アライド入団
アライドはお手伝いで大杉さんについて行く事に。
「すまないね、この年になると筋力が衰えて高い荷物をおろすことさえ難になってしまった」
今アライドがいるのは大杉さんの家の物置部屋、物置部屋といっても軽く今のアパートをしのぐ広さだ、そこでアライドは埃をかぶった荷物の出し入れをしていた。
アライドは約30分前に怪しい服装の大杉さんと出会い、いつもの公園から徒歩五分で自宅に到着した、外観はレンガと木造の住宅、この住宅を端から端まで大きな柵があり大人二人分ほどあるそしてその柵にはキレイに草が絡み付いて柵の隙間を埋めていた、この草は柵だけではなく家からのびていてまるでプラントハウス(植物園)、そしてかなり年季が入っていそうな花屋だった、しかし大杉さんいわくすでに看板は下ろして別の仕事をしているとのこと、その別の仕事というのが、柵から見えない敷地の半分が霊園になっていた。
「つまり共同墓地のお掃除?」
「そんなとこかな」
「それで一人ではとれないしどこに置いたかわからなくなった道具を今探してハックション…しているとこなんですね」
その後、大杉さんは服を脱いでくるといい部屋から出ていった。
アライドはそのまま荷物の出し入れを続行した。
「それにしてもたくさんあるな、どうすればココまで山になるんだ?ちりも積もればとはいうけど」
部屋の奥は曲がっていて今整理している部屋の二倍の長さがあった。
その光景を見たときアライドの眉がクイッと動き言葉を失い、すぐに手前から手を出すことにした。
「……まさかこれ全部とかじゃないよね」
部屋の明かりは豆電球、窓は棚と箱によって見事にふさがれている。
「あら、どなた?」
部屋に誰かが入ってきた。
「どうもです、大杉さんから手伝ってくれないかと言われて……」
部屋に入ってきたのは昨日の花壇の女性でどこかいい香りがする。
「物置部屋に夫がいると思って持ってきたんですが……そうだ、紅茶飲みます?」
紅茶の香りだった。
「緒伊江どうしてこんなところに」
「あなた、いつものお茶の時間ですよ」
「ああ…そうか、また後で飲むよ、いつもの部屋に置いといてくれ」
女性は持っていた紅茶とともに行ってしまった。
「アライド君、もう少し整理したらお茶にしようか」
大杉さんの服装は一変したとはいえないが、少し薄着になり、顔も見えるようになった。
「先ほどの方が……」
「ん?私の妻の緒伊江がどうしたかい?」
「きれいな方だと……」
「なるほど、若さだね…ちなみに言っておくが私達は夫婦で……七十を過ぎているぞ」
七十過ぎの言葉にアライドはビックリした、大杉さんはまだ五十代かと思ったが、緒伊江さんの年は想定外だった。
ある程度荷物を取り出すと場所を変えてお茶をいただいた。
「ここは?」
「私の部屋だ、少し土臭いと思うが」
大杉さんの部屋はいたるところに植木鉢があり吊り下げられていたり、机に置かれていたり、引き出しや棚の中など思いもしない場所に置いてある、そしてそのほとんどに植物の類が分けられて植えられている。
「すごい量…全然名前わかんないけど……そのドアはなんですか?」
アライドは外に出る扉とその近くにある扉を聞いた。
「それは墓地に繋がっている、もう片方は……」
少し考える素振りをして、置いてあった紅茶を飲んでから。
「私と妻の秘密の部屋かな」
そう言うと大杉さんは軽く笑った。
その後……
「今日はありがとう、おかげで片付いたよ」
時間は夕暮れ時、2人して時間を忘れて片付けをしていたらすっかり日が暮れ始めて帰るのが遅くなっては危ないから大杉さんはアライドに今日の手伝いのお礼をしている。
「でも、まだ目標に届いてませんよ?」
「いいんだ、後は自分でするよ、今日はこんな爺さんの手伝いをしてくれてありがとう」
アライドがアパートに帰るため歩くと大杉さんはアライドが自宅から見えなくなるまで玄関先で立っていた。
翌日……
花野宅に怪しい陰が一つ、インターフォンを鳴らそうと頑張っていた。
そんな壊れたインターフォンの音がちょくちょく鳴るので、大杉さんが自宅から出て見ると。
「君は昨日の……」
「どうもです、今日も手伝いにきました」
こうしてアライドは毎週短い時間だが花野宅の部屋の片づけを手伝うことにした、部屋の片づけついでに古い道具や本が次々と出てきては昔の話をお茶の時に聞く、そして時間が来るとアライドは帰る、初めは部屋の片づけだけだったが、部屋に散らかっている土を掃除したり墓地の草を刈ったりと、誰かから教わった家事能力を使い、大半きれいになった頃。
「アライド君、キミは悪の組織に身を置いていると言ってたね」
アライドはいつもの紅茶を飲みながら、大杉さんの話を聞いている。
「はい、今はW団の基地で寝泊まりしてます」
「そうか……アライド君少し聞きにくいことなんだが、ずっと不思議に思っていた」
大杉さんは一息入れてアライドに聞いた。
「キミの親は……誰なんだい?」
数秒間、2人の動きが止まった。
今までこんなに静まり返った時間はなかった、そんな雰囲気で話を続けたのはアライドだった。
「いないんです……」
「そうか…すまないね…聞く話ではなかった…」
「いいんです、普通に考えたらおかしな話ですよ」
大杉さんは少し間をおいて聞いた。
「事故とか…病とかかい…」
アライドは昔の思い出を、総統に出会った経緯を話した。
