第11話 後悔
リーダーイヌはしばらく俯いた後、言葉を続ける。
「実は……町の議員先生から依頼されたんっス……若い娘を探してこいと。」
「兄貴ぃ! あんまり詳しく言うのは――」
「うるせえ! お前は黙ってろ!」
「……まあまあまあ。で?」
ボクは次の言葉を促した。
「その方は『シミン党』の『ハニーダ』って人なんだ。」
…………あれ〜? 何だか既視感のある単語が続くなぁ? 気のせいかな?!
手下イヌたちの表情が暗くなる。
「あ、うん……それで?」
「俺たちも、こういうこたあ……あんまりやりたくは無いんっスが――」
「いや、コレは俺の責任っス!」
棍棒イヌが立ち止まって続ける。
「俺たち3人、実は芸人で……この前、町のラウンジで『営業』してた時に……俺がハニーダ様を怒らせっちまいまして。」
「あ、やっぱり!! 私知ってますよ3人のこと! 確か『駄犬クラブ』(※1)さんですよね?」
……あぁ、そこはフェンリルじゃなくて駄犬なんだね? 自虐ネタ半端ないなぁ。
すると3イヌ、ちょい涙ぐむ。
「え? マジで! 猫ちゃん、俺たちのこと知ってくれてるんっスか!」
「すまねえな嬢ちゃん! そんなこととは露知らず、酷いことしてゴメンな!」
「「「ホンっト、すんまっせんでした!!」」」
そして安定のイヌ土下座……もしかしてお前ら、土下座慣れしてる??
「ああそれで、そのハニーダっていうヤツに脅されて、こういうことしてるってことかな?」
ボクはそう聞き直す。
「脅されるっつうか何つうか……。『女3人連れてこねえと、ワシのシマじゃ営業させん!』とか言われやして……。」
あぁ『シマ』って……もうそれヤバめの人じゃん……。
「で、何人連れてったの?」
「あ、いや……まだ一人も……。」
「ふ〜ん。でも随分と手慣れた感じだったよね?」
さり気なく左手を動かし、いつでもAKMのボルトを引ける体制に入っておく。
ボクはまだまだ、完全にこの人たちを信用しているわけじゃないからね……。
「あ、いや、それはその……」
「……俺たち、実は『悪人コント』で売ってるんスよ。」
「◯走族とか◯力団とか、悪者役のネタで笑わせるヤツっス!」
……あーそうなんだ……ハハハ(棒読み)
「私、去年の夏祭りのステージで見たことありますよ! あれはドロボウのやつだったですよね♪」
「うわ! 猫ちゃん、あん時のヤツ見てくれてたんっスか! マジ嬉しいっス!」
「感謝感激スね、兄貴!」
「ああ、ありがたい! また泣けてきたぜ! それなのに俺たちは……」
「「「すんまっせんでした!!」」」
……土下座だねぇ、うん土下座。もうコレ永遠に続くんじゃないかなー。
「それで、これからどうするのさ? ファンも君たちのコト見てるじゃないか。」
「…………へい。やっぱ俺たち、こういうのはもうやりたくないス。」
「だなぁ……。家族にも顔向けできねえし。」
「ああもうやめるぜ。しかしどうすっかなぁ……。もう町じゃあ『営業』できねえなぁ……。」
そしてしばらく沈黙が続く。
みんなでトボトボ歩いていると、いつの間にか視界が開けてくる。
ああ、これでやっと森から出られたわけだ。
「ウマシ……あ、タマキ様お疲れ様でした! この先が『ネコの谷』です♪」
ネコ娘は胸を張ってそう言った。
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※1 使わないつもりだったけど……やっぱり使っちゃった♪テヘペロ(・ω<)