プロローグ
二千X年
私の名前は『ドクター』そしてこの世界では世界一の医者と呼ばれている。
幼少期から天才と呼ばれた私はあらゆる医術を極め十五歳の時に世界一の医者と呼ばれる様になり、二十五歳の時に幼少から貯めたお金を使い自分の病院を建設した。
そこから、十五年間病院には患者が後をたたなかった。
その間に、病院は世界一の設備になり新たに研究所を建て新しい病気にも対応し治せない病気は無かった。
だが問題点もあった。それは、私に次ぐ人材が全く育っていなかったのである。
そこで私は後輩達に世界一の設備を誇る病院を譲り人材育成をする為また一から小規模な病院を建設した。
そこから、五年間ほど人材育成に励み医者と看護師研究者含め百人程の精鋭部隊となり、忙しい日々を過ごしていた。
二千X年
医学会にある革命が起こった!
それは、異世界でよく見るポーションという飲み物が開発されたのだった!
このポーションは、飲むだけでどんな病気も治した。切りキズや風邪などは勿論のことでガンや心臓病未知の細菌にも対応しており、このポーションを飲むだけで、どんな病気も治った。
また、量産化も直ぐに進みあっというまに安価なポーションが、庶民にも手に入る様になり医者という職業はこの世界から無くなった。
皮肉にもこのポーションを開発したのは、一番始めに私が建てた病院だった。
私の医術に歯が立たず悔しい思いをしていた医者や研究者が薬を開発する施設を建て人材や費用の投資をし医者や研究者、薬の開発者と三位一体になりたった三年程でポーションを作ったのだった。
私は、病気で苦しむ人が居なくなる事を純粋に喜び医者として生きてきた人生に幕を閉じた。
そして、幼少期から医療一筋でやって来たドクターは、医者としていられない自分に絶望し自分の人生にも幕を閉じたのだった。
「おはようございます 。ドクター様」
呼び掛けで目を覚ましたドクターはこの状況を理解出来ずにいた。そしてドクターに声を掛けたのは肩まで掛かる程の長さの金色の髪をした美しく何処か貴賓漂わせる女性だった。そう女神の様だった。
んっここは? 女神? 私は死んだ筈では?
「ここは異世界の国サンドラです」
そんな国聞いたことがないぞ⁉︎ 異世界⁉︎
まさか昔に流行ったライトノベルの世界の事か?
「あなたは、この世界を救う為に転生されました」
えっ? やっぱりそうなの?
けど、ただの医者の私に世界を救うのは厳しいし取り敢えず詳しく話を聞いてみる事にしよう。
「女神様。(どう見ても女神だよな⁉︎女神で合ってるよね⁉︎)この国を救うって私に言いましたが私には医術しか持っていないです。ましてや戦う力なんて皆無です。歳も歳ですし、まさか女神様から特別な力を頂いてこの世界の勇者になり魔王と戦うのですか?」
クスッと少し笑った様にドクターからは見えたが直ぐに真面目な顔に戻した女神はドクターに返答した。
「いいえ。私から特別な力は授けません。授けるのは、身体を若くするぐらいですかね。貴方が勇者になり魔王を倒すなど願っても居ないですよ」
「では、医術しか持たない私になにを期待されているのですか?」
「その医術が必要なのです」
「医術? 私の感覚では、異世界はポーションや回復魔法がありどんな病気もそれで治してしまうのですがこの世界には無いのですか?」
「ポーションや回復魔法はこの世界にもありますよ」
「では医者の私なんて、全く役に立たないのでは無いですか? 死ぬ前の世界もそうなりましたが」
「それでは、ズバリ言いましょう! こっちの世界のポーションや回復魔法はそちらの世界で言う内蔵疾患には効果が無いのです!」
「そうなんですか!」
ドクターは、生きがいとしていた医者の仕事が無くなり絶望してこの世を去った。
それが、転生する世界では医者がまだ必要とされている事にとても高揚感が出てきたが一つ心配事があった。
「あの〜 女神様一つ願いがあるのですが?」
「なんでしょう?」
「さすがの私でも医療器具が無ければガンなどの内臓疾患は治せません。そこで転生する際には私が築いた病院ごと転生させて頂けませんでしょうか? それが出来るのであればどんな病気でも治して見せます!」
「う〜ん」
少し女神は迷っていたがドクターの童心に帰った様なつぶらな瞳をうるうるさせている表情を見て愛おしく想い決めた。
「いいでしょう! それでは転生先に病院ごと転生致します」
「ありがとうございます!」
「それでは、転生致します! 転生先での医療を期待しております」
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