ハト
はい、ハトにきまりました。
この話もどうぞ楽しんでいってください。
ではどうぞ。
「ない!ない!どこにもない」
真夜中、少女は古い地図を見ながら右往左往していた。
「伝書によるとこのあたりなのに…」
どうやら目的地を見失っているらしい。
「ハァ、もう今日は疲れた、いや正確には昨日か……なんていってる場合じゃない、このままだと……」
電灯がなんとなく光っている道を歩く、丸々1日かけて探しているのにどこにもない、歩いて体を休める場所を探し始めたが。
「お…お腹が……」
手持ちの食料は食べ尽くして2日、道に落ちている物で飢えをしのいでいたが、もう限界の様子。
「ハァ、おにぎり食べたい…せめて豆か虫でもいたら……やっぱり豆落ちてな…いかな……」
身体の限界、少女は倒れた、必死に手を伸ばして進もうとしているが、せいぜいちょっと進むのがよく、進まない時もある。
「も…もう…虫でいい……虫よ来てくれ……」
その時、這いずる少女の伸ばした手が何か丸い物を掴んだ。
「こ…コレは……」
それは酒のおつまみに使われる枝豆だった。
「コレは…天の恵み…ん?」
更に向こうを見るとどこかのグリム童話みたいに豆の道が出来ていた。
「豆の神よりありがとう…いただきます!」
少女は理性を忘れて落ちている豆を拾い上げ、道なりに食べていく、途中からなんだかテンションが上がってきた。
ある程度、食べていくといつの間にかアパートのある部屋の前にきた。
「う〜、おっ…これは」
それは大皿いっぱいに置かれたいろんな種類の豆があった。
「う〜、いいね〜、美味しいね〜……もうらめ〜……ん〜……」
満腹になった少女は扉の前で寝てしまった。
その日の朝…
総統はみんなが起きる前にカーテンを開けて、食事の用意を6時頃から始める、しかし、寝ぼけ眼で作業していた総統は玄関の新聞紙を取るため、扉を開けたさいに何かに当たった事は気がついていない、しかも結構な強さで開けている、鉄製の扉なので膨張して開けにくい時が時折あるからだ、ついでに許可はとってある。
「今日はすんなり開いたね、新聞は……あった」
新聞を取り、朝食の用意をすました総統はコーヒーを飲みながら新聞とクーポンを読んだ。
「今日はピザのクーポンと割引セールが近くであるようだ、いいね」
7時になるとアライドが起きた後にサリィが朝食を食べる、後片付けはもちろん総統。
その後、水犬を水筒から出して、水道で水浴びをサリィがする、ついでに庭に植えてある木で総統が作ってみたハンモックで寝ているアラネが起きる。
アラネは移り住んだ町を夜に見て回っているようで、いつも起きるのが遅い、エンクランスは仕事で、大抵は家に帰ってこない。
「総統、新聞取りに行く時に、昨日の夜に仕掛けた罠に引っかかってた鳥いました?」
アライドが食器洗いしている最中の総統に話しかけてきた。
「そういえば昨日、罠みたいなの仕掛けていたね、見てきたらどう、ハッキリと見てないから」
「分かりました、見てきます」
アライドはすぐさま玄関に向かって走った。
「まぁ遊びで作った罠だから、何も引っかかってないと思うけど」
食器洗いをすまして、テーブルを拭き始めたら、アライドが急いで戻ってきた。
「総統!総統!鳥捕獲しました」
「それはすごいね、それじゃあ見に行こうか」
そして、扉をゆっくり開け罠を設置した場所を見てみると……。
「う…うわーー、ひ…人がー倒れてるー」
「総統落ちついて下さい、とにかくどうします?」
「早く家の中に運ぶんじゃ」
総統が背中に担いだ時少女の寝言が聞こえた。
「…ふー…豆ー…いい豆ー…新鮮な豆ー…貴重な豆ー…豆の中の豆ー……ミラクル豆ー…つまみ豆ー……あれ?豆て何?豆て美味しいの?豆、豆いってたら分かんなくなってきた、分かんないから言っちゃいな、心の中から叫ぶんだ……まーめー……ふー…豆ー…」
こんな寝言をループしている。
「総統!もうこれ重症ですよ、どうするんですか」
「とにかく布団で寝かすんじゃ」
「どーしたんですか?」
サリィが玄関の騒がしさを察して来てくれた。
「サリィちゃん、今すぐお客様用の布団出して」
「黒ですか?白ですか?」
「白の方で」
「枕は羽毛?プラスチック?低反発枕?」
「サリィちゃん、うちにはプラスチックしかないよ」
