第42話 水車小屋
マレッタたちの工房へ行くには、歩いて10分ほどかかった。
何しろ工房は村から離れていて、田んぼの向こう側の山際にポツンとあるからだ。
鍛治をはじめ、大きな音が出る作業もあり、また材料の調達にはこの場所の方が何かと都合がいいかららしい。
また、山から降りてくる水路に水車を掛け、各種作業用の動力にもしているようだ。
外観は田舎の水車小屋そのものだが、近づくとかなり大きな工房であることがわかる。
おそらく2階建てだろう。
「さあ着いたで! どうぞ入って入って!」
「「お邪魔します!」」
うわ〜天井が高い!
一部が吹き抜けになっているのだ。
中では何人かのタヌキ人女性が、黙々と作業している。
すると、近くで作業していた人が声を掛けてくれた。
「おやおやミーナちゃん久しぶりやね〜。今日もしゃれとんしゃあね。(※1) それとあんたは、ユリミさんトコに来た異世界の人やろか?」
「初めまして、タマキと申します。工房を見学させていただきますね。」
「ほんなこつ、よう来んしゃった〜。こげなむさ苦しかトコばってん、奥の方でちょっと休んでいきんしゃい。お茶くらい出すばい。」
「ありがとうございます。どうぞお構いなく。」
「タマキさん、ミーナちゃん、コッチコッチ!」
奥でマレッタが手招きしている。
「ココがウチの設計室なんよ! 結構ええ感じやろ?」
北向きの部屋だが意外と明るい。
窓が大きいせいだろうね。
あちこちに設計図らしきものが貼ってあるし、いろんな本も所狭しと並べられている。
「今日は少し温いから、ちょっと冷たいものでええ?」
「わーい、ありがとうマレッタさん♪」
よく冷えた緑茶で一息つく。
「そいじゃ早速、昨日のAKとかいう『杖』を見せてもろてええですか?」
「はいはい、では簡単に分解しましょうか?」
「うん、そうしたって〜。 助かるわぁ〜。」
ボクは、マガジンを外したAKMを作業台の上に置くと、手早くレシーバーカバーを外し、リコイルスプリングガイドを抜き出した後、長大なボルトキャリアを取り出した。
その後、小さなレバーを起こしてアッパーハンドガードとロアハンドガードを外す。(※2)
タヌキ娘もネコ娘もボクのそばで、不思議そうにその光景を見ている。
「うわぁー!あっという間にバラバラやね! やっぱ何度見てもすごい仕組みやわぁ〜。 ホンマ惚れ惚れするわ!」
「もしこれ以上分解するんでしたら、いろいろな工具が必要ですが、ネジを回す工具とかありますか?」
「ドライバーとかレンチならあるで? ココのやつ使ってぇな。」
あ! 英語の単語OKな環境なんだココ!
ボクはドライバーを借りて、ストックとグリップを外す。
すると鉄製の部分だけが残った。
「もっとバラします?」
「う〜ん、今日んトコはコレくらいにしとこかな? おおきにおおきに!」
タヌっ娘はいろんな所をいろんな計測器具で計りまくっては、手元の大きなメモにびっしりと図や文字で書き留めていく。
しばらくすると、何かに気づいたのだろうか……2〜3分考え込んでいる様子。
そして――
「思い出した! この形、どっかで見たかと思えば……ウチのガラクタ倉庫やん!!」
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※1 博多弁で『お洒落ですね』の意。
※2 ココまでの簡易分解を工具なしで行えるのが、AKシリーズの圧倒的長所。このおかげで、メンテナンスがとてもしやすいのだ。




