第41話 2倍
朝食を食べ終え、出かける準備を始めるボク。
すると母ネコが着替えをもってきてくれる。
薄い色の浴衣と千鳥格子柄の帯、そしてちょっと可愛めの下着。
「え、さすがにそれはボクには似合いませんよ〜」
「そんなことないわよ? 女の子なんだから、ちょっとくらいオシャレしなきゃ損よ?」
などと言われながら、ものの数分もしないうちにボクは浴衣を着せつけられてしまう。
ブラのサイズがちょっと……いやだいぶ合わないことを除けば、あとはジャストサイズ。
ちなみに巻いてもらった帯は今までよりも太めで、半幅帯というらしい。
あれだけギュウギュウに巻くから苦しいのかと思いきや、意外とそうでもない。
「うふ♡ 思った通りの仕上がりだわ〜! どう? イイ感じでしょ♪」
「あ……はい! こういうのちょっと慣れないのですが、とてもカワイイと思います。」
今まではシンプルで機能的な服ばかりを着ていたけど、たまにはこういうのもイイのかもしれない。
……そういえば、小百合先輩も同じようなこと言ってくれてたっけ。
ボクにずいぶんいろんな服とかも買ってくれてたけど、あまりに恥ずかしくてちょっとしか着てあげられなかった。
こんなコトになるんだったら、もうちょっと言うこと聞いてあげれば良かったのかなぁ……なんてね……。
「あとはコレ。 風呂敷もつかってね。荷物が多い時にはこういうのも便利よ?」
そう言うと、大風呂敷を三角に折って両端を結びクルッとひっくり返すと、あっという間に手提げバッグ風に作り変えてしまった。
うわすごい〜! まるで魔法を見ているようだ。
まぁこの人は、ホンモノの魔法使いらしいけどね?
この格好でピストルベルトを装着するのは、さすがのボクでもナシだなぁ。
ダンプポーチを外して、この風呂敷バッグに入れて持っていくことにしよう。
その前に、中身の状態を確認してみようとダンプポーチをひっくり返すと――
「うわ!全部増えてる! 倍になってる!!」
何とマカロフも2丁に増えてるではないか! コレはすごいぞ!!
「あらまぁ〜、確かにすごいわね、この袋!」
「昨日お風呂に行く前に見たら増えてなかったのに……もしかして一晩置かないと増えないとか?」
「もう少し長い時間入れてたら、また1個ずつ増えるんじゃないかしら?」
「確かにそうかもしれませんね?」
「ついでにお金や魔石も入れておくと、増えるかもしれないわよ?」
ということで中身を戻し、ついでに金貨・赤い魔石・青い魔石を1個ずつ入れてみることにした。
もし単純に時間に比例して増えているのであれば、夕方ごろにはもう1個ずつ増えるはず。
これもまぁ実験あるのみ……どうなるか楽しみだね。
だいたい準備が出来たところで、玄関から声が。
「おはようさんです! タマキさんを迎えに来ましたで!」
タヌっ娘のお出ましだ。
「私も一緒に見に行ってイイかなぁ? お母さん!」
とネコ娘が涼しそうな色の浴衣を着て玄関へ。
「いいわよ、お昼には帰っていらっしゃいね?」
「はーい!」
じゃあこれから、タヌキ人たちが住む工房へ行ってみますよ、皆さん!




