四門アラネ
四季蜘蛛は悩んでいた、見知らぬ男が我らを束縛するあの忌まわしき鈴を持っているのだ。
そして、その男が女王の眠りを鈴と共に起こしてしまった。
男が女王と話をしている間、我らの同胞は期待に満ち溢れていた。
我ら四季蜘蛛もそれに従えばよいのか…。
否!そんなはずがない!我らは死との者とは違い何百年と土の中で封印されて、先代からの遺言どうりに従ってきた。
そして、我ら四季蜘蛛は遺言どうり封印から解放された。
つまり…、自由になったのだ、だが先代の娘であるアラネは生きている。
忌まわしきあの鈴もあの男がもっている。
このままでは本当の自由は得られない、ならば、することは変わらない…。
鈴を守ろうとする者と先代の娘を亡き者にすること!。
総統の掛け声と共に作戦は開始した。
「エンクランス、受け取れ」
と、総統が声を出したら。
「総統!逃げろー」
総統に危険が迫っていると松木が叫んだ。
しかし、松木の声はさっきまで足を踏んでいた四季蜘蛛によりさえぎられ、総統に向かって残りの二匹が総統がいた二階の窓に飛び込んできた。
長い間経っていた屋敷だけに脆く、二匹の四季蜘蛛の体当たりで、総統のいた廊下はあっけなく壊れ、埃が舞い上がり、あっというまに見えなくなってしまった。
「総統ー」
「アライドー」
エンクランスとサリィはそれぞれの名前を叫んだが、四季蜘蛛が総統と、ついでにいたアライドを探している最中にだしている屋敷が壊れていく音が大きかった。
「鈴はまだ総統が持っている、このままでは…」
アラネに鈴をわたせない、総統の話からすると。
あの蜘蛛は松木からアラネを守ろうとしていたんじゃない、むしろ捕らえようとしていたんだ。
しかし、鈴の登場によりアラネは眼中にない、それほど鈴が四季蜘蛛にとって恐ろしい物なのだろう。
だが、今は総統の安否が気になる、そう思いながら総統がいた今は無き二階を見ていたら、埃が舞い上がり出来た煙の中からエンクランスに向かって鈴が飛んできた。
しかし、四季蜘蛛に襲われながら投げられた鈴はエンクランスにはとても届きそうにない。
さらに目の前には四季蜘蛛が道を塞いでいる、鈴が落ちるであろう着地点にサリィを背負っては走って抜けることは不可能だろう。
しかし、鈴が落ちる着地点に走って蜘蛛より早くとれる唯一の団員がいる。
「水犬!蜘蛛にとられる前に鈴を…」
と言い終える前に水犬はすでに行動を開始していた。
目の前の四季蜘蛛がそれを阻止しようと前脚で水犬に攻撃してくる。
水犬はその攻撃を上回る速さで蜘蛛の真下をくぐって抜けることに成功した。
「水犬、そのまま鈴をとるんだ」
エンクランスの声に反応して、水犬は真上に飛び上がり口で鈴をとることが出来たが。
「水の化け物、こっちに鈴を早く投げるんだ」
すると、さっきまで松木の足を踏んでいた蜘蛛が水犬に向かって飛び込んできたのだ。
水犬は首を振り、蜘蛛に当たらないように山なりに投げたが、四季蜘蛛の体当たりが水犬に命中、そのまま水犬は窓を突き破り、総統達と同じように煙の中に吸い込まれた。
水犬の投げた鈴は山なりに松木の近くに落ちた。
松木はすぐさま取りに行こうとしたが、這いずりながら取りに行くには少し遠く、折れた片足を引きずりながら必死に鈴に近ずいていく。
「松木、お前も死にたくなかったら鈴を早く」
「分かってる、だから少し待ってろ」
松木はボロボロの体で落ちた鈴に徐々に近ずいている、もう少しで届く距離に近づいた時、廊下から四季蜘蛛に比べたら小さい蜘蛛が松木に近ずいてきた。
エンクランスや総統はアラネを助けようとしている人、だから鈴を鳴らした後は襲っては来なかったが、松木はアラネに危害を加えた張本人、松木はすぐさま鈴を手に入れ、エンクランスに投げようと試みたが、両足に糸が絡みついてきた。
「またかよ」
必死に抵抗しているが、抵抗する毎に足だけでなく体のあちこちに絡まっていく、投げなければならない手も動けないほどにくっつき引っ張られている、その糸をたどっていくと、一カ所だけ赤い光が灯った窓に伸びていた、松木はそこに引きずり込まれそうになっている。
「この態勢を崩したら投げてもエンクランスまで鈴が届かない…しかし、これ以上は…」
そんな諦め出した時
「このダメ男、誰のせいでこうなったか分かってるの!、そんな所であきらめたらあんたは死んでもダメ男として、私達蜘蛛の餌になってもいいの?」
「…そん…な…のは…」
松木は最後の力を振り絞って、腕に絡まっていた糸を振り払い、エンクランスに向かって投げた。
「絶対になりたくねー」
その後の必死の抵抗もむなしく松木は窓から廊下に引きずり込まれた。
しかし、鈴は無事エンクランスの手元にきた。
「松木…、生きてることを願っている、今からそっちに投げるからアラネ受け取れ」
エンクランスは鈴を投げたがそれを目の前にいた四季蜘蛛が妨げようとした。
「しまった、こんな所でミスを」
「この距離なら」
アラネは指先から出した糸を鈴に絡みつけ、間一髪、四季蜘蛛にとられる前に回収した。
ついにこの時がきた、この鈴を私が使えば本当に蜘蛛の動きは止まるのだろうか?
