第27話 蛇という名
あれ? 母ネコさんどうしちゃったんだろう?
とりあえず射撃は中断。
マガジンを抜いて抜弾操作を行い、弾き出された弾薬とマガジンをダンプポーチに戻しておく。(※1)
「ユリミさん、どうかされましたか?」
しばらく俯いていた母ネコだが、涙を拭いポツリポツリと話しはじめる。
「心配させてごめんなさいね。……大丈夫、大丈夫よ。」
「さっき、『あの人』っておっしゃいましたが。」
「ええ……はい……。あまりにも、その杖での『攻撃』が……あの人に似ていたから、びっくりしちゃって……。」
ん? これはかなり重要な情報かもしれないな。
……ただ、今の状態でこの話を掘り下げてしまうのも、どうなんだろう。
「もし、何か差し障りがあるのでしたら構いませんが、……その……『あの人』とは?」
しばらくボクを見つめていた母ネコさんだったが、意を決したようにその名を告げる。
「はい、私の夫……『スネイク』です。」
「!!!――」
…………。
…………!!
ああ……何だか、今……刻が、見えたような気がした……。(※2)
……今たしか、スネイクって言った、よね?
今度はボクが立ち尽くす番だ。
潤んだ瞳で見つめられるボク。
スネイク。
それはおそらく――
「あの……。似ていたというのは、もしかして……こういうことでしょうか?」
そう言うとボクは、AKMを静かに地面に置き、ピストルベルトからマカロフを抜いた。
そして同時にサイレンサーをダンプポーチの脇から取り出し、キュキュっと銃身にねじ込む。
母ネコは、口元に手を当てながらマカロフとボクの顔を交互に見つめ、涙をためている。
一呼吸おき、スライドを引き初弾装填。
ポロポロと涙を流しながら立ち尽くす母ネコに目配せをしたあと、スッと片手で木板に狙いをつけ、続けざまに3発発砲した。
ポンポポンと小気味よい音ともに、空薬莢がスライド脇から飛び出し地面に転がる。(※3)
木の板は真ん中から割れ、その破片は田んぼの中にペタンと落ちた。(※4)
「……どう、ですか?」
「ええ……そう。そうよ……。」
その場にペタンと座り込む母ネコ。
「ああ、あなた……帰ってきて、くれた……のね。」
そして、ワッと泣き出してしまった。
「お母さん? 大丈夫?」
「一体、コレって……何なんだい?」
もちろんネコ娘も門番ネコさんも困惑してしまう。
うん、コレはたぶん……ボクとユリミさんにしか、分からないのかもしれないなぁ……。
この暗号……果たしてあなたには解けますか?
――――――――――
※1 射撃中断の際は、単にセフティ(安全装置)をかけるだけでも良いのだが、銃本体から完全に弾薬を抜いてしまったほうがより安全となる。まぁこれはケースバイケースだし、射手の好みだったりもする。
※2 某ニュータイプ少女のセリフのような気がするやつ。本家はたぶん、コレとは全然違う意味だとは思うけどね?
※3 よほど特殊な銃でもない限り、サイレンサー(もしくはサウンド・サプレッサー)を取り付けても映画のように無音にはならない。本が床に落ちるくらいの音はするものである。
※4 ピストルの場合、フツーはこの距離だと1発も当たらんと思うが、……よっぽどの変……いや、天才なのかね?




