第18話 そして呑兵衛たちの1日は終わる
門番ネコさんが乱入して数時間、まーさすがのボクも飲み疲れたよ。
結局、先ほどの一升瓶は空っぽ……で、奥様ネコが奥から出してきたマタタビワイン(?)も空け、マタタビ焼酎をちょっと頂いたところでお開きとなった。
……ってか、いやーマタタビ三昧だコレは。
ボクもニャンコになってしまいそうだョ。
もしかして、もう既にネコミミ生えてるかもね?w
門番ネコは自宅へ帰り、娘ネコは既にお休みタイム。
そして、母ネコさんとボクとで後片付け中。
「ごめんなさいね、あなたにお手伝いさせてしまって。もう、ミーナったら飲みすぎちゃって……困った子だわ。」
「いいえ、ありがとうございます。久しぶりに楽しく飲まさせていただきました。」
「みんな呑兵衛ばかりで呆れちゃったでしょ? 初対面なのに何だか申し訳なくって。」
「あーいえいえ、何だかとてもリラックスできて良かったと思いますよ。」
「あらそう? それはお世辞でも嬉しいわ。」
うふふと笑いながら母ネコは続ける。
「私が『異世界』と言った時には、ホントにあなたは絶望的な表情でしたものね。」
「ええ、確かにそう感じていました。何しろ今までの世界と違う場所にいる、ということですからね。」
「そうね。私たち『獣人』とあなたたちとは、ちょっと違う人種ですし……世の中の状況もまるで違うでしょうしね。」
「あーそうなんですね、やっぱりそうなんだ……。」
母ネコによると、この世界のほとんどは獣人であり、この地域では元々から『ネコ人』が住んでいるらしい。
ただ最近では、他の地方や国からさまざまな獣人が移住してきているとのことだった。
昔は住みよい地域だったけど、ココ10年ほどで地元住民と移住者との諍いが増え、治安もかなり悪化しているそうな。
ま、とりあえず詳しい話は明日以降に持ち越すこととして、今日はゆっくり休むことに。
「ごめんなさいね……お風呂の日は明日になるから、今夜はお湯で体を拭いてお休みになって。」と、小さな桶にお湯を入れて持ってきてくれる。
「ありがとうございます! 助かります。」
「それから、隣のお部屋にお布団を敷いてますから、今日はそちらでお休みくださいね。」
「ああ、何から何までお世話になってしまって、恐縮です……。」
「それとね、浴衣。部屋着として使ってくださいね。着方は分かるかしら?」
ちょっと生地が厚めの、千鳥格子の浴衣を手渡される。
細めの帯と、細い紐も一緒だ。
「ありがとうございます。着物はあまり着たことは無いのですが……何とかなります。」
「うふふ、いつかちゃんと着方を教えてあげるわね。それじゃ、おやすみなさい。」
「ユリミさん、今日はとても楽しゅうございました! おやすみなさい。」
その後、自分の荷物を布団の部屋へ移動させると、ピストルベルトを外し、服を脱ぎながら体を拭く。
ぬるめのお湯が心地良い。
……ああ、今日はホントに怒涛の一日だったなぁ。
そして浴衣を着てみる。が……ちょっと丈が長いかな?
それにしては袖が短いような気もするんだけど。
……ま、いいか。お布団で眠るだけだしね。
ああそうそう、念の為にマカロフを枕下に置いておくか。
今夜は、たぶん大丈夫だとは思うけどね。
布団に入ると、程なくして睡魔が襲い……ボクは眠りについた。