私はあの人の…本当の…娘では…ないのに、こんなことしてもいいのか?
しかし、総統達が命を賭けて届けてくれた鈴と希望を裏切ることは出来ない…でも…。
「アラネ!」
そんなアラネを見かねたエンクランスが、四季蜘蛛により壁に追い込まれながら。
「命令をする側、受ける側、どちらも信用してなければ最善の行動は出来ない、ビクつき、脅え、何もしない奴は自分の居場所、部下の居場所を無くすことになる」
これは、寝る前にエンクランスに聞いた言葉。
「しかし、その逆もある、命令をする側、受ける側、どちらも信用していれば、最善の行動がとれる、信頼し、勇気があれば自分の居場所をつくり、さらには迷っている者達に居場所をつくることが出来る」
エンクランスは喋りながら後ろに下がっていたが壁に邪魔され動けなくなってしまった。
「君はいま、先代の作り上げてきた最強の軍隊を相手にしている、しかし、今の蜘蛛達には居場所がない、この屋敷に住み込み、放浪し、まさに幽霊のように居場所を探している、ならばそれを上回る蜘蛛達の居場所を今!君が創ればいいんだ」
「エンクランスさん…」
その時、窓を突き破り肩に水犬を抱えた総統とアライドが出てきた。
「エンクランスの言うとうりじゃ、アラネちゃん、今から君の軍隊を創るのじゃ」
「総統さん…」
「そうだ!」
必死に蜘蛛に抵抗して、命を繋いでる松木が。
「だからこそ、鈴を鳴らすんだ」
松木は蜘蛛と一緒に糸を振り払っている。
「ダメ男…」
「ダメ男言うな」
エンクランス、総統、松木の言ったとうり、私が今から自分の居場所…女王としての居場所を創り、前の女王を上回る軍隊を創る、その第一歩に。
アラネは木の天辺に登り、鈴を身に着けた片腕を天にかざした、周りは静かとは言えないが、鈴の音が響き渡る事を祈りながら、総統達の声が聞こえた。
「アラネちゃん…」
総統が四季蜘蛛に追われながら、私の名前をよんでくれる。
「鈴を…」
エンクランスの背に乗りながらサリィの後に合わせてみんなが、合図をとってくれた。
「鳴らせー!」
鈴が鳴らされた数分間、屋敷が崩れる音、自分が吐く息、心臓の鼓動、それ以外の音はなかったかのように消えていた。
やがて、屋敷の崩れる音も消えた。
今、アラネの目に映っているのは頭を亡くしても、忠実に従えし兵士達、封印されし化け物、そして、家族でも身内でもないのに命を賭けて、私を助けようとしてくれた人達。
「母上…私は…」
もう恐れはしない、私はもう屋敷に住みついている幽霊ではない、蜘蛛達を操り、導く、四門の血をひいたもの。
「私は…私は…」
だからこそ、越えなくてはならないものがある。
「母上、私はあなたを越える蜘蛛の居場所を創り、いつの日か越えてみせます、そのためにも…まずは…」
アラネは鈴を軽く鳴らし、両手を広げ、屋敷全体に響き渡るように宣言をした。
「私は四門アラネ、先代の血をひき、鈴を受け継ぎし者、先代に従えし兵士達よ、すぐに捕らえた者を解放し、私が呼ぶまで待機していろ、しかし、それ以外の者を傷つけてみろ、私が絶対に許さない」
松木の周りにいた蜘蛛は、松木を置いたまま天井、床下にひきあげていった、その時、松木が見たものは怒りの赤い光ではなく、優しく、そして、うれしそうな色をしていた。
「終わった……終わったんだ」
松木は体についていた糸を払いながら、大声で笑った。
「アラネ!やったんだ、俺達はやりとげたんだ」
しかし、中庭はいたって静かだった、笑いもなければ歓喜の声もなかった、そこには志と絶対的殺意が広がっていた。
「やっぱり、あなた達だけは、ダメみたいね」
そこには、今まで光っていなかった四季蜘蛛の眼に赤い光が灯っていた。
「ちょうど良いわ、これでハッキリさせましょ、どっちについた方が身のためか」
「アラネちゃん、我らも手をかそう」
