作戦開始
アラネは夢をみていた・・・、何年前・・・いや、何百年も前に死んだ先代の美しき後ろ姿。
紫の衣を着て、朝日をその長い黒髪で浴びながら、腕に通した鈴で四季蜘蛛を配下にしていた。
そして、天にかざした片腕を振り下ろし、もう忘れてしまった音を鳴らしていた、いつの日か私も・・・・あの人のように・・・。
アラネは夢をみていた・・・、何年前・・・いや、何百年も前に死んだ先代の美しき後ろ姿。
紫の衣を着て、朝日をその長い黒髪で浴びながら、腕に通した鈴で四季蜘蛛を配下にしていた。
そして、天にかざした片腕を振り下ろし、もう忘れてしまった音を鳴らしていた、いつの日か私も・・・あの人のように・・・。
『四季蜘蛛は何百年と、この山周辺にすんでいる守神、それを封印、そして飼い慣らしたのが四門家、しかし、四季蜘蛛は今か今かと刃向かう瞬間を、四色の花壇の土の中から狙っている』
総統は今まで見てきた蜘蛛の他にさらに、強大な力を持った生物がいるのか!、と思ったが、本自体もうボロボロだ、さすがにもう成仏しているだれろう。
そう思い次のページを開こうとしたら、アライドがふすまで、なにやら遊んでいた。
「皆さんごらん下さい、いつもは静かで、お先真っ暗だった屋敷がなんと、今は蜘蛛の赤い目により明るくライトアップされ、奇妙な演出効果をだしています。
さらに、うなり声が四方八方から聞こえてます・・・そう、奇妙な演出の二重演出です。
そして人の気配・・・ではなく、蜘蛛の気配が少なかった廊下にご覧のとうり、ネズミ一匹通さない蜘蛛の糸バリケードが張られています。」
アライドは廊下のふすまを少し開き、今の廊下と屋敷の情報をBA風に教えてくれた。
「アライド君、そのBA風、何なのか分かる人、少数だと思うよ」
「でも総統、そのままビホアフだと言ってしまうと、何を言われるか分かりませんよ」
「それもそうなんじゃが・・・、それよりアライド君、どちらかというと今は危機的状況じゃ、故に懐中電灯を持ってきとくれ」
アライドはすぐさま2つ持って来て本に光を当てた。
『よくここまで読んだね、遂に対処法を教えるよ、一度蜘蛛達を怒らしたら対処法は一つ、現女王の命令もしくは四鈴の音でしか止まらない』
「・・・・・・えっ、それだけ?」
総統は次のページをめくろうとしたが、そこにはこの屋敷の玄関だろうか、そこから光が差し込み、一人の鈴を付けた片腕を上げている人と長く伸びる影、そして、
無数の蜘蛛と四季蜘蛛であろう大きな四匹の蜘蛛が裏表紙に書かれていた。
「総統、鈴ならここにあります」
アライドは解決策が見つかって、嬉しいのか事実満々であの鈴を見せにきたが。
「しかしアライド君、この鈴を鳴らしても蜘蛛が止まるだけで、問題は解消されないよ」
この一言で笑顔が無表情になってしまった。
「じゃが解決策は見つかった、その鈴をアラネちゃんに渡し、現女王の命令と鈴の力で問題解決…」
と、いくはずだったが、総統達が見たのは気絶?していたアラネだった。
「大丈夫ですよ総統、もしかしたら起きてるかもしれませんよ」
総統は手渡された鈴を手に取り握り締めた。
「そうじゃな、考えていても、動いて確かめる方が正確じゃ、アライド・・・この部屋から出て中庭に行くぞ」
「でも総統、どうやって蜘蛛とバリケードを抜けます?」
アライドは心配そうに聞いてきたが、対処法は総統の手元にある。
「バリケードは厳しいがコレを使えば・・・」
水犬、サリィ、エンクランス、松木、絶体絶命の状況、カギであり唯一止める事が出来るアラネは気を失っている。
廊下には数えきれないほどの蜘蛛、中庭では松木を捕らえようとしている四季蜘蛛三匹、エンクランス達に近ずきつつある一匹。
エンクランスは肩に背負っているサリィをどう逃がすか考えているが・・・。
