第44話 密造工場
さて、思わぬところからAKシリーズの部品が手に入りそうだけど、こうも錆びていちゃあねぇ……。
「マレッタさん、このサビだらけのものをきれいな状態にしたいんですが、サンドペーパーとかあります?」
「あーそれは心配せんと大丈夫やで? ウチには専門家がちゃあ〜んとおるんよ!」
「え!ホントに?」
「ほんじゃ、オババにちょっとやってみてもらおか?」
「ぜひぜひ!」
一体、どうやってこの頑固なサビを落とすんだろうね?
ボクなら、ワイヤーブラシで磨いてサンドペーパーでゴシゴシと……下処理だけでも結構手間かかるんだよねぇ。
おばあちゃんには、ちょっと重労働だとは思うんだけどなぁ?
で、その専門家というのは、アチコチちょっと小さめ。
もちろんタヌ耳・タヌっぽだけど。
でもやっぱり、おばあちゃんには見えないんだけどね?
どちらかと言えばロリっ子風味?
「この部品を新品同様にしたいんじゃな? もっとも、コレ1本だけじゃと効率悪いんじゃが?」
「せやなぁ、他にもコレに似た部品もあるんやけど、いっぺんにやってもらえるん?」
「遠慮せんでええんじゃよ。どうせ1個も10個も大して変わらんからの?」
んんん〜〜〜〜??? どゆこと?
……ってか『のじゃロリ』って実在したんだ?
それではと、ガラクタの山からAKMの部品だけを選び出して、3人でサビだらけの部品を倉庫から抱えてくる。
軽く20丁分はあるんだけど? こんなに大丈夫なのかなぁ?
「なんじゃ、これっぽっちかい? まあいいわい。そんじゃあ、よう見ちょれよ?」
そう言うと、大きな魔法の杖を振りかざして、何やら呪文を唱えはじめた。
そして、杖の色とりどりの魔石が輝きはじめたかと思えば……部品が全部、あっという間にピカピカに!?
「うわぁ〜すごいね♪」
「ボク魔法って初めてみましたが……ホントにスゴイ! しかもちゃんと塗膜がある!」(※1)
ネコ娘もボクも驚きの声を上げた。
「せやろ? ウチのオババにかかれば、こんなんあっという間やって!」
「金属以外でも他にもやって欲しいことがあったら、遠慮せずに言うんじゃぞよ? この位なら朝飯前じゃからの!」
ボクたちはおばあちゃん(?)にお礼を言うと、タヌっ娘の部屋へ。
AKMの部品と再度比較するが……やっぱり「完全に一致」!
試しにボクのAKMの部品と入れ替えても、まるで遜色ない。
うわぁ……何だか密造銃の工場っぽくって、何やらヤバい雰囲気がw
あとは、ストックやらハンドガードやらの木部と、ベークライトのグリップがあれば、完璧にAKMが再現できそうだ!
「木の部品? ああそれなら姉ちゃに頼めば一発やで?」
「ホントに?!」
ボクのAKMの木部品を、そのお姉さんに早速見せに行く。
ぱっつん黒髪の美人さん。
もちろんタヌ耳タヌっぽだ。
「変わった形やねぇ? で?コレをいくつ作りたいん? いま暇やから、5個ずつ位なら余裕やけど?」
「じゃあ5個でお願いします!」
「ほんなら、マレッタの部屋でちょっと待っといてや!すぐ作るさかい。」
タヌ娘の部屋に戻って一息ついていると、30分もしないうちに――
「ほら、出来たで! こんなんで良いんか? あとはニス塗って仕上げてな!」
見せてもらうと、何と完璧な造形……。
いやいやいや、この短時間で……こうはならんやろ!
ということは、もう一息で形としては完成なのだ。
あとは樹脂製のグリップ!
「ん〜さすがにこんな変わったもんはコッチの世界では無いなぁ〜。でもタマキさん、不思議な袋持ってたんとちゃう?」
う! どうやらこの村にプライバシーというものは存在しないらしい……。
「あぁこれですか? でもコレまだ実験中で……」
と言いながら、風呂敷バッグの中からダンプポーチを取り出し、テーブルに中身を出してみると――
「あ! 増えてる!?」
中身が……何と、出かける前に確認した時の『倍』になっていた。
つまり昨日からすると、4倍!!
コレって、まだ午後にもなっていないのに増えるんだ!?
う〜〜〜〜ん……これはちょっと計算が合わないような……。
とりあえず時間とは関係ない、ということかなぁ?
何しろマカロフが既に4丁、金貨や魔石も2個ずつになっているではないか!
法則はまだよくわからないけど、コレは倍々ゲームで増えるパターンじゃない?
つまりボクの予想では、上手に使えば2・4・8・16・32・64倍……と増える感じではないかと!
64の次は128だよ!
その次は何と256倍!!
おおお! この工房の力とボクのポーチで、マカロフはもちろん、うまくすればAKの大量生産も可能になるかも!
そうでなくても故障させても替えはあるし、このポーチを使えば銃弾も増えまくるかもしれないぞ!!
うわぁ!……コレはかなり希望が出てきたね!
とりあえず中身を全部戻し、そしてAKのグリップ1個を入れて様子をみることにした。
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※1 『塗膜がある』ということは、単にサビを落としたわけではなく……製造時に戻した、ということ。つまりこの魔法は、時間を操る系の魔法ということになる。




