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第55話 馬車?

 のじゃロリさんが2杯目を飲み終わる頃、突然外が騒がしくなった。

 ポンポンガラガラと、不思議な音がリズミカルに鳴っている。

「おお、そろそろ馬車が来たようじゃの?」


 外に出てみると、その音の主が分かった。

 それは何と、大きな乗り物。

 大きさも姿もパッと見、昔の大型トラックのような感じだ。

 外装はレトロっぽいデザインの木製だが、ボンネット付きの運転席っぽいのがあり、後部の荷台には白っぽい幌が掛けられている。

 ……あーコレって、陸自でいう『3トン半』(※1)みたいなやつか?


 ってかさ、フツーに自動車あるんだ? どゆこと?!

「あの……『馬車』ってコレですか? それにしては馬がいませんが?」

「コレは『魔動馬車』じゃよ。この国でもまだ20台位しか使われておらん、珍しい馬車なのじゃ! 」

 いや、馬がいない時点で……もうすでに『馬車』じゃないと思うんだけどね?


「しかし、結構大きな音がするんですね?」

「うふふ♪ この馬車にはな、ウチの工房で作らせてもろた『魔動エンジン』(※2)が載っとりますのえ?」

「魔動エンジン、ですか?」

 狐さんの説明によると……どうやら、魔石の原石を加熱して得られる燃焼性のガスを使ったエンジンらしい。

 ただ……構造は現代の一般的な内燃機関とは違い、昔の『ポンポン船』(※3)で使われていた『焼玉エンジン』のイメージに近いようだ。

 しっかし、魔石って何なんだよ? よく分からなくなってきたなぁ……。


「さあ、皆さん出発の時間ですよ? 早く乗りましょうよ!」

 ポニテ猫さんに促され、ボクたちはその『馬車』に乗り込む。

 座席は、通勤電車のように長いベンチ状のシートが向かい合っている、いわゆる『ロングシート』。

 木製シートではあるが、その上に座布団のようなものを敷いてあるので、だいぶマシな気はする……たぶん。


 乗客はボクたち4人の他に、イヌ人の男性3人と女性4人、それとネコ人男性2人に女性が3人。

 あ〜確かにネコ人の男もケモっぽいね!

 ホントに猫が服着て座ってる感じがするなぁ。


 エンジンの回転数が徐々に上がり、ガコンと強めのショックが車内を揺らすと、車は走りはじめる。

 スピードはちょっと速い自転車程度か?

 まぁでも、歩くよりは格段に速いしラクだね。

 エンジン音がちょっと大きいのが玉に瑕だけど。

 

 30分も乗ってると、魔動馬車は山を降り広大な田畑の中をトコトコ進む。

 途中の停車場でネコ人女性を2人乗せると、街へと快調に飛ばして行く。

 もっとも……飛ばすというにはスピードがちょいと遅いんだけどね。


 そして山裾から30分も車に揺られていると、周りの風景は一変する。

 2階建ての町屋が道の両側に立ち並び……何と、4〜5階建ての煉瓦造りのビルのようなものもチラホラと見えてくる。

 うわぁ〜意外と栄えてるね! 異世界舐めてたよ。

 さぁそろそろ、町の停車場へ到着かな?

 

 ――――――――――


 ※1 3 1/2tトラック、もしくは73式大型トラック。軍用なので、公道で荷台に人を乗せられるようになってるぞ。

 ※2 波動⚪︎ンジンに名前が似てるけど……パクったわけじゃないんだからね!w ちなみに、どっかで使われている魔『導』エンジンではなく、あくまでも『魔』石を『動』力としたエンジンである。

 ※3 ……と言っても、誰も知らんだろうなw 古い日本映画やドラマとかで見てちょーだい。 ちなみに『崖の上のポ⚪︎ョ』のポンポン船とはちょっと違うぞ。

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