ドクター怒る。
翌朝、朝食を食べていると、ライトが暗い顔しながらこちらに来た。
「じょちょ〜 申し訳ございません」
まさか! 私の血液検査結果が悪かったのか!
「魔石の分析が、まだ終わりません」
「なんだ。ライトビックリさせるなよ。魔石に着いては専門外だからしょうがない、ゆっくり分析してくれたら良い、それと私の血液検査の結果は、どうだった?」
「ドクター所長。それについては、先にアン様に報告しないと、怒られますのですいません」
ライトの嫁も、看護師だしな、アンには絶対服従なんだな。
「わかった。アンから聞くとしようか」
「ドクター所長〜 ご配慮ありがとうございます〜 では、研究に戻ります〜」
流石のライトも専門外は厳しいか。アンに血液検査の結果でも聞くかな。
ドクターは、ハンターギルドの分院に行く為の身支度を終わらせ部屋を出た。
んっ? ここでいつもなら、アンが直ぐに来て分院に向かう筈なんだが、なんかあったか? えーっと、アンの部屋はどこだっけな?
ドクターは、アンの部屋に向かった。いつもならドクターが部屋を出る時間には、準備を済ませたアンがいるからなんか違和感を覚えた。
アンの部屋の前に着き、扉を開けた。ドクターは、全ての扉を開けられる権限を持っていた。
「アン? どうした? 何かあったか?」
ドクターが、部屋に入るとアンは身体を起した。
「ドクター所長。すいませんどうやら風邪です」
「そうか、そうか。アンも風邪を引くんだな。少し診察するから、見せてみろ」
「いえいえ、ドクター所長に診察してもらう程の事では無いですよ」
「何言ってんだ、アン。俺は、世界一の医者だぞ、ましてやアンが病気の時は、私が診察しなくて誰がするんだ?」
ドクターは、少し強引に診察を始めた。そして、診察をして直ぐに違和感を感じた。
「アン。どうしてこんな事になったんだ」
「所長は、触っただけでわかるんですね。さすが世界一の医者ですね」
「私の話を聞け! どうしてこんな事になったんだ」
「私も最近気付いたのです。前の世界で若かった頃に、人間ドックで見つかった病気を、ドクター所長に治療してもらった事があったと思うのですが、覚えてますか?」
「あぁ〜 覚えてるよ。血液逆流症だろ? あれは、完璧に治したぞ」
「はい。あの時は完全に治りましたが、私は女神様に身体を若返りさせて頂いたのです」
ここで、ドクターは気付いた。アンの若返りした年齢と病気をした年齢が一緒だったのだ。
「私も、病気の事はこの世界に、来てすっかり忘れていました。自覚症状が出たのは今日の朝でした」
「アン。直ぐに治療にかかる。病院棟に行こう」
「ドクター所長。もうわかっているでしょうに、この病気は自覚症状が出ては、もう遅いと」
ドクターは、唇を噛んだ。確かにこの病気は、自覚症状が無い時は、ただの血液逆流症だが自覚症状が出た時には、超血液逆流症に進化する病気で、発症してから死亡する迄、半日ぐらいしか無かった。
そもそも自覚症状も小さく、気付いた時には遅い病気だった。
アンが寝込んでると言う事は、もう死期が近いと言う事だった。
ドクターは、病気の怖さを改めて知った。ドクターはこれから怒涛の半日を過ごす事になるのだった。




