アラネVSトリオ
三人トリオにより灼熱工場は占領され社員は人質に、不気味に静かな工場、一人の少女が役目をはたすため闘う。
夜の工場とはいえ、あまりにも暗く、静かな場所になってしまった。
そこに一つの足音と一つの何かを引きずる音が第一工場に向かっていた。
「あの三人トリオがまた来たってのは本当?」
「ばい……」
アラネと出入り口を閉鎖していた敵の警備員一人を蜘蛛糸で拘束しアラネによって引きずられている。
「アパートで寝たのが間違いだった、三人トリオに占領されるとは、あたし…銑三に顔を合わせられない、だからこそ……」
アラネ、第一工場に到着。
「きっちり後始末しなきゃ」
中から人の声が聞こえる、屋根裏から忍び込むか、ここは真正面から攻めるか悩んでいると。
「お嬢さん、ここは君には向いてないよ、だから帰ろうね」
アラネの真後ろに出入り口の雑魚とは違う男が立っていた、すぐに距離をとろうと屋根に糸を飛ばしたが。
「まあまあ、入り口はここからどうぞ!」
男に捕まり、目の前の扉が中から開かれ、その中に投げられた。
アラネの体は第一工場の中に入り、自分を投げた男がゆっくりと入ったのち、その部下によって扉は堅く閉められた。
「ハクジさん!その子どうした…ああ!あんたは」
「あんたは鉄板」
「鉄板いうな!どいつもこいつも同じようなこといって、終いには怒るよ」
「アネキ、すでに怒ってます」
「じゃかましい!それでハクジさん、この子をどうするつもりなんですか?」
ハクジと言われる男は腰に拳銃を差し、扉の前を陣取り三人トリオに指示を出した。
「そのガキはてめーらと俺の顔に泥を塗った、やることは一つ……口封じだ」
中女はその命令を予想していたが、気が進まない顔をした。
「アネキ…」
「やるよ、あたしらはここでしか生きていけない」
三人トリオはそれぞれの武器を構え、アラネの周囲を歩き始めタイミングを見計らう、人質の社員はステージ近くに座らされ、それをハクジの手下数十人が武器を持ち見張っている、しかし、拳銃を持っているのはハクジだけで、残り手下は細いパイプやバットなどなど。
そして始まる、アラネVS三人トリオの戦いが。
「かかってきな、だてに朝の体操参加してないんだから」
アラネの言葉が開始の合図になり、かけ声と共にパイプを振り回しながら大男が突っ込んで来た。
「叩き潰してやる!」
アラネに向け振り下ろされたパイプは空振りしたが、その威力は今のアラネが受け止めたら鉄板になってしまう。
「蜘蛛女が!うろちょろするな!」
大男のパイプが何度もアラネを襲うが、アラネの人並み外れた跳躍により見事な回避の連続。
「じれったいね、小男!」
大量のネジが入った袋を肩から下げ、アラネに向けて山なりに放り投げた、その袋を中女の鉄板が切り、大量のネジがアラネと大男に降りかかった。
「痛い痛い、地味に痛い」
そんなアラネを狙って、大男の横振りが、それを回避しようと体を動かしたら。
アラネの横腹に散々と降るネジの中を、小男の放ったナットが命中、次の瞬間。
「クリーン……ヒット!!」
大男のパイプがアラネに命中、ある程度パイプと一緒に振り回されてから地面に叩きつけるように振り下ろされた時、なんとか飛び降りることに成功した。
鈍い音と一緒に工場社員のざわめき、ハクジの部下のトリオに対しての応援が更に向上。
「ウウ……ッウ…」
地面に膝をつけ、必死に痛みを耐えるアラネにパイプを引きずり、音をたてながら近づいてくる大男。
「蜘蛛女…」
痛みで立ち上がれない、ゆっくりと両手で持ち上げられたパイプが作る影が自分を覆い隠し、巨体の大男の頭を越えた。
しかし、大男のパイプはなかなか振り下ろされないままどうするか悩んでいた。
「アネキ…」
「大男!コレを使いな」
中女が出したのはいつもの鉄板だったが、それをみた大男は容赦なくパイプを振り下ろされた。
覚悟を決めたアラネは体を丸めて歯を食いしばるように目を閉じたが、いっこうに何も起こらない、試しに目を開けると。
「あれ?何も見えない……イタ!頭うった…なんかここにきたことあるようなきが…まさか!」
アラネはパイプの筒の中にいれられた後、鉄板で穴に蓋をされて逃げられなくなった。
「勝ったぞ!トリオが勝った」
