第21話 異世界学校
「はい、それじゃ授業を始めますよ!」
どこから出してきたのか、黒縁メガネを掛けて指示棒で黒板をペンペンしている母ネコ。
……あはは、何だかノリノリだなぁ。
「じゃ、まずはこの『ネコの谷』の歴史からお話しするわね!」
「え〜、それ私も聞くやつなの? お母さん!」
「次の語り部はミーナなんだから、自分でちゃんと話せるくらい覚えておかなきゃね?」
「えー! もうミミタコだよぉ〜」
「うふふ、そんなこと言わないの♡」
……まぁこんな感じで授業は始まる。
午前中いっぱいかけて、「ネコの谷」の歴史が語られた。
詳しい話は端折るけど、内容はざっとこんな感じだ――
約60年前にこの谷に転生してきた女性『エマ』が、この谷の先住民たち(もちろんネコミミ)と共にこの隠れ村を拓いたのが、そもそもの始まりらしい。
以後、村の側にある『迷いの森』になぜか、5年くらいに1人の割合で定期的に転生者が現れるようになった。
彼らは「マヨイビト」と呼ばれ、この村で手厚く保護されることとなる。
『マヨイビト』たちは、いわゆる『転生ボーナス』的な何かを持って転生してくるらしい。
それらは驚くほどのチート武器だったり、超絶スゴいスキルだったり、獣人たちの暮らしを変えるくらいの大発明だったり……。
しかし、その『ボーナス』は必ずしもこの谷や地域のためになるとは限らない。
最強の魔法使いとして転生し、この国の前身となる「ニャオン公国」(※1)を建国して、この国を大発展させた者もいれば……逆に他国と密約を交わし北方を支配して、この国を衰退に導く元凶となった者もいるという。
初代『エマ』の娘が、2代目の祖母『マユ』。
そしてその娘である、母ネコ『ユリミ』は3代目。
20年前の東方の大陸国家『ウサ王国』との『1年戦争』の折、母ネコさんはその時転生してきた者と共に参戦し、ヒーラー兼魔法使いとして活躍したという。
しかしこの国は、他国の策略にはまり内部崩壊、終戦後「ニャオン共和国」として再スタートをすることとなったらしい。
ちなみに母ネコは戦後、その参戦した転生者と結婚し、娘が2人生まれたそうな。
1人は今ボクの隣で授業を受けている妹ミーナ、もう1人は町の魔法学校に在学中で寄宿舎住まいの姉ミーシャとのこと。
そういえば、転生者との馴れ初めから結婚までのエピソードを身悶えしながら語る様は……見ててとても微笑ましかった。
ネコ娘は呆れ顔だったけどねw
……しっかし、ボクの『ボーナス』ってば……トイガンが実銃になっただけ、なのかなぁ。
もしそうだったら……随分とケチなボーナスじゃない?
んーもうちょっとさ、ビームライフル(※2)的な超強力チート武器じゃないと困るんだけどねー!
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※1 もちろんみなさんご存知、⚪︎オン公国。ちなみにシャ⚪︎は出ませんので悪しからずw
※2 これこそチート武器。何しろ戦艦の主砲並みの威力なんだからねぇ……。




