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第6話 森の中のユーチ⚪︎ーバー

 ……とまぁこんな感じで、頼りない「相棒」を手に入れたボクは、宵闇の森を歩いてみることにした。

 本来は遭難した場合「その場所を動かない」というのが鉄則だと聞いたことはあるんだけどね……。

 でも、安心して休息できる場所も見つけたいので……50m範囲内くらいでちょっと探ってみようかなあと。

 川とか見つかればそれはそれでラッキーだし。


 遠くを見渡すことは相変わらず無理なので、聴覚と感覚だけが頼り。

 相変わらず、そよそよと風が頬を撫でる……ホント風が強すぎなくてよかった。

 強く風に吹かれると、体温が下がってカゼ引くかもしれないし、そもそも周りの様子が聞こえないだろうしね。


「…………?」

 何だろ? 風に乗って何かが燃えているような匂いがしてきた。

 かすかに甘いような酸っぱいような、独特な香り。

 匂いの元を探るべく、全神経を集中しながらひたひたと歩を進める。

「ん、アレか……。」


 森の中で一部だけ明るく光るものが……いや、あれは火だ。

 その場でしゃがみ、よく観察する。

 明らかに火は動いている。

 まぁまずヒトダマじゃないとして……おそらく松明か何かだな。


 んんんん……しかし今どき松明??

 レトロすぎにも程があるでしょ。

 まぁもう少し近づいてみるか。


 身を屈めながら、ゆっくり動く。

 足先に神経を集中して、変なものを踏んで音を出したり転んだりしないよう、注意注意。


 さて、松明まであと20mというところか。

 木立の影に身を隠し、状況を観察。

 ただ……ちょっと異様だぞコレは。

 松明に照らし出されたのは3名の人……なのか?? 奥にはもう1人うずくまっているっぽい。


 あの頭……どう見てもイヌっぽいなぁ。

 イヌが服着て立ってるようにしか見えない。

 しかもその服、作務衣なのかこれは? シュール過ぎだろ。

 他のは……剣と棍棒持ってるのか? うーん……。

 奥の人は、ちょっとよく見えないなぁ。


 …………。

 ……!!

 ああコスプレか何かだろう。

 まぁよくあるコトだよ。うん、あるね。

 そうそう、たぶんたぶん。

 ……ホンマかいな?


 しかしまぁ……夜の森の中でコスプレ??

 ああ撮影か〜そういう系⚪︎ーチューバーか!

 ああそうか! ああそうそう、そうだよね〜。

 うんうん多分そうだよ!

 ははは人騒がせだなぁもう。


 撮影終わったら、ちょっと声かけてみるか。

 上手くすれば街まで乗っけて貰えるかもだしね。

 ……そしてボクは、撮影を邪魔しないよう、抜き足差し足距離を詰めていく。


 ゆっくりと藪の中に身を潜める。

 男たちの話し声。間違いなく3名。

「うへへ、おら! 立てよ!」

「へへ! 兄貴よ、こいつ連れてく前に味見しようぜ!」

「ヒャッハ〜! いいなそれ! おい兄貴、いいだろ?」


 おおー何だか迫真の演技だなぁ。

 ホント◯斗の拳(※1)の悪党っぽいな?

 しかもお約束なシチュエーション……ってかベタだなぁw

 いやまぁしかし……今のユー◯ューバーって手が込んでるんだね?

 しかも被り物なのにちゃんと口も同期して動いているし。スゴ!


 ……にしても、何時終わるんだろう、このサル芝居。イヌだけど。


 ――――――――――


 ※1 「西暦199X年、世界は核の炎に包まれた」で始まる、超有名なバイオレンス・アクション漫画およびアニメ。ちなみに悪党たちも含め、誰も「ヒャッハー」と言ったことは無いらしいw

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