ドクター村に向かう。
「無事に手術は終わりました! こっから後処置をしますので、もう少しそのままでいて下さいね」
ドクターは、女性の足にギブスを施し車椅子を用意し、また今後一人で歩ける様に松葉杖も準備した。次に、痛み止めの薬等の処方を行い、丁寧に薬の飲み方や薬の効果の説明を行った。
女性の治療と、処方は一通り終わったが、今後の治療でギブスを取り外したり、歩行のリハビリ訓練等しなければならない。
また何度かは診察しなければならず、ドクターは女性にその事も説明した。
ドクターの、説明が終える頃に女性が口を開いた。
「助けて頂きありがとうございます。私の名前は、ケラーと申します」
ドクターも、まだ自分の名前を伝えていない事に
気付きケラーに、自分の名前を名乗った。
「どういたしまして! 申し遅れましたが、私はドクターと言います」
名前も知らない状態で、手術させてくれたのかと思ったが、そこは医者を極めた私の対処が、良かったのだと少し天狗になってみた。
ケラーは、村に帰ると言う事で、一緒に村まで行く事にした。
「村の方向はどちらですか? 手術後で、車椅子を一人で動かすのは大変ですし、私も元々、村に向かう予定でしたので車椅子を私が押して行きましょう」
ケラーは、薬の説明や今後の治療方針等の、説明をドクターに受けている内に 『この子』 の事をすっかり信用していた。
まだまだ不思議な事だらけで、色々と聞きたい事が、沢山あったが、村に行く道中でも聞けると考えた。
ケラーは、答え行先を指差した。
「ありがとうございます。村はあちらの方向です! 三十分もあれば着くと思います」
「分かりました! では村に行きましょう!」
ドクターは、女性の指す方向に車椅子を押した。
村に帰る道中。ケラーが話しかけて来た。
「ドクター様。宜しいですか?」
「何ですか?」
「先ほどの 『しゅじゅっ』 というのは、魔法ですか? 薬でも無いように思えましたが?」
「はっはっは〜 魔法でも無く薬でも無いのですが、強いて言うなら、魔法と薬の中間でしょうかね 」
ドクターは、良く分からない事を言ってみた。
ケラーも、ますます分からなくなって行き、詳しく聞くのを諦めた様だった。
「助けて頂いて申し訳無いのですが、ポーションの様な薬だとしたら、お金の方はいか程になりますか? ポーション並みの金額は厳しく直ぐには、お支払いすることが出来ないです」
「お金は心配しないで下さい。その代わりと言えば何なんですが、こちらの世界の事を色々と教えて頂けませんか? この世界に来てまだ日が浅いので」
ケラーは、この世界の事? っと思いながらも、違う国の人なんだなぁと思い返事した。
「そんな事で良いのですか! それだけでは、申し訳無いので、家でご飯でも食べて行って下さい! 家族も歓迎してくれると思います」
ドクターは少し遠慮したが、この世界の事も教えて貰えるし、ご飯までご馳走に慣れると言うのだから、お言葉に甘える事にした。
村の門付近に着くと、村の門番が駆け寄ってきた。
「どうしたんだケラー、なんか白い物を巻いているが怪我でもしたのか? そしてなんだその乗り物は?
後ろにいる少年は誰だ?」
少年? 俺が? ドクターは、女神様が言った身体を若くさせてくれた事をすっかり忘れていた。
門番に言われやっと気付き、医療バックにある鏡を取り出し確認して見た。
その顔は医術を、極めた十五歳の時の顔だった。
ドクターは、この顔だと警戒心もくそも無いなと思い少しニャけた。
ケラーは門番に、説明した。
「足を怪我した時にこの方に助けて頂いたの。この白いのはギブスと言うもので、この乗り物は車椅子と言う物見たい」
門番は不思議そうな顔をして言った。
「ま、まぁ、危ない所を助けて頂いた見たいで、ありがとうございます。この村に入るにはハンターカードと言う身分証が必要ですがお持ちですか?」
ドクターは、とっさに自分が身につけていた、氏名や所属等が乗っているIDを見せた。
「こんな物しか無いですが? 身分証になりますか?」
門番はハンターカード以外に、身分証が無いと思ったがとりあえず確認して見た。
身分証にはこんな事が書いていた。
『ドクター病院 所長
名前 ドクター 』
とても簡素な書き方だ。
「何の肩書きかは分からないが、一応写真と名前が書いてあるな。けど本来なら、ハンターカード以外に入門は認めていないのだ。けどケラーを助けて頂いたお礼だ! 特別に許可する! だが直ぐにハンターギルドに行き登録し直してもらえ! 良いな?」
「はい!」
ドクターは十五歳の子供の様に元気よく返事し、ケラー宅に向かった。
どうやらこのケラーという女性の家は、この世界の
医者だった。
だがこの世界の医者は、前の世界で言う内科医や外科医等と違い漢方薬等、庶民にも行き渡り易い物を、処方する程度の物だった。
痛くて気絶しそうな怪我だったのに、余り痛みを感じ無く違和感を覚えたのは、怪我した時に鎮痛効果の有る、漢方薬を飲んでいたからだと判明した。
ケラー家に着くと、ケラーの足の怪我について聞かれ説明した。不思議そうな顔をしていたが、何とか納得してくれた見たいだ。
そこからは、こっちはまだ、15歳の少年だと思われているので、家の事や両親はどうしているんだ? とか色々と聞かれたがなんとかはぐらかした。
そんな事が有りながらも、ケラ一家の皆さんに歓迎されご飯をご馳走になった。
この世界の初めての食事に味は合うのかとか、水でお腹を壊すかも知れ無いな等、思っていたが不思議と味はとても美味しく、水等でお腹を壊す事も無かった。
ご飯を食べ終わると、もう時間も遅いからと一晩泊まらせて頂くことになった。
まだ、何か聞かれるとはぐらかすのに、ボロが出そうなので、直ぐに客室に向かった。
客室に着き、ドクターはベットに寝転びながら言った。
「よし! 明日はハンターギルドに行き身分証でも作るか!」
ドクターは、そのまま眠りについた。
これから長く続く、この世界の1日目をやっと終えたのだった。
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