第63話 地下牢
「さぁ、さっさと歩け!」
ボクは時々背中を小突かれながら、更衣室の奥に伸びる薄暗い通路を歩かされる。
【タマキさん大丈夫? 何かあったの?】
母ネコさんは早速、異常事態を感じ取ってくれた模様。
【すぐにギルドと警察に連絡するからね!すぐに助けるから待っててね!】
すると通路は途中から、地下に降りる階段へと繋がっている。
ああコレが、まさに『地下組織』ってやつか?(違)
「グズグズするな! 階段を降りて行くんだ!」
階段を降りていくと、薄暗くはあるものの、所々に明かりが灯っている。
降りた先には、鉄格子が嵌った地下牢らしき部屋が並んでいる。
ざっと見て左右に3部屋ずつで、計6部屋。
まだ目が慣れていないので、中まではよく見えない。
そして通路のドン詰まりは、おそらく『看守』の詰所って感じか?
「さあ、ココに入れ! 騒ぐんじゃねえぞ!」
ちょうど真ん中の牢に、ボクは押し込まれてしまった。
中には先客が2人……ネコ人の若い女性が座り込んでいる。
その後、ボクを牢に押し込んだサル人は、ガチャリと牢のカギを掛けている。
鍵の形をチラッと見ると、典型的な『棒鍵』。
単にレトロチックなのか、それともこの世界の工学レベルが低いのかは、今の時点ではよくわからない。
上手くすればボクにも開けられそうだけど……今は針金すら持ってないからなぁ。
すると、顔に傷がある片目のイヌ人が、鉄格子越しにカンテラを照らしながらボクを品定めするように見ている。
「ちっ!こいつも痩せっぽちじゃねぇか! コレじゃ高く売れねぇんだよスカタンが!!何やってんだお前ら!」
そう言いながら、イヌ人はボクを捕えたネコ人とサル人を蹴飛ばしている。
多分このイヌ人がリーダーなのだろう。
このやり取りからも分かるように、目的は人身売買で決まりだ。
ってかさ……ペタ胸で悪かったね!プンプン!!
まぁしかし、地下牢っぽいトコに入れられはしたものの……幸いながら手錠を掛けられたりとかの拘束は受けていない。
身体チェックすらしていないトコをみると、余程のマヌケか……それともコチラを女だと思って舐めているのか。
でも……この牢の中には狐さんはいない? 別の牢か、あるいは……。
【待って、ユカリさんに呼びかけてみるわ?…………ん、あなたの近くにいるみたい。意識もあるし、拘束もされていないようね。】
狐さん、無事なんだね?ちょっと焦ったよ。
でもまぁ、まずは一安心。
ホントに母ネコさんに魔法をかけてもらっていて良かったよ。
コレが無かったら、大混乱になるところだった。
とりあえずは不幸中の幸いということか?
まぁ……『発動の儀式』にはまだ慣れないけどね。
…………いや、ちょっと待てよ?
どうして狐さんがボクの近くにいるって分かったんだ?
母ネコさんの魔法ってもしかして、もっとポテンシャル高いんじゃないかな?
ボクの心を『探知』できるんだったら、もっと別の情報も『魔法』に載せられるんじゃないだろうか?
例えば視覚とか嗅覚とか、またはGPSみたいに位置把握ができたりとか。
【発想がすごいわねタマキさん! さっそく感度を上げて、まずは『観て』みるわね?】
すると、今まで薄暗かった牢の中や通路が、ずいぶん明るく見えてきた。
コレって、暗闇に目が慣れてきたっていうレベルを遥かに超えている気がする!
あ!もしかして……術者の能力がボクにも影響している、とか?
【うふふ♪ 私にも見えてきたわよ、あなたが見ているものが! コレは『大発明』かもしれないわ?】
うひゃ! この魔法って……チート過ぎない?(※1)
【鉄格子にできるだけ近づいて、他の牢の様子も見てみてくれるかしら?】
向かい側の3部屋は見えるけど、さすがにコチラ側は壁に遮られて見えないねぇ。
【みんな女の子ばかりが捕えられているようね? 向かい側の牢にはそれぞれ4人ずつ。】
うーん、そうすると今回の被害者は、すべてココに捕えられている可能性も高いね?
【ユカリさん発見!向かい側の牢の中、詰め所側の牢の奥に座り込んでいるわね? 怪我をしている様子もなく無事のようだわ♪】
……あ、見えるぞ!ボクにも見える!やっぱりネコ人の暗視能力が、ボクにも乗り移ってるんだ!
そうなると……もしかして逆に、『狐さんの目』でコチラ側を見ることも出来るんじゃないだろうか?
【もう試してみてるわよ? ……あなたの隣の牢、詰め所側に2人。階段側は無人ね。】
もう、魔法の万能感が半端なくって……逆に引くわ〜。
狐さんもボクが見えたらしくて、ヒラヒラと手を振ってくれている。
ボクもそれに合わせて手を振り返す。
ちょっとは安心してくれたかな?
こういう時は心が折れてしまうのが1番マズいからね。
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※1 魔法ではないが……現代においても、ヘルメットなどに付けた小型カメラの映像をリアルタイムで伝送するシステムは存在するらしい。




