったんやで? それがコッチ来るとな、ハタチのハンサムボーイに戻っとったんや! いやぁ〜もうモテてモテてしょうがなかったで〜!あん時ゃ!」

「へぇ〜?それは初耳だな? あの時分にそんなことあったかねぇ?! でもワタシも、どこかに転生するとピチピチギャルに戻れるんだろうか?」(※1)

「わはは、そん時ゃ若返って男になってたりしてな?」

「何を言うか。若返ったワタシは、このセクシーボディで異世界のオトコをバンバン引っ掛けるんだからな!」

「わははは!出たな欲望丸出し女豹めが!」

「丸出し上等!! 女は愛に生きるのよッ!」


 20代?!

 何だか、とんでもない事実を発掘してしまった気が。

 

 そうするとあの写真の人は、ホントに熊さんなのかもしれない……

 そしてもしかしたら、どこかで生きているのかもしれない……

 そう思うと、……何だかちょっと勇気が湧いてくるよ。


 2人のやり取りを微笑ましく見ていた『のじゃロリ』だが、グラスの中身を一気に飲み干し、そして一言。

「盛り上がったところ悪いのじゃが、そろそろ本題に入ろうかの?」

「あ、はは、そうでした!……ちょっと思い出話が過ぎました。」

 で、ボクたち3人は、今までの事件の顛末について話しはじめる。


「ほうか……。嬢ちゃんも、コッチ来てまだ日ぃ浅いっちゅうんに、災難やったなぁ。まぁしかし……せやからと言うて、それがハニーダが直接指示したっちゅうという証拠もないからのう? 憶測でモノ言うたら、後で痛い目見るんはコッチやからなぁ?」

「そうかもしれません。しかし、嫌疑不十分だからといって、何も対策を取らないのもどうかとは思うんです。」

「まぁ嬢ちゃんの言いたいことは分かる。ミナミでも、確かにあのグループには相当数の人材を紹介しとるし……ワイもあいつらは黒に近いんやないかとは思うとるんや。」

「だったら――」

「まぁまぁ待ちぃや。……ワイはこんなナリしとるけんどな、一応カタギなんやからな? そうそう表立って『戦争』起こすわけもいかんのや。」

「ほほう? 若い時分は『ミナミの悪魔』と呼ばれた、この町きっての喧嘩屋じゃったのが……いつの間にやら、一端のギルドマスター面するようになっておるとはのう?」

「茶化さんといてくださいな、ミレイネ様。……ワイも、もうエエ大人ですよってからに。」

 強面男はそう言うと、ちょっと気恥ずかしそうにしながら2杯めのバーボンを呷る。

 

「まぁ、嬢ちゃん……そう焦らんと――」

 コトン、とバーボンのグラスがカウンターに置かれる。

「モノには順序があるっちゅうこっちゃ。悪いようにはせえへんよって、もうしばらく辛抱しといてや。」

 

 ――――――――――


 ※1 ハンサムボーイにピチピチギャル……この単語を使っている時点で、感覚が古すぎる気が・・・www ちなみに『ハンサムボーイ』は1990年にリリースされた、井上陽水の13枚目のオリジナルアルバム。かの有名な『少年時代』が収録されている……って、知らんかw

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