第12話 帰り道は早い
――翌朝。
「ご主人様! 起きて下さい! 朝です!」
「むわっ!」
しまった!
寝ていた!
昨日は三時ごろ高級宿屋にチェックインした。
風呂に入ってベッドでサラを待っていると……。
そのまま寝てしまった……。
クッ!
四十歳独身貴族、一生の不覚!
十八歳処女の性奴隷との初夜だったのに!
家からこの街へ歩いた疲れが出たのか?
おのれえ!
この堕落した肉体がうらめしい!
「ご主人様。朝ごはんですよ!」
いかん、いかん。
気を取り直して、しっかり朝食を食べないと。
今日は一日魔の森の中を歩いて家に帰るのだ。
サラが朝食の載ったワゴンから、テーブルに料理をのせる。
スープ、ステーキ、パン、サラダ。
朝からステーキは重いが、しっかり食べないと。
今夜こそリベンジ・ザ・ナイト!
サラと合体するのだ!
サラは俺に少し慣れたのか、素直に食事を一緒に食べてくれた。
チェックアウトして、冒険者ギルドへ向かう。
時間は朝の六時。
冒険者ギルドは大混雑をしている。
「サラ! はぐれないように手をつないで!」
「はい! ご主人様!」
と、どさくさ紛れに手をつなぐ。
四十歳独身貴族は、状況判断に秀でているのだ。
ああ、サラの手が柔らかい。
昨日の受付のお姉さんは……いた!
「おはようございます!」
「ミネヤマ様。おはようございます! 手配した護衛は四人組の冒険者パーティー『鋼の魂』です。荷物持ちに見習いを一人付けています。料金は、3万ゴルドです」
余程忙しいのかお姉さんは早口でまくし立てた。
料金3万ゴルドを支払う。
お姉さんは大声で護衛の『鋼の魂』を呼ぶ。
昨日の態度と違って、魚河岸のお兄ちゃんみたいだ。
「鋼の魂はここへ集合! バーバー! ミネヤマ様が来たよ! バーバー! 早く!」
人ごみを掻き分けて長身の獣人が現れた。
デカイな。2メートルは、ありそうだ。
耳が横にデカく、鼻も長い。
象獣人……?
あれ?
前に会ったかな?
「ああ、どうも『鋼の魂』リーダーでDランク冒険者のバーバーです」
「ミネヤマです。家まで護衛をお願いします。それからサラです。バーバーさん、一度会いましたよね?」
「はい。ミネヤマ様の家で水を分けて貰いました」
ああ、やっぱり。
夜中に水を分けてくれって尋ねて来た人だ。
俺の家までのルートがわかっているなら頼もしい。
「じゃあ、行きましょうか」
バーバーさんのパーティー『鋼の魂』は、獣人四人だ。
象、虎、牛、カバ獣人で、四人とも体がデカい。
重量級パーティーだな。
ハルバード、長剣、大金槌、こん棒を装備している。
荷物持ちは小柄な猫耳の少年だ。
金貨や着替えの詰まった俺のリュックを軽々と担ぐ。
獣人と人間じゃ基礎体力が違うな。
隊列は一列で、俺とサラが隊列中央を歩く。
歩幅が大きいせいか、移動速度が行きよりも速い。
バーバーさんたちの戦闘は大雑把だ。
先頭を歩くバーバーさんが、『いたぞー』とのんびりした声で魔物のホーンラビット発見を伝える。
パーティーメンバーが、のんびりと『おー』『もー』『んがー』と返事をする。
ホーンラビットに近いメンバーが、手にした得物でホーンラビットをブッ叩いておしまい。
荷物持ちのネコミミ少年がホーンラビットを回収する。
こんな調子だから、魔物と遭遇しても隊列は止まらない。
歩くのも早えーよ!
