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推しの頼みは断れない

「織本くん少し付き合ってくれるかしら?」




「いいですよ。秋津さん」




 正式に映像研究会として活動するようになって早三日。俺は依頼の切り抜き動画を昨日納品した。炎上中のでの投稿だったが切り抜き自体は視聴者にはかなり好評を得ていた。




 そんな中俺は秋津さんに呼ばれた俺を美穂が呼び止めた。




「あき、ちょっと待って」




「どうしたんだ? 今人に呼ばれてるから手短に済ませてくれ」




「そんな事知ってるよ。けどあき、最近妙に秋津さんと仲が良いけど、もしかして何かあった?」




 美穂の奴、妙に感がいいな。ここ二週間、俺と秋津さんは放課後あの教室で集まるぐらいで、特に教室内では秘密を知る前と同じように接してるはずだ。




「俺と秋津さんと仲が良い? そんなはず無いだろ」




「そうかな?何か隠してる事とか無いの?」




 美穂は納得していないのか、俺に足を突き合わせる距離まで顔を近づけて問い詰めてきた。美穂は流石運動部に所属してる事もあって、健康的な引き締まった体をしている。そしてスポーツ後にシーブリーズを欠かさずしているのか、りんごのような爽やかな香りがする。幼馴染として長く接してきたが、美穂も女性らしい体つきになってきたなと実感する。




「そっそんな事無いぞ。美穂の勘違いに決まってる」




 流石にそんなに体が近いと動揺が隠しきれない。




「かなり動揺してるんだけど、絶対何か隠してるよね」




「お前がこんなに顔を近づけるから動揺してるだけだ。思春期真っ盛りの男子を舐めんな」




「あ、ごめん」




 美穂は今自分がしていた事を気づいたのか急いで俺から距離をとって顔を俯けた。




「それじゃあ、行くから」




 美穂が少し照れている隙に離脱することにする。俺は秋津さんに連れられてあの廃教室に向かった。




「かなりお熱いことで」




「なんでここでもその口調なんだ、あれは別にお前が想像しているようなことじゃないからな」




 廃教室に入って開口一番さっきの出来事を茶化してきた。何故か真顔で冬津モードでの口調だったが。




「そうなの? じゃあ何を話してたのかしら?」




「別にお前に話すようなことじゃねえよ」




「酷い! 前に私であんな事やこんな事したのに!」




「語弊がある言い方をするな……」




「なんでよ〜、連れないな〜」




 やっと春津モードになったようだ。




「で、俺を呼び出したから何かあるんだろ。まだ動画の納品は先のはずだと思うが」




「フッフッフッ」




「何がおかしい?」




 秋津さんは何故かドヤ顔で語りだした。




 




「聞いて驚くがいいよ織本くん! なんとこの度、私のボイス収録のアフレコ現場に織本くんを招待することになりました〜」




 拍手〜と言いながら秋津さんが囃し立ててくる。




「それは本当か?」




 俺は自分の声が震えを抑えられ無いでいる。




「流石に無報酬なのは気が引けるからね。これは私からの些細なお礼だよ。でもこの招待特例なんだからね、少しぐらい感謝しても良いんじゃないかな?」




「ありがとう……。本当に嬉しいよ」




「え? 泣くほどの事……? まあ喜んでもらっているようで良かったんだけど」




 俺は嬉しさで前が涙が見えなくなっていた。




「あき君どうしたの? さっきから様子が変だけど。大丈夫?」




「よ……」




「よ?」








「よっしゃああああああー」




 昼時の学校に俺の咆哮が轟いた。




「あき君急に叫んでどうしちゃったの!?」




 秋津さんが心配するのをよそに、俺はさっきの話が本当の事なのか問い詰める。




「その話本当なんだよな!」




「さっきも言ったけど本当だよ……。だから凄い剣幕こっち見ないで……」




 少し落ち着いて今の状況を見ると秋津さんの顔が目の前にあった。例えるなら、さっき美穂が俺にしたような感じになっていた。




「あっすまん。つい嬉しくて」




「それ一応あき君から求めてきた物なんですけど……。まあ運営さんに条件の事を伝えたら、たまたま私のボイス収録が近かったから、今回あき君を収録現場に招待することになったんだけどね」




「そうゆうことだったのか……。いや〜ありがとな。こんな機会人生に一回有るか無いかだから本当に嬉しいよ!」




 俺は今ある嬉しさが秋津さんを襲った。




「そっそれは良かったよ。さっきの奇声には驚いたけど……」




「いや〜、お前は分かってないな〜。これは全オタクが一度は望んだことなんだぞ!? 一度は推しの収録姿やその裏側が気になるもんなんだ。それを今、俺は手に入れた……この気持ちがお前に分かるのか!?」




「うわぁ」




 秋津さんは顔をしかめて、この世の物では無い物を見たような目を向けている。




「おいシンプルに引くな」




「まあ……、喜んでもらえたようで嬉しいよ」




 秋津さんはまださっきのショックが抜けてないようで、どこか投げやりだ。




「それで日時と集合場所の指定は?」




 俺はまだ興奮冷めやらぬ口調で肝心な日時と集合場所を聞いた。




「それは後でDiscordで詳しく連絡するからね? 一旦落ち着こうね」




「分かったよ、楽しみにしてる。それじゃあまた放課後な」




 俺は足取り軽やかに自分の教室に帰ろうとした。




「じゃあね……」








 何故か秋津さんは俺の後ろを見たまま体が固まっていた。




「どうしたんだそんなに固まって……」




 俺は秋津さんの目線を追い後ろを振り返った。




「あっこんにちは先生方……」








 恐らく俺の咆哮で集まった先生方だろう……、にしても体育会系の先生で固めることは無いだろ……。その後秋津に死ぬほど馬鹿にされた……。

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