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巣の記録

楽しい食事の時間は終わった。総統はアライドを連れて誰も寄り付かない女王蜘蛛の巣にむかった。

楽しかった食事は終わり、サリィは総統の持ってきたテントで寝るつもりだったがアラネのハンモックが気に入り、アラネ特製蜘蛛糸ハンモックで寝ることに。

だかこの状況を知らない人が見ると、本格的に捕らえられている人質に見えて、なんか参考にしようかな?と思ってしまうほどである。

総統とアライドは話に出ていた女王蜘蛛の巣に行く事にした。エンクランスは総統にサリィを一人にしてはいけないという事で大広間に待機する事に。

しかし、それ以降、松木がどこに行ったか誰も知らなかった。でも総統が。

「きっと一人で考え事してるんじゃろう、なんせ地下でお楽しみしていた程だからのう、きっと大変な目に会ったんだろう」

「お楽しみって何なんですか?」

「それはね、大人の事情で説明できないけど・・・まあいつか分かるよ」

「分かりたくないです」

という事で気にせず二階に上がり巣に向かった。それを確認したアラネは個人的にエンクランスと話がしたいと持ちかけ中庭で話す事にした。

時刻は真夜中、日は変わってしまい森の奥にあるこの屋敷にジメジメとした湿気が屋敷を包みこんでいた。

遠くから見れば多少古びている。しかし、生き物を引き寄せる魅力を持っているが、静かな屋敷の中には大量の蜘蛛が住んでいるとは思えないほどの静けさだ。

屋敷の中庭に大きな木を中心に四色の花がが咲いている、そこには二つの影が立っていた。もちろんエンクランスとアラネちゃんだ。

だが呼び出されてからなかなか話そうとしないしびれを切らしたエンクランスは。

「何のようだい?出来れば早く戻りたいんだが」

大広間で寝ているサリィをそのまま置いてきたからエンクランスは早く戻ろうとしていた。

「待ちなさい」

呼び出しておいて何も話さない、しかも一言目が待ちなさいだ、少し教育をしないと駄目だと思ったが内容は教育みたいなものだった。

「なんで・・・なんであの凶暴な蜘蛛を操る事が出来たの?」

「ん?・・・なんで君がそんな事を聞くんだい」

「そ・・・それは」

なるほど、そういう事かなんとなくだが察していた。この子は蜘蛛達を操れないのか。

「ならば聞こうなんで君は私にそんな事を聞こうとしてるのかな?」

そうするとアラネは木の枝に飛び乗り、葉に隠れながらエンクランスを見ている。

「それはあなたが命令してから蜘蛛達は隠れながらあなたの次の指令を今か今かと待ってて、うるさいのよ・・・実際に今でも窓越しにあなたの事見てるんだから」

最後は小声だったから聞こえずらかったが、何となくだが分かっていた、あの命令以降なんか謎の視線があって痛かったとこだったんだ。

「分かった・・・・・・教えてあげよう」

「えっ・・・いいのそんなに簡単に教えても」

エンクラスは木の枝に隠れているアラネに向かって一つの言葉を言い放った。

「命令をする側、受ける側、どちらも信用してなければ最善の行動は出来ない、ビクつき、脅え、何もしない奴は自分の居場所、部下の居場所を無くすことになる」

そして、サリィが寝ている大広間の方に脚を動かし。

「そう考えたら・・・まだこの地に居座っている蜘蛛達は、君のことを女王として見ているのだろう」

大広間に通じる通路のふすまを開けて。

「それとも先代の女王蜘蛛が蜘蛛達にある願いを頼んだか、もしくは君に似ているだけなのかもしれない」

そう言い残しふすまは小さな音をたてて閉められた。

ただ・・・一人・・・いつものように・・・母が眠っている墓石の近くに育った木の枝でハンモックを作って寝る。

もう周りにざわめいていた蜘蛛の気配はエンクラスと共に消えてしまった。

誰もいない・・・・・・誰も話してくれない・・・・・・屋敷に住むのは人ではない私と蜘蛛だけ。

「女王・・・・・・私はあなたの子ではなかったのにどうして・・・」

今日もまた一人静かに眠りにつく。



「ゴホゴホ」

「大丈夫かいアライドくん」

女王蜘蛛の巣を探索していた総統達、しかし、誰も入らなかった部屋故にホコリだらけ、総統達は一度マスクを取りに戻って探索を続行している最中、総統は何かこの屋敷の記録はないか調べていた。

