第22話 猫の島国
昼食を摂った後は、このネコの国の最近の歴史と社会情勢についての話。
母ネコさんは、あまり古い時代のことには詳しくないらしく、昔の話は祖母に聞いてほしいと言っていた。
もっとも、その祖母は隣国へ長期旅行中で、この谷にはしばらく戻ってこないそうな。
「じゃ、まずはこの国と他国の地理的要因から話しておくわね!」
などと言いながら、黒板に猫らしき画を描く母ネコ。
「うわー相変わらずお母さんって、画がヘタだよねw」
「えー! 頑張って描いてるつもりなんだけど? だいたいわかればいいの、だいたいで!」
で、チョークを指示棒に持ち替えて話し出す。
「そもそも、この国『ニャオン共和国』は北島と南島と南部の小島群からなる、四方を海で囲まれた海洋国家なのです。」
あーこれ地図なのね? 今気づいたw ……しっかし島の形、まんまネコ型なのかw(※1)
北島が猫の顔型、南島が猫の体の形で、北の2倍ほどの大きさ。
で、最南端に東西に細長いしっぽ型の島と小さな島がある。
そしてその周囲をぐるりと、強大な3つの大陸国家が取り囲んでいるという感じ。
まるでこの国は、湖の中に漂うネコの島みたいだ。
「ところでさっきは、1年戦争の後に今の『ニャオン共和国』ができたトコまでは話したわよね?」
「ええ、東の『ウサ王国』と島国『ニャオン公国』が戦争をした、ということでしたよね。」
「そうそう、お母さんと転生者がイチャイチャしながら戦ったっていう話ね。」
「イチャイチャはしてないわよ? ちゃんと戦ってました!」
まぁ、さっきの惚気話は確かに長かったからねぇ……。
ちなみに、ネコ娘は父のことをあまり覚えていないらしい。
何しろミーナが1歳にもならないうちに、次の紛争が起きたからだ。
母ネコの話は、そこから再開される。
16年前、北方の大陸国家『クマ連邦』が、突如ニャオン共和国北方に侵攻。
当時この国の要職についていた父は、1個大隊を率いて北方奪還作戦へと赴いた。
先の戦争の傷跡も癒えないうちの侵攻、しかも北方の冬の寒さに不慣れでもあったせいもあり、戦いは熾烈を極める。
残念ながらその後、父を含め多くの兵士たちは戦死、もしくは行方不明となったらしい。
難民として移住してきた北方民族イヌ人たちは、その時の彼らの勇敢な戦いっぷりを涙ながらに語ったという。
母ネコは、いつか旦那は無事に帰ってくる、と健気な表情を見せたが……、どうみてもかなり絶望的だよね……。
そしてその1年後、つまり15年前に、この地に新たな転生者がやってきた。
彼は雲をつくような巨漢でゴリゴリの戦士だったらしく、名を『ケンオー』と名乗ったらしい。
……あ、巨漢でケンオーってさ……デカい馬に乗ったアレだよね? 絶対CV(※2)が内海⚪︎二さんのヤツだよね?
その男は、転生後数ヶ月もしないうちに北方戦線に単騎で乗り込み、八面六臂の大活躍。
ついに2年後、東方の大陸国家『ウサ王国』と南方の大陸国家『赤猿帝国』の支援もあって『クマ連邦』を押し戻す。
その後ケンオーは北方軍司令長官に指名され、北方の平定を成し遂げることとなる。
2度の戦争で疲弊していたニャオン共和国は、しばらく『ウサ王国』の駐留軍を受け入れることとなり、とりあえずこの国は平穏の日常を取り戻したらしい。
んーまぁ、人類の歴史は戦争の歴史、などとよく言われることだけど……それはこの『異世界』でもあまり変わらないようだね。
しかもコチラは『剣と魔法』の世界観と来れば……ガチファンタジー大戦ってヤツかぁ。
ゲームやアニメや小説の中の話が、いまボクの目の前に!
……とはいえ、正直あまり嬉しくはない。
まぁ試してみなきゃ分かんないんだけど、ボクには今のトコ……強大な力もなければ、恐らく魔法も使えない。
武器といえば……実銃になったAKMとマカロフ、そして約140発の弾薬だけ、だしね。
たったコレだけで、一体どうしろって言うんだい?
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※1 ああ、とうとう『猫の島』を生み出してしまった……。まるまる筆者の趣味ですw
※2 キャラクター・ヴォイス、つまり声優のこと。