総統がまた私を助けようとしている、でも。
「いいえ総統、これは四門家である私が決めたこと、だから手は出さないで」
「しかし…」
「大丈夫、一つだけ勝つ方法があるから」
四季蜘蛛が徐々にアラネが登っている木に囲むように近ずいている。
「総統、ここはアラネの言ったとうりにしましょう、だからアラネの邪魔にならないように」
アライドの言うとうり、満足に行動が出来るのはアラネだけだった。
「アラネちゃん…、危なくなったらすぐに逃げるんじゃぞ」
総統達はアラネの邪魔にならないように屋敷の中に入った。
「総統…ありがとう」
アラネは着ていた着物の膝までを破り、自分が動きやすいように調整した。
もし、四季蜘蛛の攻撃が当たれば、タダではすまない、私がするのは一つだけ、でもその前に。
「そろそろしゃべったらどうなの?声なしキャラで通ろうとしないで、しゃべったら?」
「小娘がいいきになるなー!」
「しゃべった!」
松木ふくめ総統達も驚いた。
「確かに鈴はそちの手に渡ってしまった、しかし、貴様を倒せば問題ない、我等四季蜘蛛は自由を手に入れるのだ」
「そんなことはさせない、あなた達が自由になれば大変な事になる、だからここで倒して私の下につきなさい」
「ならば、倒してみろ、唯一我等を倒した貴様の…先代の残した最強の兵士…四季蜘蛛を」
話が終わると同時に、総統達に襲いかかった二匹がアラネに向かって飛び込んできた。
アラネはそれを自分の糸と脚力で飛び越え二匹はそのまま屋敷の外に、その後、森の木が倒れる音がした。
「あんなもの、まともに当たればアラネちゃんは」
アラネはうまく屋根に着地したが、すぐに四季蜘蛛の糸が襲いかかってきた、自分の糸で防ごうとしたが、四匹目の蜘蛛が足場にしていた屋根を、脚で壊してきた。
アラネは崩れる屋根と一緒に落ちながら、すぐさま標的を中庭の木にかえて飛び移ろうとした、それを阻止しようと口を開けて飛び上がってきたが、すでにおそく三匹目の糸をかいくぐりがれきに当たりながら木の枝にとまった。
アラネは乱れた呼吸を整えようとしたが、屋敷の外に出てしまった二匹が戻ってきて、四匹目も着地、そして木を囲み振り出しにもどった。
「どうした小娘、もう息があがったのか?」
必死に呼吸を整えようとしているが、なかなか戻せない。
「ハァ…ハァ…、まだまだ…やれるわよ…」
「そうか…なら…続きといこうか」
四匹の糸がアラネに襲いかかる。
息が整っていない状態で、飛び上がったら糸に当たってしまう。
「…なら」
アラネは木から飛び降り、四季蜘蛛の足に糸を伸ばし、馬に乗るように背中に乗っかった。
「どうよ、これなら味方に攻撃しないと私に当てられないわよ」
残りの三匹は動かない、これなら…。
「…乗ったな」
直後、乗っていた四季蜘蛛が天に向かって飛び上がった。
「うっ…」
アラネはそのまま背中に貼りつけられるように、うつ伏せになった。
上昇がとまり落ちようとした時、あたりが若干明るくなっていることに気がついた。
「あと…もうちょっと…」
落ち始めた四季蜘蛛の背中から、アラネはふらつきながら、ある場所に行くように、屋根に飛び移ろうと走り、跳んだ。
だが、考えなしに跳んだ結果、地上にいた蜘蛛の糸が足に絡みついてしまった。
「しまった!」
「これで…終わりだ」
アラネは急いで糸を振り払おうとしたが、そのままアラネが飛び移ろうとした屋根に叩きつけられるように落とされた。
屋敷が崩れる音と一緒に鈴の音が鳴り響いた。
総統達は見ているしかなかった。
四季蜘蛛が飛び上がったのは罠だった、その周囲にアラネが糸をくっつける場所がなかった、避ける為に必要な物が下にしかなかった、そこを狙われた。
だが、その危険をわかっている上で、ある場所に行かなければならなかったのだろう。
その結果がこれだ。
四匹はアラネを落とした場所にゆっくりと近ずいていく。
