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第70話 SVD

「こんにちは! 遅なってもうたわぁ〜。」

「ユカリさんもタマキさんも、ホントに無事で良かった〜♪」

 やってきたのはタヌっ娘マレッタとネコ娘ミーナ、そしてネコ人のセーラさん。

 ちなみにセーラさんは、自警団所属の魔導士らしい。

「タマキさんの杖とベルト袋、持って来たで!」

「あっ!ありがとうございます。」

 

 ボクはピストルベルトを着物を着た上から装着し、ダンプポーチからマカロフを取り出して、ホルスターに入れておく。

 まぁ何とも微妙な格好だが、安心感があるよ。

 そしてAKMにも、ダンプポーチから取り出したマガジンを取り付けておく。

 ……まぁ今更武装しても、しばらくボクの出番は無いと思うけどね。


「あとなぁ、朝に頼まれてたやつも完成したで! ミーナちゃん、アレ渡したって!」

「あっコレですね? タマキさんどうぞ〜♪」

「わざわざ持って来てもらったんですね、重かったでしょ? ありがとう。」

「杖っぽいのを布でグルグル巻きにしてあったから、ちょっと不思議に思いましたけど、そんなには重くなかったですよ?」

「ああ〜これはね?こういうやつなんだよ!」

 と言いながらボクは、包帯のように巻いてあった綿布を解いていくと――


「「「おぉ?! それは?!」」」

 皆さん不思議そうな目でその『杖』……SVD(※1)を眺めている。

「あ、え〜とコレは……何と言いますか――」

「コレはね、タマキさんの雷撃魔法の杖です♪」

「え?あ……あはは、そんな感じです……。」

 

 もっとも、このSVD系用の銃弾はAKMよりも大きなものを使うので、ボクの手持ちの銃弾で適合するものは持ち合わせていない。

 つまり、せっかく持って来てもらったものの、1発も撃てないので何の役にも立たないのである。

 とりあえずマガジンは邪魔なので、外してダンプポーチへ入れておこう。

 

「おお〜まっこと不思議な杖じゃのう!木と金属で出来とる杖は、ワシも初めて見るぜよ!ちょっと触らせてもろてもええじゃろか?」

「ええ、どうぞぞうぞ!」

 スカウトタヌさんは銃口側を下に、つまり銃を逆さに握って前にかざしている。

 まぁ……コレを杖だと思っている人は、当然そういう風に持つよねw

 

「思ったよりも重いのう? しっかし魔石が妙なトコについちょる? まっこと変わった杖ぜよ!」

「あーこれはスコープといって、遠くを見るメガネみたいなものです。」

「ん?遠眼鏡とな?どうやって見るんじゃ?」

「これはですね、こんな感じです。」

 と言いながらボクは、銃を肩付けしてスコープを覗いてみせる。


「おほ〜!そりゃ変わった杖の使い方ぜよ!どれどれ?」

 ボクはSVDを渡すと、構え方を指導する。

「おお!確かにこいは〜遠くのもんが大きく見ゆるがぜよ! で、この爪を指で引くんじゃな?」

 などと言いながら、タヌスカウトは部屋の扉の鍵穴を狙って引き金を引いた。

 

 その時、不思議なことが起こった!(※2)

 いつの間にかSVDのボルトが引かれていたのか、パチンとハンマーが落ちる音がする。

 実包は入っていないのだから、それは大きな問題ではない。

 だが……なぜか同じタイミングで扉の鍵がガチャリと掛かったのだ。

「おお〜すまんすまん! 爪を引いた瞬間に思わず『施錠』と唱えてしまったぜよ。しかし〜魔力も使うちゃおらんのに、今まであんな離れた場所の鍵を締められたことは無いんじゃがのう?」

 ……え?それは聞き捨てならない発言だ。

 もしかして、銃で狙うと魔法の効果範囲に影響が出るとか?

 

「あの、つかぬことを伺いますが……たとえば催眠魔法って、最高に離れてどのくらいの距離までいけますか?」

「あぁ、普通は目の前くらいじゃな? どんなに気合い入れて頑張っても、その扉の前くらいまでぜよ?」

「例えば……向こうの壁際に立っているあのイヌ人男性を、ココから眠らせることは出来ますか?」

 ボクは通りの向こう側でタバコをふかしている、チンピラ風の男を指さして言う。

 ターゲットまでの距離、およそ30m。

 

「いやぁ〜ワシには無理じゃな?あんまりにも遠過ぎるぜよ?」

「そうじゃの? ワシも長年魔法の話を聞いてはきたが、あんなに離れた者に催眠魔法を掛けられるという話は聞いたことないのじゃ!」

「ワタシも同感だな! 距離が離れすぎだ。無理だと思うな?」

 どうやら皆さん同じ意見のようだ。

 催眠魔法の射程はせいぜい5m程度らしい。

 

 それでは実験開始。

 ボクはSVDのボルトをガチャガチャ引き、装弾されていないことを確認。

 そしてタヌスカウトさんに、その男をスコープ越しに狙ってもらい、催眠魔法を唱えながら引き金を引いてもらう。

 当然、SVDはカチンと空撃ち状態。

 そして、3秒後……イヌ人男性はバッタリ倒れた。


 通りは一時騒然となった。

 そりゃそうだろう。

 何しろ何の前触れもなく、いきなりイカついおっさんが白目むいて倒れたんだからね?

 ……もうこの魔法、『失神魔法』に名前変えようよ?


 ――――――――――


 ※1 1960年頃にロシアで開発されたセミオート(半自動式)狙撃銃。一般的にはドラグノフと呼ばれている。

 ※2 某特撮作品「仮面⚪︎イダーBL⚪︎CK RX」の主人公が起こす超現象のこと……らしいw

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