第57話 局長代行
しばらくすると、応接室の扉がガチャリと開く。
現れたのは、黒いスカートスーツを着たトラっぽい耳の美人さん。
「お待たせしたね。事務局長代行のパンテーラだ。」
……うひょー!何だか強そうな名前だね!(※1)
しかもコレまたボンキュッボン……『格差社会』がココにも!
【え?私のこと呼んだかしら?】
どこからともなく声が聞こえたので、思わずキョロキョロしてしまうボク。
それにつられて、応接室にいる皆さんもキョロキョロ。
「どうかしたのかい?ええと……タマキさん、だったっけ?」
トラ耳局長さんはちょっと不思議顔。
「あ、ああ、いえ、何でもありません。ボクの気のせいです。」
【うふふ♪ お邪魔しちゃった? ゴメンね♡】
……声の主は母ネコさんだった。
まぁでも確かにちゃんと通信できてる……なんかスゴイなぁ魔法って。
「ユリミとリュナから話は聞いているよ。いやあ、異世界からはるばると。いろいろと大変だっただろ?」
「ええ、何かとまだうまく馴染めてなくて。でも皆さんとても親切なので、助かっていますよ。……というか、話を聞いた……っていつの間に?!」
「ああ〜すまんすまん! 実は、あの村とは『魔導通信機』で連絡が取れるんだよ。見てみるかい?」
「え!通信機ってあるんですか?」
「コレだよ。」
と言いながら、窓際にある机の上の白いシーツを剥ぎ取る局長さん。
大きな木箱に丸いメーターが2つついた、まるでレトロな真空管ラジオを思わせるようなデザイン。
あ!コレって、ジー◯の無線機みたいなやつか?(※2)
「ちょっとやってみようか?」
「ええ、お願いします。」
すると、トグルスイッチをパチンパチンと操作しボリウムつまみのようなものを回したあと、その箱に向かって話しかけている。
「フェリスドルフ、フェリスドルフ、当方フェリダエギルド、応答されたし。」
しばらくすると、ピピと発信音が鳴りガガガと雑音が入りながらも――
「当方フェリスドルフ、感度明瞭、内容をどうぞ。」
「コチラも感度明瞭。先ほどタマキさんが当ギルドに到着した。現在通信の実演中だ。どうぞ。」
「タマキさんたち、無事についたのね? お疲れ様でした♪ どうぞ。」
「ユリミ、それでは通信を切る。無線実演の協力ありがとう。またあとでな。交信終了。」
「パンテーラ、またね。タマキさんたちも町を楽しんで! 交信終了。」
……おおお〜!普通に無線通信してる!ってか、それなら何もチューしなくても?
【うふふ♡ チューは嫌? でも無線機って、これ以上小さいのが無いのよね〜】
あぁ〜そうなんだ……。
まぁ確かにこんなの抱えてたら、何も出来んけどねぇ。
「どうだい? こうやって遠くの場所と通信できるんだ。便利だろ?」
「あ、ああ、すごいですね〜! もっと小さくなると便利そうですが。」
「あははそうだな! ああでも、ユリミの旦那もそんなコト言ってたな?」
「スネイクさんと面識があるんですね?」
「ああ、ユリミとスネイクは、ワタシの昔の戦友なんだよ。」
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※1 豹だけに『うひょー』ってな。ちなみにパンテーラはイタリア語で豹の意味。……ダジャレも説明すると全然面白くないなぁw
※2 某ジブリの空飛ぶ豚の話に出てくる、マダムが隠し持っているアレです。