どうしようもない、後ろに下がりすぎるといつ窓から蜘蛛達が降ってくるかは分からない、しかし、前に進めば化け物の餌になってしまう。
時間と距離、絶望が迫ってきている。
「どうしてこんなにうまくいかないんだ」
中庭に育っている立派な木にしがみついているが、常に揺れ動いている、いつ手を離してしまうか分からない。
「何か・・・別の物に・・・」
しかし、周囲を見ても何もない、二階の窓には距離がある、飛び移れたとしても蜘蛛に助け、もとい快く引き込まれるだろう。
だが、下を見てみるとさっきアラネが使っていたハンモックが。
「すこし危険だが・・・ちょうどいい」
そう思い降りようとした瞬間、一匹の四季蜘蛛が飛び上がり木にぶつかってきた。
想定外の相手の行動、片手はアラネを抱え込んでいて使えない。
「しまった!」
松木は木を掴んでいた片手を離してしまった、このままではアラネと一緒に落ちてしまう。
このままでは2人とも・・・。
松木は自分が落ちる前にアラネをハンモックのある方に投げた。
そして、木の枝に当たりながら落ちていった。
「松木ーー!」
木の枝の反動で、落ちた時の衝撃は少なかったが体はボロボロだ。
「……ん、まだ生きてるのか」
そう思い体を起こそうとしたら、蜘蛛の前足が松木を逃がさないため足を踏みつけてた。
相手はもちろん手加減はしてくれなかった、これで何度目だろうかと思いながら。
「くっ…またかよ…」
あまりの激痛に叫びそうになったが、目の前の圧倒的な死の予感に叫ぶことが出来なかった。
「松さーーん」
W団のメンバーが呼びかけてくれるが、もう駄目だ
「ここで・・・もう・・・」
その時、急に蜘蛛達の動きが止まった。
「どうしたんだ?なぜ動きが止まったんだ」
耳をすましてみると、かすかに鈴のねが聞こえる、二階から。
「待たせたな」
ゆっくりと二階の窓に黒い人影が浮かびあがった。
「その声は」
「総統さん!」
そこには体中に蜘蛛の糸が付いた総統とアライドが立っていた。
「総統・・・なんかカッコよく登場しようとしましたが、失敗してますね」
「アライドくんこれはどうしようもないんだよ」
総統は手に持っていた鈴をアラネがいると思われる方に向けて、大声でアラネを呼んだ。
「アラネちゃん!起きるんだ!」
「うう…、あ・・・頭が・・・」
ようやく目が覚めたようだ。
「アラネちゃん、よく聞いてくれ、今、蜘蛛達の大半はアラネちゃんを守ろうとして、私達を捕らえようとしている」
総統は鈴を定期的に振りながら話を続けている。
「しかし、そこにいる四季蜘蛛は君を捕らえようとしている」
「総統さん、その鈴は・・・」
それは忘れさられていた四門家の家宝で、先代が使っていたものだった。
忘れてしまった音が屋敷に響いている、忘れていた音が頭の中で響いている。
「アラネちゃん、この蜘蛛達を止める事が出来るのは君だけだ」
総統はエンクランスに向かって話しかけた。
「エンクランス、ここからではアラネが見えない、しかしそこからならアラネが見えるはずじゃ」
エンクランスの方向からアラネは確かに見える、エンクランスは返事をした。
「今からこの鈴をそっちに投げる、そしたらまた蜘蛛が襲いかかってくるだろう、これは賭けなのじゃ」
周りの蜘蛛がそろそろ痺れを切らしてきた、もう猶予はない。
「我等W団が力を合してこの鈴をアラネちゃんに必ず渡すのじゃ、アラネちゃん!」
総統は呼吸を整えて、最後になるかもしれない、これが失敗すればどうなるか想像がつく、しかし!
「我等W団は必ず鈴をアラネちゃんに渡してみせる!、皆やるぞ」
それぞれが不安を持っていたが、そんなものは総統の掛け声とともに消えていった。
各々軽くうなずき作戦開始のように全員で。
W団全員「我等W団!」
ついにここまで来ました。次でこの話がおわる予定です。
まだまだやめるつもりはありません、どうか今後も読んで下さい
次の投稿は約二週間後の予定