「なんだ、これで終わりか」
「ああ…お嬢ちゃんが負けた」
「もうおしまいだ、この工場はあいつらにとられるんだ」
勝ち誇った顔で手を挙げ勝利を体を使って表す大男にハクジが立ち上がり近づく。
「大男…テメ−」
「ハクジさん、オレかちましたどうです…」
工場内の歓喜と絶望のざわめきは、ハクジの腰に収められていた拳銃が大男の顔に向けられたことにより、静まった。
「大男…俺は口封じをしろと言ったはずだ、捕まえろとは言ってない」
「ハクジさん!」
そこに中女が入ってくる、拳銃は大男の顔から狙いを中女に変えた。
「その子はまだ子供です、ちょっと痛い目にあえば何もしませんよ…それに、これ以上は私には出来ません、今更だと言われてもいい…でもそこまで非情にならないといけないんですか?」
「そうだな…少しやりすぎか、仕事はおしまいだ、さっさと逃げるぞ」
ハクジのまさかの行動に戸惑いながらも社員から離れ逃げようとしている。
ホッと安心した中女がアラネの入っているパイプを見てからハクジを見た瞬間、五回の銃声と共にパイプに五つの穴が。
「ハクジ…さん?」
ハクジは再び、先ほど使った拳銃を中女に向けた。
「けどもそれはそれ、これはこれ、俺はこういうことをする組織なんだ」
「あんたって人は!」
「そして…それなりの証拠も残さないとな」
ハクジに鉄板をぶつけようといつもより大きめの鉄板を片手に持って投げようと、体をひねるまでは良かった、鉄板を投げる前にハクジの撃った弾が中女のわき腹に命中、中途半端に投げられたら鉄板は地面をこすりなが進んだが、ハクジの足下までも届かなかった。
「いままでどうもご苦労様、あとは任せた、俺らの罪を背負ってお世話になりな」
撃ち尽くした拳銃に弾を込めながら、立ち尽くしている大男の横を通り抜けて、アラネが入っているパイプに装填した全ての弾丸をもう一度打ち込み、撤退の命令をだした。
「あらかたきれいにしてから帰るぞ、キレイに…」
中女は必死に傷口を服で抑えているが、なかなか止まらない、それを大男と小男がどうしたらいいか戸惑っている。
「了解です、ハクジさん!」
穴があきまくりの鉄パイプにうずくまる人、絶体絶命の時にこそ。
「ヒーローは現れる」
工場内の照明が一列一列消える、全ての照明が消えると強烈な爆音が。
「前が見えないぞ、灯りはないのか!」
そして、ステージ中心に円上の灯りと人影、黒光りしている肌に、でっぱり腹でハゲ、腕には豪華な金の輪が両手に身に付け火のついていない葉巻をくわえて、天井に指を差してポーズをとっている、それはこの灼熱工場を守る工場長。
「工場長!」
「銑三!」
「わし、華麗に参上」
次のポーズを取り直そうとしていたら、声を上げてバットを振り回している男が迫ってきたが、それを軽くバットごと殴り、折れ曲がったバットごとステージの下に転がっていった、胸ポケットからマイクを取り出した銑三は話した。
「工場社員とお嬢ちゃんよく聞け、君たちは今までどこで働いていた…毎日汗をかき必死に鉄を溶かして固めた漢達だろう…なのになんだこの冷め切った灼熱工場は!おまえたちはこんな不完全に燃えた悪に負けるのか!そんな風に叩き、延ばし、鍛えた覚えはないぞ!このワシは!」
スピーカーからは朝の音楽が流れ、忘れていた熱さ、リズム、雄叫び。
突如、社員が雄叫びをあげて、陣形をとりポーズをとり、踊り出した。
「な…なんなんだ…この工場は…」
「みな…準備はいいか?」
「ハイ!」
銑三はリモコンを取り出して音楽を止めた。
「照明なんか暗い暗い…音楽なんて小さい小さい…わしらの照明と音楽はこれだ」
銑三に当てられていた照明は消え、真っ暗になったステージ裏から熱気と炎の赤い色が銑三の背後から出てきた。
「工場の機械からでる音と熱には勝てん!行くぞ灼熱工場社員よ、不完全燃焼の生ぬるい悪を叩き直すのだ!」
それは鉄溶鉱炉がフル活動して、その炎と熱気だった。
見た目は地獄にみえて悪魔のように銑三が立っているが、社員にとっては救出の炎、守りの浄化の炎、炎の救世主。
その熱気に当てられた社員はみるみる悪魔の戦士のように立ち上がる、ここは灼熱工場、地獄の業火がぬるい心を燃やしつくす場所。
更新が遅くなりましたが、これで復活します。
次回をお楽しみに。