「待て」
四季蜘蛛は足を止め振り返ると、総統とアライドが立っていた。
「それ以上、傷つけなくてもいいのではないか」
「小娘は言ったはずだ、どちらに身を置いた方が得かを教えると、ならば教えてやろうじゃないか…」
そして、一匹が総統に近ずいてきた、総統は一歩も引かずにその場に立ったまま、四季蜘蛛の話を聞いていた、そして。
「我ら先代が最強だということを」
認めるしかない、アラネちゃんが倒れた今、もう打つ手が…。
「まだ…終わって…ない」
そこには傷だらけの体で、鈴を鳴らしながら立ち上がったアラネがいた。
「小娘…その鈴を鳴らすなー!」
四匹がアラネに向かって動き出した、今までとは違い敵を倒すための速さだったが、急に動きが止まった。
「ありがとう…みんな、私の指示通りに動いてくれて」
それは、窓や廊下、床下、屋根に潜んでいたアラネの現女王軍についた蜘蛛が、四匹の四季蜘蛛の動きを止めていた、それは今までいた蜘蛛を圧倒する数だった。
「貴様ら…我ら四季蜘蛛に対抗するというのか、小娘がいいきになるな、こんな糸すぐに突き破って…」
その時、アラネの背後から眩い光が差し込んできた。
「あの…ひか…り…は…」
直後、四季蜘蛛から聞いたことのない声を出しながら、朝日から逃げようとしている。
「総統…これは」
「そうじゃ、あの本に書かれていた絵と全く同じじゃ、あれが四季蜘蛛を倒す方法だったんじゃ」
アラネは鈴をつけた腕を使い四季蜘蛛を指差した。
「四季蜘蛛!認めなさい、あなたは私の軍に負けた、このまま負けを認めて私につくか、そのまま日に焼かれて倒れるか…選びなさい!」
「小娘が…あの時の女と同じことを…分かった、我らはそちら側につく…だから」
「分かってる」
アラネは頷き、鈴を鳴らし蜘蛛に合図を送り、糸はとかれ、四季蜘蛛は土の中に潜り込んでいった。
「…みんな…もういいよ……」
その後、何もいなかったかのように蜘蛛はどこかに帰ってしまった。
「アラネちゃん!」
「総統…みなさん…」
私は勝ったんだ、あの四季蜘蛛に、でもこれは一人の勝利ではない、総統、アライドが見つけてくれた鈴、水犬、エンクランス、松木がそれを届けてくれた。
そして、私についてきてくれる多くの蜘蛛達の助けがあったからこその勝利。
アラネの緊張の糸が千切れ、自分でも知らないうちに涙がこぼれ落ち、その量は増えていき、いつのまにか座り込んで、泣いてしまった。
それでも私は、止まらない涙をふき、震える声で泣きながら言った。
「みなさん…ほ…本当に…ありがとう」
こうして長かった夜が終わり、アラネは本当の女王としての朝を迎えた。
その日の昼過ぎ…
「もう帰るんですか?」
アライドと松木以外のメンバーは屋敷の門の前に立っていた。
「そうだよ、ここには一日滞在で考えてたから、それに仕事もあるし」
「そうなんだ…」
「大丈夫だよ、またいつの日か会いに行くから」
「総統ーー」
その時、屋敷からアライドが帰ってきた。
「どうだった?忘れ物はなかった?」
「はい、ありませんでした、でも、松木がどこにもいないんです」
「まったく、あのダメ男どこにいったのよ」
「松木なら先にどこかえいきました」
エンクランスは松木を最後に見たのはすでに屋敷の外だったらしい。
「どうせならみんなで帰ろうと思ったのに…」
総統達は門をくぐり屋敷のそとにでた。
「それじゃあねアラネちゃん」総統
「バイバーイ」サリィ
「アラネ、またいつか」エンクランス
「それじゃあ」アライド
「うん…お元気で」アラネ
アラネは見えなくなるまで見送るつもりだった、でも別れが悲しくなり屋敷の中に帰ろうとしたら。
総統達は屋敷から数歩歩いた時、体のむきを屋敷、アラネに向けた。
「アラネちゃん!」
「なんですか、総統さーん」
「我等W団に入らないか?」
