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第34話 タヌキ娘

「うん、確かにこの刺身美味しいな! ボクの元の世界で食べるよりもイイかも♪」

「おお!それは頑張って手に入れた甲斐があったよ!」

 もっとも……たま〜にスーパーで買ってた、値引きシールのついた刺身と比べちゃいけないんだろうけどね。

 

 それに、大根ときゅうりの糠漬けも絶品だし、小松菜のお浸しもちょうどいい味付け。

 異世界にきて、やっと健康的な食生活ができているような気がするなぁ……。(遠い目)

 でも、まだまだ2日目、前途多難だけど。

 

 そろそろ1升瓶が2本目に突入するころ、玄関の木戸がガラガラと音を立てた。

「こんばんは〜! 来ましたで〜!」

 どうやらお客さんのようだ。

 母ネコさんがすぐに迎えに出て、何やら話していたが……どうやら飲み仲間が増える模様だ。


「こんばんは! 遅なってもうたわぁ〜。」と襖を開けて入ってきたのは、あれ? ネコミミじゃないね?

 ちょっと丸みを帯びた耳で、ホンワカ丸顔の眼鏡っ娘、そして特徴的な太めの尻尾。

「お〜こんばんは! 待ってたよマレッタ!」

「おや? お客さんなん?」

「うん、新しくいらっしゃった『転生者(ウマシカサマ)』だよ♪」

 お酒をクピクピ飲みながら、ネコ娘が答える。

 ……ってか、ウマシカ設定ってまだ続いてんの?

 

「初めまして。 タマキと申します。」

「こちらこそはじめまして! もしかしてこの方が、夕方にリュナが言うてた「雷撃魔法使い」の人なん?」

「そうそうそう! マレッタもいつか見せてもらえば? 新しい機械を創るきっかけになるかもしれないよ!」

「うわーそれ楽しみやわ〜!」

「さあさあ、まずは駆けつけ3杯ということで!」


 まぁ、そういうことで仕切り直しで乾杯。

 その後いろいろと話を聞いてみると、この人は10年くらい前に最南端の島『タヌガ島』から来た、タヌキ人移住者の1人。

 ネコ村の奥にある工房に住んでいる技術者集団で、いろいろな魔道具を開発・製造しているのはこの人たち、とのことだ。

 タヌキ娘マレッタはその中でも最年少の18歳だが、どうやら天才的な腕を持っているらしい。

 

 もしかしてこの人なら『銃』のことを分かってくれるかもしれないと思い、早速AKMを見せてみる。

 大まかな機能と構造を説明し、軽く分解しながら解説を加えていく。

 技術者だけあって興味シンシン。酒を飲むのも忘れてAKMの部品をしげしげと観察している。

 

「わぁ〜なんやええもん見せてもろたわ〜! この造形すっごい合理的やん! ホンマええ仕事してはるわぁ! 後日にでも、採寸させてもろてええですか?」

「どうぞどうぞ! まぁボクとしては、できればコチラの弾薬の方を作ってほしいのですが。」

「魔法では無いんに、魔法のみたいな力がある部品ゆうのが愉快やねぇ〜。出来るかどうかは分からへんけど、ウチ、気張りますわ!」

「どうぞよろしくお願いします。」

「ほんまこんなん久しぶり! むっちゃ楽しみやわぁ! ……ああ、でもこの鉄製の部品の形、どっかでみたことあるんやけんどなぁ?」

 と、AKMの銃身からロアレシーバー(※1)辺りを撫でながら、ブツブツ独り言を言っている。


「もしお邪魔でなければ、いつか工房を見学させてもらってもイイですか?」

「わ、来てくれるん? めっちゃ嬉しいわぁ! ほな、早速明日にでも!」

「へ? あ、ああ、イイんですか本当に?」

 このタヌっ娘、思ったよりもせっかちな性格なのかもしれない。

 

 まぁ、そんなこんなで1升瓶は2本目も空になり、マタタビ焼酎の出番となったのである……。

 

 ――――――――――


 ※1 ロアフレームとも。小銃の中央に位置する、銃の発射機構を収めるフレーム部分。AKMの場合はスチールプレス製。

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