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第26話 射撃

 遠くの山の緑が眩しい。

 空を仰ぎ見ると、ピーヒョロロと鳴きながら空高くトンビが円を描いている。

 とてものどかな光景だ。

 

 田んぼを吹き抜ける柔らかい風を感じながら、ボクはマガジンを取り出そうとダンプポーチの中を探る。

 ……んーと、どこだっけ? 何かいっぱい入っているなぁ?

 ああー、昨日いろいろ入れちゃったしねー。

 後でちゃんと整理しよう……。

 で、ズシリと重いマガジンを手探りで掴みだし、AKMにガチリとマガジンを装着する。


「では、始めますね! 大きな音が鳴るので、耳は塞いでおいたほうが良いと思いますよ!」

 3人は素直に、両手で耳を上から押しつぶして耳を塞いでいる。

 その動作は、ちょうど頭を抱えるような格好となって……ちょっとキュートで面白い。


 目標ターゲットまでおよそ30m。

 AKMのボルトをガチャリと引き、初弾をチャンバーへと送り込む。

 そして立ち姿勢のまま力を抜いて、スッと銃を構える。

 まずは空き缶からだ。

 

 鼻から息を大きく吸い、そして口から細く息を吐き出し……無心になる。

 ピンと伸ばしていた右手人差し指を、ゆっくりとトリガーガード(※1)へ深く差し込む。

 引き金を指の第二関節あたりで引くのがボクの流儀。(※2)

 指がトリガー表面に軽く触れると、フッと昔の記憶が蘇ってくる。

 

 いつもは厳しかった女性の射撃教官が、耳元でこう囁く。

『お前は体力はからっきしだが、射撃だけは誰にも負けないものを持っている。自分を信じろ。……撃て!』

 反射的にトリガーを引いた。

 

『ドン!』

 鳴り響く発射音と共に、木製の銃床ストック(※3)がボクの肩に強い衝撃を与える。

 昨晩は気づきもしなかったが、昔の射撃訓練で実感した反動リコイルよりも遥かに強い。

 そして空き缶は弾丸に弾き飛ばされ、華麗に宙を舞った。


「え! ナニナニ! あんなに離れたトコにある空き缶が吹っ飛んだぞ! なんだコレ!」

「無詠唱で! すごいすごーい! これやっぱり魔法だよ! お母さん!」

 門番ネコはビックリ仰天、ネコ娘は満面の笑みではしゃいで見せる。


 しかし、母ネコの反応は違った。

 目を見開き、その場に立ち尽くす。

 そして、一筋の涙がはらりとこぼれ落ち……ゆっくりと絞り出すように、言葉を紡いだ。

「これ……あの人と、あの人と、同じだわ…………。」

 

 ――――――――――――


 ※1 誤射防止のため引き金の周囲を囲む部品。用心金とも。

 ※2 引き金は指先で引くものと思われがちだが、さにあらず。射手によっていろいろなクセがあるのだ。筆者もこの引き方を好むので、自ずとグリップが細め・小さめのものを選ぶ傾向にある。

 ※3 銃を狙いやすくし、発射時の反動を受け止めるために肩に当てる部品。最近は樹脂製のものが多い。

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