こうして何も問題なく午後一時に家に到着した。
朝六時に冒険者ギルドを出発したので、七時間で到着だ。
行きよりも三時間早い。
「ミネヤマ様、仕事完了のサインをお願いします」
バーバーさんが大きな手で差し出して来た書類にサインを入れて終了。
帰りは非常に順調だった。
「これがご主人様のお家ですか……。不思議なお家ですね」
サラが俺の家を不思議そうに見ている。
四角いワンルームマンションサイズで、レンガ造りの外壁。
ドアが一つ付いているだけ。
「今日からここは君の家でもある。俺たちの家だよ。さあ、入って」
サラが嬉しそうな顔をしてついて来た。
ドアを開け玄関でスニーカーを脱ぐ。
「ここで靴を脱いで。俺の国では、部屋の中で靴は履かない」
「……」
サラは革製のブーツを脱ぎながら、不思議そうに俺の部屋を見回している。
「ここが風呂、ここがトイレ、これは洗濯機と言って洗濯をしてくれる……、ま、魔道具だ!」
うん、もう面倒だから電化製品は魔道具って事で押し切ろう。
俺の部屋はちょい広めのワンルームで風呂トイレ別。
玄関を入ると廊下で右側に風呂、トイレがあって、向かい側にキッチン、洗濯機置き場がある。
廊下の先のドアを開けると、八畳の部屋。
ベッドとローテーブルに家具が少々。
四十歳独身貴族は、シンプルライフなのだ。
「えーと、他にも魔道具があるのだけれど、詳しい説明は追々ね。そこに座って」
ポカンと部屋の中を見回すサラをローテーブルの所に座らせる。
何より昼飯だ。
朝の六時から歩き詰めで腹がペコペコだ。
後で日本へ買い物に行くので、宅配ピザをとって、ついでにドアを日本側から開けて貰おう。
「トランプ・ピザでーす!」
「ご苦労様! 両手がふさがっているからドアを開けて!」
「はーい! 失礼しまーす!」
ピザ屋といつものやり取りで、日本側からドアを開けて貰う。
しょっちゅうピザを頼んでいるので、配達のお兄さんたちの顔を覚えてしまった。
今日の配達は良く来る大学生っぽいお兄さんだ。
「あれ? 彼女さんですか?」
「えっ?」
配達のお兄さんが、部屋の奥の方を見ている。
振り向くとサラが、こちらをのぞいていた。
「えっと! そ、そう! 彼女だよ!」
まさか奴隷とは言えません。
それも性奴隷とは。
「そうっすか。ありがとうございました!」
配達のお兄さんは、余計な事は言わずにちょっとだけ笑って帰って行った。
サラはあげないぞ。
俺のだからな!
ドアにボールペンを挟んで少し開けたままにして、部屋に戻る。
するとサラが不思議そうな顔で質問して来た。
「あの……ご主人様……今、何を話していたのですか?」
「えっ?」
「ご主人様の話しはわかりましたが、あの帽子をかぶった人が何を言っているのか、わかりませんでした」
「えっ!? そうなの!?」
どういう事だ?
俺の話している言葉はわかるけれど、ピザ屋のお兄さんの言葉はわからない?
その違いはなんだろうか?
「まあ、とにかく食べよう。ホラ! これがピザと言う食べ物だよ!」
「美味しそうな匂いがします!」
ピザ、ポテナゲ、コーラ、今日はデザートにアイスクリームも付けた。
食べ始めるとサラはピザに夢中になった。
「これ美味しいです! チーズとお肉と野菜と……この味はなんでしょう?」
「トマトだね。俺の国では良く食べるよ」
「このポテトと言うのも美味しいです! これは野菜?」
「それは油で揚げたイモだよ」
「おイモですか! こんなに美味しくなるのですね! 油で揚げるなんて聞いた事がないです!」
「アイスクリームも美味しいよ」
「冷たい! あまーい! こんなに美味しい物、生まれて初めて食べました!」
サラのいる世界の料理は、煮るか焼くかだからな。
味付けも塩コショウだけで、調味料のバリエーションもあまり無いみたいだ。
肉や野菜、素材自体は美味しいけれど、そのうち飽きが来そうだ。
あっという間にピザは無くなった。
俺も歩き詰めで腹が減っていたから、ガツガツ食べた。
ふっ……四十歳独身貴族でも、食べる時は食べるのだよ。
さて……。
「じゃあ、一緒にお風呂に入ろう」
「!」
「ずっと歩いて汗だくだからな」
「……はい」
サラが顔を赤らめモジモジとしている。
フフッ……奴隷は主人の所有物。
ならば奴隷の体も主人の所有物だ。
じっくりと見せてもらおう。
性奴隷の体とやらを。
読んでいただいて、ありがとうございます。
まだまだ、続きます。
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