「この屋敷はある事件がきっかけで滅んだ、記録があるかどうかは分からないが、アラネちゃんのためになる記録が残されているかもしれない」

総統は黙々と昔の言葉で書かれて古くなった本を見つめている。

しかし、アライドは読めない代わりに棚にしまっている本を持ってきたり、また、棚に戻したりしていた、おかげでホコリまみれだ。「ゴホゴホ、鼻と喉が痛くなってきた」

そんな事を考えていたら本と本に挟まれてあったのか、鈴が落ちてきた。

それは手首に巻き付けるのか、腕を通す場所があり、色の違う四色の鈴が四方に一個づつ付いていた。

その鈴をアライドが手に取ると四つの鈴から、今まで聞いた事がないほど、清らかな音が部屋の中を包んだ。

「総統、これ何か普通の鈴とは思えない物が落ちて来ました」

「それはきっと」

そうすると鈴を挟んでいた二つの本を拾ってアライドに見せつけ。

「この本が教えてくれるはずじゃ」

そうして総統は本を読み始めた、しかし保存が悪かったらしく、いたる所が破けたり、総統も読めない字があったらしい。

と言うことで総統訳、屋敷の記録。


×月△日

ついに私の子が産まれた、蜘蛛達を引っ張ってくれる強い女の子になってほしい、我が四門家に伝わり住み着いている━━蜘蛛を。

□月○日

悲しい事がおきてしまった。あの子は産まれてから体が弱く寝たきりの状態だ、上からはあの子を切り捨てろと言われたが、そんなことは出来ない、なにがおきてもこの子は守ってみせる。

△月□日

あれから何年も経った、けれど、あの子の病は治らない、でもあの子には才能があった・・・蜘蛛達を操っていける才能が。

×月△日

あの子も遂に━歳だ、今思ったらよく生きた方だと言われた、あの子とよく一緒にいる蜘蛛も元気そうだ。最近あの子と蜘蛛がこのまま幸せに生活出来たらどれ程いいことだろうか。そんな事を考えてしまうようになってしまった。

△月×日

恐れた事が━━た、病━が悪化し━━だ。あの子を━━せたく━い・・・絶対━。何━手━━━はず、あの子を死━━━いて━絶対に・・・。

━月━日

つ━に、━━けた、け━ど━、これ━つか━てしま━た━、━━━━━━に━━━━━━━━。




これ以上は書かれているというより、誰にも読めない字で書いてあった。

「総統・・・・・・これは」

総統は静かに本を閉じた。

「もしかするとアラネちゃんは・・・」

そして、もう一つの本を開く表紙にはこう書かれてあった。

[四門開書]

「総統!」

突然、アライドが呼んでくれたおかげで正気を取り戻した。

「あ・・・ありがとう、アライドくん」

「大丈夫ですか?」

「あぁ、大丈夫だとも」

この本に何が書かれているか気になる、だが、これ以上この屋敷について深入りしない方が無難だと感じ、適当に本棚へ返した、そうするとアライドが面白そうに、手に持っている本を見せてきた。

「総統!面白い本見つけました」

「何じゃそれは」

その本は他の本より薄く言うならゲームの取り扱い書しかも、そんなに丁寧に書いてくれてないぐらいの薄さで表紙には。

[四門家蜘蛛取り扱い説明書・入門編]

「入門編!?、蜘蛛にそんな扱いが出来るの、ねぇアライドくん」

「知りませんよ、でもこれを読んだら・・・、僕らでもエンクラスさんみたいに操れるかもしれませんよ、そうなったら・・・」

「世界征服の夢に一歩近ずく」

総統はアライドと喜びながら蜘蛛を使った世界征服以外の妄想をしていたが、それは隅っこの方においといて。

「それじゃあ、早く読んで下さい」

「よし、読んで世界征服の道をまた一歩、歩んで行こうじゃないか」

そうして、総統は本を読み始めた。



「自分は弱い人間だ」

松木は悩んでいた、今まで尽くしてきた組織に戻れるチャンスが今、木の枝で寝ているのだ。

「これで自分は戻れるんだ」

食事中ずっと考えていた、待っている時も、食後にこっそりと部屋を抜け自分が縛られた地下で考えた。

「これでまた元に戻れるんだ」

何度も頭に響く黒服の言葉、戻れる・・・戻れると何度も繰り返し口にしてしまう自分。

「アラネちゃん・・・ちょっと降りて来てくれないかい」

そして、決めた・・・今の自分が何をしたいか、そして、何をしようとしているのか。

「何なの?もう夜行性の蜘蛛も巣に戻ってる時間なのになんのよう?」

見た目は可愛い小さな女の子、しかし、その力は計り知れない、アラネが木から降りてきた、もう一度アラネに聞こえないぐらい小さな声で自分に問掛けよう。

「本当に・・・良いのか・・・」

アラネが自分を見ている、何も喋らない、何もしようとしない自分を見ている、「本当に・・・戻りたいのか・・・」

ゆっくり・・・ゆっくりと腰のベルトにしまっておいた銃を取り出す。

「本当に・・・これは自分が望んでいることなのか・・・」

ゆっくり銃口をアラネに向ける、動揺して動けないのかその場から一歩も動かない。

「本当に・・・これでいいのか・・・」

銃には一発の弾が入っている、避けてくれるんならそれでいい・・・そして、当たらなかったらそれでもいい。

「いいんだ・・・これで・・・」

狙いを定める、出来たら傷が残らないように、指先に力を入れ、最後に問いかけた。

「これが・・・自分が這上がるための・・・悲しい自分なりの答えなんだ」

今夜、静かな屋敷に響いたことのない音が、中庭から屋敷に響き渡り、暗い森の中に吸い込まれるように消え、また、いつもの静けさが屋敷に戻った、赤い光を辺りに残して。


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