「僕は捨てられたんです親に…、まだ僕が小さかった頃、両親の関係はギクシャクで僕の事を見てはくれませんでした、そんなある日ついに親は離婚、残ってしまった僕は母親に押しつけられるように渡され、それ以降の世話はお爺ちゃんと二人で生活しました、お爺ちゃんはあの二人とは違って僕を温かく迎えてくれて、とても幸せでした、初めて家族というのがどんなものかも実感していた数年後……お爺ちゃんは僕を残して逝ってしまいました、もともとそんなに若くもなくむしろよく長生きしていました、そしてお通夜の後、母親の家に訪ねると……、母親の姿はなく家具すらない、僕の目から消えるように姿を眩ませました、どこも行くあてもない僕は一人公園を彷徨するようになったある日……」
1年前アライド13歳、夜の雨降る公園……
木下で寄せ集めたダンボール箱を使って雨宿りしているアライド、当時のアライドは雨宿りがそのまま自分の寝床になっていた、公園に数日住んでいるせいで周りの人から野良が公園に住んでいると言われる始末。
「なにが野良だ……好きでなったわけじゃない」
そんなアライドの宿に二人の男が近づいてきた。
「なんだ、野良というから調べてみたらまだ子供じゃないか」
「そのようですね、もう少し調べておく必要がありました」
二人の男は更に近づいてくる。
「こっちに来るな!あんたらいったい何のようだ?」
「いや、ただその素敵な場所で雨宿りしようかと」
「このままでは風邪を引いてしまう、いいかな?」
アライドは少し悩んだ後、場所を譲るよう移動した。
「そんな移動しなくていいよワシ等はその大きな木下で雨宿りしたいだけなんだから」
「それと君と少しお話もしたい」
その後はぎこちない雰囲気はあったが、少しずつ時間を忘れて久しぶり人と長い間話をした。
「…そうか、そんな事が」
アライドはどうしてこんな所にいて一人なのかをすべて話した。
「今も恨んでいるのかい?」
「恨んでいるけど…もうどうでもいい、あんたらと喋ってたらアホらしいなったよ」
「そうかい、それなら良かった」
雨はさらに強まり雷も鳴り響くしまつ。
「おっちゃんももう帰ったら?家あるんやろ?」
雨宿りに使っていたダンボールはもう使い物にならないぐらいに濡れていた。
「そうだね、そうするよ」
男は立ち上がり、アライドを残して歩き出した。
その時、雷が落ちて一瞬明るくなり片方の男が着ていたマントにWの文字が。
「あのマーク…たしかココ最近正義の見方と戦ってる悪の組織が使ってるマーク……、おっちゃんちょっと待って」
アライドはダンボールを投げ飛ばして総統とエンクランスに走り寄った。
「あんたら悪の組織なんか?」
「まあ一様悪の組織をやってるよ」
「なんか嘘っぽいな、じゃあなんでこんな野良に近寄ってきたん?」
「町の人から頼まれて捜査してた、そしてあわよくば仲間にしようかと」
「仲間?」
「そう、悪の組織の仲間にいれて一緒に世界征服をする、みんなが幸せになるみんなが普通に生活する世にするために」
「世界征服…話を聞いたら世界平和にも聞こえる」
「最終目標はそこだね、そのために仲間を集めてるとこ」
「……みんなが幸せ…その組織に子供は不要ですか?」
「不要なんて、ワシ等はこの志に賛同してくれるなら誰でも受け入れるよ」
誰でも受け入れてもらえる、こんな姿をした子供でも受け入れてもらえる。
アライドに考える必要はなかった。
「だったらその組織に入れさせてください、雑魚戦闘員でもなんでもかまわない」
総統とエンクランスは頷いて、手を伸ばした。
「ようこそ、悪の組織W団え」
その後、今住んでいるアパートに到着。
「それで他にどんな方がいるんですか?」
「君合わせて三人目」
「……え、たった三人!?」
「これでも進展してるんだよ、ねぇエンクランス」
タオルで頭を拭きながらエンクランスが答える。
「なかなか集まらなくてね、二人活動開始してもうすぐで二ヶ月もたっている」
「世界征服までほどとういい」
「それで、君の名前はどうする?」
「名前?名前なら昔の…」
総統は紙とボールペンを取り出して文字を書いている。
「君は今悪の組織に入ったんだ、昔の名前を捨てていまから新しく生きていくんだ」
文字を書いては消して書いては消して数分後。
「これから君はアライド君だ」
「なぜにアライド?由来は?」
「特にない、呼びやすそうやなんか悪そうな名前だとは思わないかい?」
「無理があると思います」
こうして昔の自分は捨ててアライドという名で悪の組織の戦闘員として働いて数ヶ月後に総統がサリィを連れてきた。
………………
時間は戻って夕暮れ、アライドの話を聞き終えてサヨナラを終えた大杉さん。
「アライド君にそんな過去があったとは、きっとその総統はアライド君の人生を大きく変えて今の優しさが生きているんだ、そして昔のお爺ちゃんのこともあり私にとても親切なんだ」
大杉さんは自室にもどって、アライドに秘密にしている部屋に入った。
「だが、あのままアライド君を訳の分からない悪の組織にいさせるのは危険すぎる、もし怪我でもしたら、それに……アライド君だったら彼女と私の子にするのにピッタリの子だ」
大杉さんは電気をつけると真っ赤に光る裸電球が部屋を赤に染めてあちこちにあるガラスの器が反射している、そして部屋の奥に隠して置いてある白黒の写真を手に取った。
「そうだろ……これで君が望んだ家族に近づく…」
手に着けた皮手袋を外しその年老いた手で写真に写っている女性をなでる。
「幸せな家族に……」