少女を布団で寝かせて、一段落した総統はバイトの時間がきてしまい、アライドとサリィに起きたら作っておいた食事を出すように指示して、総統は資金調達に出かけた。
「まさかあんな罠に引っかかる人がいるなんて…」
「今度遊ぶ時は慎重に仕掛けないと」
アライドとサリィが考えていた事は原付バイクで移動中の総統と同じだった。
「朝から人の介護をするなんて想像もしなかった、今度からは慎重に仕掛けるように帰ったら言おう、でもアライド達に任せて大丈夫かな……、まあ大丈夫でしょう、アラネと水犬がいるし、でもこうなるんだったら昨日の時点で止めていれば……」
昨日の出来事……
今日も無事、配達が終わった。
「ハハハ、あなたの仕事の良さはもう言い表せないねハハハ」
総統は資金調達の為に郵便局で配達の仕事をしている、総統は今、平和郵便局の店長、平鳥鳩和と話しをするため店長の部屋に呼び出されていた。
「ありがとうございます、これからも真剣にやらせてもらいます」
平鳥鳩和さん、いつも笑顔が絶えない人で、従業員からは頭の中と顔が春の人、そしていつも平和な毎日を送らせようと頑張っているので、平和さんと言われている。
「ハハハ、そんなに固くならなくていいよ」
平和さんの部屋にはいつも鳩をイメージしたポスターが貼られている、そのポスターは毎週変わり、変えられたらポスターは受け付けや窓口に貼られる、それが楽しみで来ている人がいるとか、総統もその一人、ついでに全て自作らしい。
「そろで……ご用は…」
「ハハハ、あなたは毎日出てきてくれている、だから明後日から休みをあげようと思って、ハハハ、ついでに有給で」
「良いんですか!?」
「ハハハ、もちろんさこれはみんなでもう決めた事なんだハハハ、かわいい子供達と遊べばいいハハハ」
子供達……サリィ、アライド、アラネ……、今考えたら団員の半分が子供!?
「は…はいありがとうございます」
「ハハハ、それじゃあ明日も頼むよ、ハハハ」
総統は平和さんにお礼をして、部屋を出ようとしたら、扉からノックが聞こえた、扉を開けるとそこには、背は総統と同じぐらいで、何かのアスリートなのか引き締まった身体、鋭い目の気の強そうな女性が立っていた。
「ハハハ君だったか、話しはちょうど終わった所だ、それではまた明日、ハハハ」
総統は入れ替わるように部屋を出て、閉められる扉の向こうでは、あの女の目と春から寒い冬のような笑顔が消えた平和さんがチラッと見え、扉は閉じられた。
「気のせいだよね」
そうしてアパート前に総統が着く途中に、どこぞの童話のように豆がアパート前に到着するように置かれていた。
そうして、アライドとサリィがアパートの扉の前に、皿いっぱいの豆を置いている最中だった。
「何してるの?」
「総統、お帰りなさい、今まさに鳥捕獲作戦を実行中です」
「この豆で捕獲するの?網とかじゃなく」
サリィ説明鳥捕獲作戦。
「この前の花見で、残ったお酒をかき集めて、その中にいろんな種類の豆を入れます、数日つけた豆をこのアパート付近にまき、この扉の前にある皿に来るように誘導、そして鳥は大量のアルコール入り豆を食べる、で倒れている所で捕獲、と言うことです」
何か物凄く豆が勿体ない気がする…。
「大丈夫です、豆は近くの店で廃棄処分の豆を貰ってきました」
「この皿まで鳥がたどり着けるのか心配じゃ」
たどり着いても山盛りの豆を食べたらどうなるのか……。
「でも明日の朝にまいてきた豆を拾ってくるんじゃ」
「ハーイ」
こうして扉ギリギリに置き扉を閉めるとき総統は思った。
「まあ人が食べるわけじゃないし……、大丈夫でしょう」
大丈夫でしょう……
大丈夫でし……
大丈夫……
誤って人を捕獲した日の昼、総統の住んでいるアパートで総統は叫んだ。
「大丈夫でしょうと思った結果がこれだよ!」
「総統…なんで帰ってきてるんですか?」
そう普通なら総統はまだ仕事の途中のはず。
「この話しを平和さんに話したら配達五つで帰っていいと言われたんじゃ」
「平和さん……優しすぎです」
隣の部屋では少女がまだ寝ている、寝言はましになったが、豆の単語は時折聞こえる、なので総統は昼飯に豆のお雑煮を作っている。
今、アパートにいるメンバーは総統、アライド、サリィの三人、アラネと水犬は散歩に出かけている。
「それじゃあ、あの子が起きるまで全員待機で」
「ハーイ」
無事に少女が起きるまでそんなに時間はかからなかった。