ドクター、国境の街に向かう 2。
ドクターは、村長にまずは捕まえた娘の診察を、させて欲しい事を伝えた。ドクターの見立てが正しければ特効薬があるからだ。
そしてこの原因は村の何処かに有る木が腐って胞子が出ているのが原因だと思われます。と村長に伝えた。
それを聞いた村長は驚いていたが、木が腐ると言うキーワードに何か心当たりが有るみたいで、直ぐに木の調査に人を向かわせていた。
程なくして、娘が捕まえられて来た。娘は、興奮気味で暴れていたが、病気の為、暴れる力は弱々しかった。
ドクターは、村長の許可を得て娘の診察に乗り出したが、暴れてなかなか診察が出来なかった。
「やめてーー 私は大丈夫です! 病気では有りません! 離してーー」
ドクターは、余りにも暴れるので仕方なく鎮痛剤をすかさず娘に注射した。注射された娘は直ぐに落ち着き眠りに着いた。
少し手荒なマネをしたが、娘が落ち着き診察出来る様になったので、ドクターは診察を開始した。
この病気の診察は簡単だった。聴診器で心拍数と脈拍を、見るだけだった。流石に暴れている状態では、正常な心拍数と脈拍は測れないので、鎮痛剤を打つ事にしたのだった。
ドクターは、聴診器を胸と手首に当て心拍数と脈拍を測るとやはりドクターの思っていた病気と、同じ症状が出ていた。心拍数と脈拍が異常に速いのだ!
まず、この病気の特徴として、心拍数と脈拍が異常に速いのが挙げられている。
なぜ、心拍数と脈拍が速いのがダメだというと、人間には、一生に打てる心拍数と脈拍が決まっており、その数を越えると死んでしまうのだ。
この病気の病名は前の世界では、
『二十歳女性心拍数脈拍異常病』とそのままの名前に名付けられており、また一部の地域でしか発症しなかった為、ドクターの所に相談に来るまでは、一般にその病気は知られていなかった。
この世界の村と同様に娘を二十歳になる前に外に出していたからだ。
その病気が、ドクターの知る事となり瞬く間に根治されたのだった。
ドクターは、他の病気も無いかと原因を少し探ったが無かったので、そのままドクターが開発した特効薬を注射した。
「これで良し! 後は鎮痛剤の効き目が無くなれば目を覚ますと思います」
村長は、余りの事に言葉が出なかった。ましてや病気が治るなんて思ってもいなかったが、ドクターの自信満々な口振りや雰囲気で直ぐに信じる事にした。
また、村長は木の事も気になっていた。ドクターが言う様に村の木が枯れた時期と病気が発症した時期が同じぐらいだと記憶していたからだ。
村長が、十年程前の事なのに直ぐに思い出せたのは、自分の娘がこの病気で亡くなっていたからだ。
どうやら木の調査に行っていた者が帰って来た様だ。
「村長! やっぱり村長の言っていた場所の木だけが枯れていました! また、十年前に枯れた木がまだ、残っている事に驚きでした」
「そうか、ありがとう」
村長は、ドクターに枯れた木の事を話してみた。
「ドクター様。確かにドクター様が言っておられた枯れた腐っている木がこの村の近くに有ります。それが原因なのですか?」
ドクターは、答えた。
「村長。やっぱり腐った木が有りましたか! その木は病気なんです。その木を治さないとこの病気は根治出来ません。幸い私、ドクターがいますので木も治すとしましょう! さぁ木の場所を案内して下さい」
ドクターは、上機嫌で言って、木の治療に向かったのだった。
 




