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第69話 ヒント

 ボクは、あの『お経』の中から何となく読み取れた内容を、皆さんに話してみる。

「おお〜なるほど! そうなるとこの図面はその『黒船』の停泊場所を示しているように見えるし、こちらの地図はどうやらタヌガ島までの航路を示しているようにも思えるね?」

「その可能性はアリだね! いますぐ港湾の関係者に話を聞きに行ってくる!」

 金髪ウサ警部は、図面片手に部屋を飛び出して行った。


 さて、今回牢から脱出できたのはボクを含めて19名。

 ……となると、他の場所にも同程度の規模の収容施設がある可能性がある、ということではないだろうか?

 

 何しろ月あたり30名+αの人数を送り出すわけだから、1箇所だけだとどう見ても計算が合わない。

 場合によっては、あと3〜4箇所あってもおかしくないはず。

 ……しかし残念ながら、その場所を示したようなそれらしき資料は、この中には無いようだ。


 この文書の読み取り方が間違っていないのであれば、明日の夜に『黒船』と呼ばれる輸送船がやってきて、積荷を積み次第タヌガ島に向けて出航する。

 それまでに施設を見つけて、囚われている人たちを救出……か。

 いくら魔法があると言ったって、さすがにコレは無理ゲーだよねぇ。

 どうすりゃいいんだろうね?


「そういえば、ボクたちが囚えられていた施設は『ハニーダ会館』に関係がありそうだし、この資料も『蜂蜜田』つまりハニーダ宛になってますよね? それらを証拠にハニーダ議員を拘束するのも無理なんでしょうか?」

「おそらく、それは無理じゃろうな? あやつは以前の裏金疑惑の時も『それは秘書がやった』とか言うて逃げて、結局起訴されたのは秘書だけじゃったのじゃからな! 本人は、まるでお咎め無しじゃったからのぅ……。」

「まぁ現行犯なら逮捕もアリやもしれんが、あの議員の場合はそれも揉み消して、2日もしないうちに釈放されるだろうよ。」

 ギルドマスターも苦々しい表情。


 う〜ん……とりあえず今のところは、ボクたち19名が無事に脱出できただけでもヨシとするべきなんだろうか?

 でも、奴らの狙いや動きが判明してきているというのに、それを見逃すことしかできないなんて、悔しいよね?

 

 応接室の空気が重々しくなってきた。

 窓の外を見ると、もう夕日が沈みかけている。

 ちょっと皆さんの気分を変えるためにも、とりあえずどうでもいい質問をしておこう。


「あ、ところで疑問だったんですが……そもそも、その『ハニーダ会館』ってどんなトコなんですか?」

「ああ、あれか? いわゆる飲食店ってやつで、キャバレーっていう踊りあり舞台ありの酒場だよ。」(※1)

「ええと……もしかして『駄犬クラブ』さんが出ていたお店って、ソコのことです?」

「いや?あいつらが出入りしていたのは確か『グランドサロン・ハニーダ』じゃなかったっけ?」

「そうじゃないじゃろ? ワシは『ザ・フレッシュハニーダ』で見たんじゃが?」

「お?そうじゃったかのう〜?ワシは2週間前に『ハニーダクラブ』で見たぜよ?」

「アイナさん、そんなトコにも行ってたんですか? でも私が見たのは確か……『白薔薇クラブ・ハニーダ』でしたよ?」


「んんん??? ちょっと待った! そのハニーダって人、そんなにたくさんお店を持ってるんですか?」

「ええそうですね? 確か5〜6年ごろ前から大小あちこちの店を買収して、この町でも有数のオーナーになっていますよ?」

「……もしかしてコレって、今回の事件の手がかりになってませんかね?」

「なるほど確かに。可能性が無くはないわね! ちょっと資料持ってくるわ!」

 飲食業組合のウサ耳理事もあわてて出ていった。

 

 それと入れ替わりで応接室の扉がノックされ、イヌ耳の事務員さんが顔を出した。

「局長、ネコの村からお客様がお着きです。」


 ――――――――――


 ※1 本来のキャバレーは、歌や踊り、コメディショーなどを楽しめる酒場のことを意味するらしい……が、日本の風営法でいうキャバレーは、客にダンスをさせ、かつ、客の接待をして客に飲食をさせる『接待飲食店』の部類に入る。ずいぶん雰囲気違うよね?

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