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第53話 試作品

 今日は曇り空。

 もしかしたら、夕方は雨になるかもしれない。


 そんな中、早朝から集会場に10人ほど集まって、最新状況の確認をする。

「あ、ところで、警察には連絡できましたか?」

「ああもちろん! 泣き落とししたら、しばらくのあいだ1個小隊9人の警官を配置してくれることになったぜ。」

「いやぁ〜うまくいきましたね! さすがは芸人さんだけありますよ! それに万が一、また村が襲われることになっても、それくらいいれば大丈夫でしょう。」

「うぉ!そういうことも考えてたんスか! どこまでも侮れんお人だ。」

 事件の全容がまだ不明だから、考えうる限りの用心をしておかなきゃね。

 

「出来るなら警官隊と仲良くなって、いろいろ情報を引き出しといてくださいよ!」

「おう! そこんトコは任しといてくれ!」

「あ、ちなみにあれから身代金の要求とかは無いですか?」

「いや……あれから何も。」

「やはりカネの線は薄いか。まぁカネ目当ての犯行なら、どちらかというと強盗になるだろうしね……。」

 

 しかしまぁ、自警団の連中と戦ってまで人攫いとはねぇ……ただの報復にしては手がかかりすぎている。

 ということは、目的はやはり「人」そのもの、たぶんは「若い女」ということになるかな?

「コッチの村も攻撃対象になるかもしれませんので、監視の強化は必要かもしれませんね。」

「ああ、オレもそう思う。念のため警戒は、2人1組で行うつもりだよ。」

 いつになく真剣な顔で、門番ネコが応える。

 


「さて、町の情報って、何かありましたか?」

 すると、ネコ村自警団の一人が話しだした。

 金髪ポニーテールの若い女性で、もちろんネコ耳。

 

「あたしが昨日、隣村に来ていた馴染みの八百屋に聞いてみたんですが……町のほうでも、行方不明の者が何人かいるらしいんです。」

「そうなんですか! どんな人が行方不明なんでしょう?」

「だいたい20〜30代の水商売の女たちだと聞いています。初めの頃は、借金返済に困って『飛んだ』とばかり思ってたそうですけど。」

 『飛ぶ』ってさ……、それ『ミナ◯の帝王』くらいでしか聞いたことのないセリフだよw(※1)

 

「分かりました。ボクも今日、町を見に行こうかと思っていますので、そこら辺の話も詳しく聞いてきましょう。」

「あ、それでしたら、あたしもご一緒して良いですか? 町の飲食業協会の理事を紹介しますよ。」

「それは助かりますね。わざわざすみません。」

「いえ、どうせあたしも買い出しに出かけるつもりでしたから。」

 

 作戦の内容は、調査したあとに詳しく決めようということで、今日はお開き。

 攻めるにしても、攻める場所の見当がつかないとどうにもならないからねぇ。



 

 で、母ネコさんに着物を着せてもらう。

 今日は、着丈が短い浴衣にロングスカートのような袴を合わせ、半幅帯を巻いてくれる。

 どうやらこの着物は、ネコ娘が着ていた和風メイドのエプロン無しバージョンらしい。(※2)

 今回は歩きが多いので、着物初心者のボクに配慮してのコーデのようだ。

 着付けが終わる頃に、狐さんがやってきた。

 ネコ娘が玄関で応対していたようだが、どうやら部屋へ通したらしい。

「おはようさんどす〜 まぁ!その着物……そない綺麗やと、うち見とれてしもたわ♡ よう似合うてはりますえ〜♪」

「うふふ♪ 今日のは袴が藍色だからちょっと地味かと思ったんだけど……この着物と帯の色とよく合って、ちょっと艶っぽいでしょ?」

「さすがはユリミさんどすなぁ。今日はなんや、大人っぽい雰囲気が出てて、ええ感じやと思いますえ〜!」

 ……ボクとしては、もう少し動きやすい服装のほうがイイんだけどなぁ。

 でもまぁ一応人に会うから、作務衣みたいなラフな格好も出来ないしね?


「あ、そういえばタマキはん……昨日のご注文どすけど、ちょっと試しに拵えてきましてんえ?」

「え! どんな感じなんですか?」

「ウチもこんなもんは初めてどしたさかい、まずは方向性だけでも確かめとうて……簡単なもんやけど、今日さっそく使うてみはります?」

 

 彼女が差し出したものは、革でできた薄い板状のもの。

 その真ん中にマカロフが深々と差し込まれている……が、おや? 妙に軽いぞ?!

「これってもしかして…………魔法の品、ですか?」

「そうどすえ。この『マカロフ』ちゅうもん、なかなかに重うて分厚おすやろ? せやさかい、普段着で隠して持ち歩くにはちと工夫が要るなぁと思いましてぇな?」

 

 たしかによく見ると……マカロフがぺらっぺら!

 まるで、薄〜い水鉄砲が入っているような感覚。

 で、引っこ抜くと、ちゃんと元の大きさに戻る!

 何という便利さだ! 魔法バンザイ!!(※3)

 

「これな、帯板(※4)代わりにもなるよう作ってありますさかい。せっかくやし、今日一日、試してみておくれやす♪」

 うわあ!!これは革命だ!! これは超絶アイディア商品だよ!

 着物姿で銃を隠し持てるって、この発想自体がスゴくない?!

「これはスゴイですね!! こんな発想、ボクには思いつきもしませんでした! あなたにお頼みして大正解でしたよ!!」

「うふふ♡ おおきに……そう言うてもろたら、ウチ、もっとがんばってまうわぁ♪」

 

 いやぁ、おかげでちゃんと武装して出かけられそうだよ。

 さすがにこの格好でAKMを担いでいくわけにはいかないし、昨日みたいに風呂敷バッグっていうのもちょっと大きすぎるし……。

 だから今日は仕方なく、小さなナイフを1本懐に忍ばせるくらいで行くしかないかと思ってたけど……コレでちょっと安心したよ。

 ボクはダンプポーチからマカロフのマガジンを3本取り出し、1本は帯板のマカロフに差し込み、あとの2本は帯板に切ってあるスリットに差し込んだ。

 念のため、サイレンサーも1本仕込んでおこう。

 

 それと、狐さんも同じものを帯に入れていたので、同じようにマカロフとマガジンをセットしてもらった。

 作った職人さんにも実際に試してもらったら、もしかしたらボクが分からないトコにも気づいて貰えるかもしれないからね?

 

 さ、コレでお出かけの準備完了!

 まずは隣村へ行ってみよう。


 ――――――――――

 

 ※1 大阪を舞台とした高利貸しを描いた漫画。竹内力主演の映画・Vシネマ版も有名。

 ※2 和装でこのようなものは多分実在しない。が、コスプレだったら実現できそうな気もするぞ。誰かやってみません?w

 ※3 何と!銃の厚みも重さも5分の1(当社比w) ……誰かワタシに作ってくれないかなぁ?w

 ※4 帯の形を整えるための小物。巻いた帯の間に差し込む。ワタシは浴衣の時は使わないけどね?

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