第29話 魔法じゃないのよ
「これが、私たちが結婚して、長女が生まれた時に写してもらった光画なのよ。」
道場に架かっていた、額装された写真を見せてくれる母ネコさん。
「ありがとうございます。…………ああでも、コレは……。」
この村の中で撮ったであろうと思われる、30人ほどの集合写真。
モノクロだとは予想はしていたけれども、コレはかなーりレトロ、……湿式写真(※1)だね。
背景の解像感はいいんだけど……人物の顔がボーッとしているというか、ブレているというか。
露光時間が長いから、みんな動いちゃったんだろうなぁ……何とも残念な仕上がりだ。
しかも、肝心の旦那さんの顔が……熊さんに似ているような、似ていないような……。
ただ……少なくとも、40過ぎには見えないねぇ。(※2)
どう見てもコレは20歳位かなぁ?
「どう? あなたのお知り合いの方かしら?」
「うーん、似ているんですけどね……こんなに若くはないんですよ。」
「そうなのね。……残念だわ。何か手がかりになるかと思ったのにね。」
「ああ、いえいえ。もし知り合いがコチラに転生していたからと言っても、それがボクの今の状況とはあまり関係ないでしょうから。」
でもまぁ丁度いいので、さっきの疑問点を聞いてみることにしよう。
「あの……もう1つ聞いてイイですか? 旦那さんはピストルで戦われたとのことですが、弾薬はどのようにされていたのでしょう?」
「ダンヤク? それって何かしら?」
あぁ〜! ということは、弾薬はコッチでは手に入らないパターンが濃厚、だな……。
「なるほど。それでは、ボクの持っているこの『ピストル』について説明しておきますね。」
今度はボクが先生の番だ。
さっきの黒板を使いながら簡単に銃の仕組みを解説し、座卓の上で実際にマカロフを分解しながら説明する。
まぁ多分チンプンカンプンだろうけど、コレが魔法の杖ではないことは分かってもらえた……と思う。……たぶん。
「で、コレが『弾薬』というものです。」
と言いながら、外したマガジンから弾薬を1つ取り出して見せる。
「この小さいのがダンヤクっていうんだ〜!」
ネコ娘も興味ありげのようだ。
「このピストルもそうだけど、コッチの大きいやつもコレが無いと働かないんですよ。」
そう言いながら、AKMのマガジンからも弾薬を取り出す。
「あら、この2つって……全く大きさが違うわね?」
「ええそうです。この違いが、威力や到達距離の違いとなって現れてくるのです。」
今度は、弾薬の仕組みを黒板で図説する。
これでもう、『魔法』だとは思わないんじゃないかなぁ? ……たぶん。
「ということで、……この中の『火薬』の力で『弾丸』、つまりこの先端部分の金属を飛ばすんです。」
「うん! 何となく分かったよ! この中に魔法の力がいっぱい詰まってて、その力で相手を攻撃するってことよね!」
「そうだわね、魔法の力はやっぱりすごいわねー!」
「あーいや、これは魔法じゃなくって……。」
……うん、分かってた。
たぶんこうなるだろうなーってことは、何とな〜く予想してたよ。
火薬がコッチに存在しないということは、それはもう魔法の産物だよね?
負けたよ、ボクは異世界に負けた……。
というわけで……頭の中で『昭和枯れすすき』(※3)が流れる中、ボクはガックリと肩を落とすこととなった。
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※1 かなり初期の頃の写真技術。透明のガラス板に感光膜を作り、感光膜が湿っているうちに撮影し、現像する。露光時間は5〜15秒程度。日本では江戸幕末期(1850〜1860年頃)には輸入され使われていたらしい。
※2 熊さんが40過ぎということは…………だから女性の歳を詮索するなって言ってるでしょ!w
※3 1974年の流行歌。……って、何でタマキが知ってるんだよ?w




