第12話 気づき
「あっ…………。」
ココでボクは……あることに気づいてしまった。
……いやいやいや、そうではない。
ボクは今まで、見なかったことにしようと努めていた、と言ったほうが正しい。
……森を抜けたのは良いが、目の前にある風景が……まるで異質なのだ。
満点の星空に、漆黒の闇。
舗装されていない、轍が目立つ道。
いくら林道であっても、砂利くらい敷き詰めてあったっていいだろう?
メラメラと燃える松明と、相変わらず匂う……松脂が焼ける香り。
そして……ネコさんイヌさんたちの服装。
明らかに、現代日本のそれとは違う。
何なんだこの人たちは。
ずいぶんと歩いたが、誰もコスプレを『パージ』していない。
むしろ……今のその姿のほうが自然に見える。
ネコ娘は今さっき……何て言った?
『山を降りて街へ買い物』?
『帰りが遅くなって、暗い山道を歩いていた』?
ちょっと待て……◯マゾンどうした?!
たとえ山奥であろうと、1日遅れでも……薬の材料くらい配達してくれるだろ?
自転車は? バイクは? 車は? 女の子一人で……徒歩で買い物?
しかも……マホー? マセキ?
いやいやそもそも……この、東西冷戦を象徴する悪名高き『AK』という『銃』の存在を、みんな軽く無視できているって……どういうコト?
しかもボク、『発砲』したんだよ? 撃たれたら死ぬんだよ?
逆に、ボクが悪者認定されていても……全くおかしくない、はず……。
……これは…………変だ。
何かがおかしい。
でも……この人たちは、たぶん…………嘘なんかついてはいない。
根拠なんか無いけれど、何となくそう思うんだ。
「あ、あの!……」
ネコ娘がボクの手に触れる。
暖かい手。
女の子特有の、ほのかな甘い香り。
そして……ボクが抱えているのは、そう、間違いなく実銃だ。
木の温もりと、金属の重量感。
そして今だ鼻腔に残る、硝煙の香り。
……これは……これは……夢や妄想ではない。
「タマキ様、どうかされましたか?」
ネコ娘の声が、ボクの頭の中に響いている。
これは、受け入れ難い……。
とても、受け入れ難い……。
でも……これは……。
「タマキ様!」
「大丈夫っスか? タマキ様?」
……そこでハタと我に返った。
「…………ああ、ゴメン。」
「どうかなさったんスか?」
「あ、ああ……みんな心配させてゴメンね。ボクちょっと……疲れたみたいだよ。」
「大丈夫スか?」
「俺の肩、貸しやしょうか?」
「ああ、いや、それには及ばないよ。……大丈夫。」
ゴメンみんな。
まぁいきなりフリーズしちゃったら、心配するよね?
「私の村はもうすぐですから、もう少し頑張ってください!」
「俺たちも、ちゃーんとついて行くんで、安心してくだせえ!!」
「あ、うん、みんな……ありがとう。」
「何をおっしゃいますか! タマキ様のためなら、コレくらい何てことないっスよ!」
そして……月も出ていない暗い山道を、ボクたちは歩いていく。
村への道のりは、まだまだ遠い。