「…考えておきます」
「そうか…それじゃあ」
その後、振り返ることなく総統達は帰っていった。
アラネは長年一人だった、今は違う、屋敷には部下の蜘蛛達がいる…でも。
アラネはひどい姿になった中庭の土の中にいる四季蜘蛛、周りの蜘蛛に話しかけた。
「みんな…私の話を聞いて…」
「総統、アラネは入ってくれるんでしょうか」
「それは…アラネちゃんしだいじゃ」
総統達は道なき道を歩きながら家に帰っていた。
「今回のは相当危なかったですね」
「これからこんなんばっかりなんですか総統?」
「それも、これからしだいじゃ」
周りの木は総統達の帰る方になびき、風も吹いていた。
その時、背後の木から何かが総統の背中に落ちて来た。
「うぎゃー」
総統は変な声を出して何かと一緒に倒れた。
「アラネちゃん!」
総統めがけて落ちて来たのはアラネだった。
「総統、私も一緒について行く…私…W団にはいる!」
アラネはW団に入るらしい、だが。
「屋敷は大丈夫なの?」
「蜘蛛たちに話はつけて、総統達を追って来たの」
「そうか…」
総統は立ちあがった。
「それじゃあいいかいアラネちゃん」
「うん」
アラネは頷いて総統を見ている。
「我等W団は正式に四門アラネをW団メンバーにいれよう、それでは一緒に」
総統はいつもの構えをとり屋敷に聞こえるように声を出した。
「我等W団!」
数日後…
総統の住んでいるアパートから少し離れた公園、そこに一人の住人がいた。
彼はベンチに座ってカップ酒、商品名あの子の涙を飲んでいた、とても苦い酒が口の中、頭の中に広がっている。
「俺は…」
折れた脚を見ながら男は考えていた。
俺は今までいろんな涙を見て来た、でも、その中でも今まで見た事のない涙だった。
単に悲しんでるわけでもなく嬉泣きでもない、いうなれば両方、それでとても神聖なものだった。
「おじちゃん?なんで朝からこんなとこにいるの?」
紫の着物を着ている女の子からの質問、無視はできない。
「おじちゃんはね今まで自分の事しか考えてなくて、いろんなことをしてきたんだ、でもね、何も考えず突っ走ったらこうなっちゃたんだでもある奴らに教えられ、あの涙を見ておじちゃんは前の自分とは比べ物にならないぐらい何もなくなったけど、何か大切な物を取り戻したと思うんだ」
「ふーーん、そうなんだ」
「だからねお譲ちゃん、見えない物だけどそれを大切に持って、なくすんじゃないよ」
女の子はベンチから降りて電柱を登って天辺に到着したあと、松木を見た。
「わかってるよ、あんたも元気でねダ・メ・男」
そのまま女の子は電柱の上を飛び、隣の電柱に飛びそのままどこかえいってしまった。
「それじゃあなアラネ…」
松木は飲み干した酒を捨てて自動販売機に買いに行ったら、総統達が重たそうな荷物を持って出て来た。
「おお、松木こんなとこにいたのか、どうじゃ今からあの場所に行くんじゃが一緒に来ないか」
「いいんですか?」
「もちろんじゃ、それじゃあまたあとで」
松木は販売機から先ほど買った酒、商品名、今亡き栄光始まる友好、を開けラッパ飲みで泣きながら飲んだ。
「これも苦いな…でも良い味してる…」
「母上…」
アラネは屋敷から出る時誓った。
「私…あの人たちについて行く、それで…もっと女王とは何かを教わってくる、それまでみんな待っててくれる?」
そしたら蜘蛛達が自分の足を擦りまるで拍手をしてくれてるかのように鳴り響いた。
場所は電柱の上
「待っててみんな…私、立派な女王になってみせる」
「おーーい、アラネちゃん」
「総統さん」
総統は重い荷物を持っている、今から向かうのは蛍池、水犬の生まれた土地らしい。
そこで花見をするようだ。
これからどんな事がおきるか分からないけど…。
「私…一生懸命世界征服します」
そして、アラネは総統の見よう見まねに構えた。
「我等W団!」