第65話 魔石を狙撃
『魔封じ』の効果に『範囲』があるということは、この6つの牢の真ん中……つまりボクの目の前にあるはず。
【私も探すから、もう一度タマキさんの『視覚』を借りるわよ?】
というが早いか、また暗がりが鮮明に見えだす。
目の前は通路だから、単純に床に設置してあると邪魔、だということは天井側?
チラリと天井をみると、キラリと光る赤いものが見える……ん?コレか?
【そう、多分それ! 赤い魔石に魔封じの効果を持たせてあるんじゃないかしら?】
……うーん、また魔石かぁ。
ホント、何なんだよ魔石って!
鉄格子にベッタリ顔をくっつけて、その魔石をよく観察する。
赤い魔石の周りにフワリと、模様っぽいのが浮かび上がっているねぇ?
【そうそう、コレよコレ!ちゃんと『魔法消滅』の魔法が発動しているわ。】
う〜ん、それってさ……消滅してるの?発動してるの?どっち??
まぁ、正直どっちでも良いんだけど……アレをどうにかすればいいってことかな?
【あの魔石を本体から外すか、割ってしまえば術式は止まるはずよ?】
……ん? 魔石って割れるんだね?
もしかして、ボクのマカロフで割れってコト?!
どのくらいの硬度なのか想像もつかないけど……マカロフ弾の威力くらいで割れるんだろうか?
とにかく試してみるしか無いね?
帯の中からマカロフとサイレンサーを抜き出す。
薄っぺらだったはずのマカロフは、ぷくりと膨れ元の厚みになり、ズシリとした金属の重みが感じられる。
サイレンサーをねじ込んで、チャキとスライドを引き初弾装填。
赤く光る標的まで2〜3m足らず。
同室のネコさんたちに周りを警戒して貰いながら、ボクは片膝を立てた体制で銃を構える。
まだ暗視の効果があるから、命中させるのに問題はないけど……さあて無事割れてくれるんだろうか?
鼻から息を吸い、口から細く息を吐く。
心を落ち着け、周りの音が聞こえないレベルまで集中させる。
そして人差し指でトリガーをゆっくり絞り込んでいく。
ハンマーが落ちるまであと1ミリか。
息を吐ききったあと1拍置いて、すっと指を絞り込んだ。(※1)
『ポン』とシャンパンのコルクを抜くような音と同時に、赤い魔石がパチンと砕ける。
チリリと薬莢が床に落ち、硝煙が鼻をくすぐる。
次の瞬間、割れた魔石からふわりと青白い煙のような光がフワッと出たかと思うと、魔石の周りの模様はすぅっと消失……コレで成功したのかな?
同室のネコさんの1人は清掃魔法を使えるらしいので、試しに床に落ちた魔石の破片を掃除してもらうことにする。
彼女が小声でゴニョゴニョと何かを唱えると、いつの間にか破片は消えてなくなり、硝煙の臭いもすっかり消えてしまった。
うわぁ、清掃魔法って臭いも消せるんだ? ファ◯リーズ的な?
……ってことは、血痕も血の匂いも消せる? この魔法は暗殺向きかも!
【うふふ、さすがにそのセリフは人前では言えないわね? でも、術式解除成功よ!さすがだわ♡】
とりあえずボクの今日の出番は、コレで終わりかなぁ?
あとは皆さんに任せるとしようw
ということで、薬莢を拾って袂(※2)へポイ。
ついでにマカロフも抜弾して、帯の中へしまっておこう。
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※1 トリガーは引くのではなく、『絞る』を意識するのが良い。まぁ緊急の場合はそうもいかないけどね?
※2 袂は『たもと』と読み、着物の袋袖のことを意味する。男性用着物はちゃんと袋状になっているが、女性の着物は後部が開いているので、あんまり大事なものを入れると落としちゃうかも? ちなみに、袂に入れる小さなポーチ『袂落とし』を使えば、お財布代わりにもなって便利ですよ。




