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お約束は用法用量を守って程々にです。

 ランストーリア王国。


 この国は十五歳になると、それぞれの適性を見極める試験を受けることになります。



 そこで適性を認められ、そして十分な努力と結果を残せば各々やりたいと思うことを職業にすることができる。



 それは貴族も平民も変わらない、というのは正しくはありません。


 やはり貴族というだけで優遇される場面は少なからず存在しています。



 周囲の人曰く、一昔前からそれがすごくマシになったとのことなのですが……




 おっと、話が逸れてしまいましたね。



 この王国の中でも認められた子息子女が集められる学園、それが『ときめき☆フィーリングハート』の舞台となるこの王立学園です。



特異な力である魔力を持った子息子女たちがここで三年間学ぶことになるのです。



魔力は戦力としても、そして学術的にも価値のあるモノだそうですから、この学園を卒業した人間の大半は王国を支える職業に就くことも難しくはないようです。



 しかしそう上手くいかないのが、世の中の常と言いましょうか。



 魔力の素養が顕れる傾向にあるのは、何故か貴族に多かったのです。




 それが貴族の中に選民意識のようなモノを芽生えさせてしまったのでしょう。



 偉ぶる貴族たちは後を絶えず、能力に見合わないハリボテのプライドを振りかざす者たちは多かったのです。



 しかし長い歴史の中で、『とある研究者』の努力によって、魔力というものの根源が解明され、誰にでも顕れるであろう力であると、単なる長所の一つであろうと考えられるようになったのが最近のお話になるのですが……




 まぁこのことについてはまた語ることもあるでしょうから、これくらいにしておきましょうか。




 そして現在、貴族と平民の比率は7割3割と言ったところ。


 表面上は身分差など関係なく、真に実力だけで判断されると言われている中で、この学園は運営されているのだそうです。





 うん、まぁそんなに上手くいくはずはありませんけどね。



 それを示すように、目の前の人垣は大きく二分されています。


 一方は豪華絢爛なドレスや礼服に身を包んだ集団、かたや質素ではありますがしっかりと正装をしている集団。



どちらも同年代の子息子女でしょうが、分たれた集団の中で交流する様子は見て取れません。



どこか彼ら彼女らから感じる雰囲気は重苦しい……こんなことしていて楽しいのでしょうか? ちょっと私には分かりません。




 さて、一体私がいる此処は一体何処なのでしょうか?



 お気づきの方もいらっしゃるでしょう。私今、学園にいるのです。


 ん? なんで犬が学園にいるんだって? まぁそこはあれですよ……私もよく分かっていないのです。




 時間としては月の光が降り注ぐ時間帯。


 私は一匹でお外にいるわけです。ちょうどここからは室内の全容が見てとることができるのですが、先ほどからの重苦しい様相は相変わらず。



 本日は学園の入学式が執り行われたのです。


 先日色々と不安を抱えていた我がご主人様も無事に入学することができました。これには私も一安心だったのですが、まさか入学式のあとに色々と行事があるとは私も考えもしていなかったのです。




 入学式を無事に終え、続きましたる行事は舞踏会。



 舞踏会! 正直、何言っているんですかという気持ちになってしまうのですが、目の前で現実に起こっているので何も言えませんね。


 どうやら学園側も色々と考えた上で、この催しを開いているらしく、意思疎通が図れていないんだなぁと思うわけです。



 考えても見てください。


 身分も違う、考え方も違う人たちをいきなり同じ箱の中に入れて、仲良くしてくださいねなんて……簡単に出来ることではないですよ。




 彼ら彼女らに同情しつつ、私は一匹舞踏室の外のバルコニーで寝そべりながら眺めているわけです。



 教師の皆さん、早く生徒の皆さんを解放してあげてくださいよと、心の中で悪態をついていると、舞踏室の光と私の間を、大きな影が割り込んできます。



「思ったよりも、凄かったよぉ」



 声の主は私の頭を撫でながらそう一言。


 余程疲れてしまったのでしょうか、撫でる手つきが今日は雑に感じられるのです。



「それにしたって入学式の後に舞踏会だなんて……」



 心中お察ししますよ。結構なハードスケジュールだった上に、この雰囲気の舞踏会ですからね。



 声にはやはりハリがなく、浮かべた表情も笑顔にはなっていましたが、引き攣っているのがよく分かりました。




「もうしんどかったよぉ。あんまり舞踏会とかも好きじゃないからなぁ……正直、こう言うのも豪華すぎて好きじゃないんだよね」



 くるりと身を翻しながら私に見せつけるように身に纏ったドレスを見せつけてきます。


 色は好みなんだけどと呟くのですが、確かに裾や胸元はけばけばしいほどに装飾が施されていて、彼女の好みには遠いようです。



常々『もっと質素で良いのです! お祝い事もこんなに派手にしないでください』と皆さんによく言っているくらいですからね。



 本当に貴族らしくない! いやそれを言ってしまうと貴族の方々に悪いのですけどね! 単純に相変わらず貴族の生活に慣れていないってだけなんだなぁと、この表情を見ていると思うわけです。



 彼女に気取られないように吐き出したため息。


 それが白い跡を残しながら、宙を舞っていきます。




 あぁ、本当に……早くお部屋に戻って暖かくして寝たいですよ。

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