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ハウンド活動記録  作者: 鳩鳥純
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3章 ②

 しばらくすると、扉がノックされる音がして琴絵が入ってきた。

 その後ろには金髪の男がいる。ひょろりとして色々と軽そうな見た目をしている彼は伊藤修司。空奏たちと同じくハウンドのメンバーである。


「修司さん。そっち終わったんですか?」

「よお、空奏。時間くっちまったが、何とかな」

「修司さんたちが担当してたのも友魂同盟が犯人だったんだって」

「そそ。んでモカちゃんと二人で支部に戻って来たらこっちも友魂同盟の件で当たってるって聞くじゃん? 真白ちゃんから二人と一緒にやるようにってさ」


 休憩ぐらいさせてくれよ、と嘆く。修司と同じ件に当たっていた柊モカという少女は後から合流するとのことだ。肩をすくめる修司を見て、空奏の頭にある疑念が浮かぶ。


「そうですか、友魂同盟の……。そいつらって捕まえたんですか?」

「そりゃあ捕まえて引き渡し済みだが」

「抵抗は? 相手はどのぐらい抵抗しました?」

「異能使ってきたから軽く交戦したぐらいだな。無理だと思ったのか、すぐに投降してきた」

「現場は?」

「車で三十分ぐらいの辺り。おかげで見つけるのに時間がかかって……。お前、何を考えている?」

「ルウに言われたんです。彩那ちゃんの覚醒が近い。だからこその昨日と今日の友魂同盟の行動だろうって。それだけじゃなく修司さんのところも友魂同盟の犯行。……もしかしたら、他のところも友魂同盟が動いているのかもしれない」


 今朝、空奏が支部に着いた時には真白以外に誰もいなかった。そして彩那が病院から逃げたことで、ちょうど来た琴絵と追うことになった。一刻も早く彩那を確保する必要のあった友魂同盟はここ数日で強硬手段に出た。自分たち以外にいなかったのは友魂同盟に誘い出されていたから。

 どうしても違和感が残る。昨日のゴリラとトカゲ男、今日の三人組。どちらも簡単に自分たちに止められている。覚醒させるための刺激を与えるという意味では成功しているのかもしれない。しかし彩那がハウンドの保護下に入るということは、これ以上手出しはできないはずだ。


「そういえば琴絵、友魂同盟の記録見て来てくれたんだろ。どうだった?」

「空奏くんの言った通り、友魂同盟についてこの近辺での活動はあんまり記録が無かったよ。東北支部として記録は結構あったから、元々は別の地域で活動してたんだね。それで、イクシスとアニマの優位性を主張してよく補導されてるみたい。異能を使って揉め事起こして怪我人が出たり、殺人に至ったケースも結構あったかな。集会とかの度に『魂を解放しろ』って残してるから、こっちが目立ってるかも」

「なんだ? それがどうしたんだ?」


 琴絵の報告を聞いて納得する空奏に対し、修司が困惑した表情を浮かべる。


「修司さんは犯人が友魂同盟ってわかった時、どう思いました?」

「どう思ったって。……そんな集団いたな、って」

「俺と琴絵もそうです。その程度の認識しかなかった。彩那ちゃんのいる施設は支部からそう遠くない。そんな近くでは俺たちの活動圏内に入るようなことをほぼしてこなかった連中が、支部のハウンド全員を引っ張り出すような大規模な行動を取った。もちろんこれはただの推測。他の皆が対応している件が友魂同盟の仕業と判明したわけじゃないから。でも、偶然じゃないとは思う」


 平坦な声で語る空奏を修司はまじまじと見ている。

 琴絵が不審に思って見ていると、空奏も気づいたようで修司を見上げる。


「何ですか」

「いや、随分と焦ってるみたいだなと思ってな」


 胸中を言い当てられ、空奏は思わず固まる。

 その様子を見て修司は笑った。嘲笑うような笑いではない、爽やかな笑い方だった。

 今度は空奏がまじまじと見やる。いったい何がおかしいというのか。


「お前、三年前と重ねてるな?」

「っ!?」

「ああいや、それが悪いと言ってるわけじゃない。……まだ、お前の胸にあの子が生きてるんだと思ってな。俺はそれでもいいと思うんだ」


 顔を背けた空奏を見て琴絵が目を伏せる。

 重くなった空気に修司は一つ溜め息をついた後、真面目な表情で続けた。


「空奏の考えは早計と言える。が、友魂同盟の連中が何か企んでいて、ついに今日動き出したという見方でこちらも行動していいだろう。一度この病院にいたことは割れている。病院の警備も信頼はしているが、それよりは支部で保護してしまった方が良い。いくら命知らずでも真白ちゃんのいるところに乗り込んでくるほど馬鹿じゃないだろ。ということでどうですかね、浅木さん」

「はい。他で対処している件にも友魂同盟の人間が確認されています。科戸くんの考えが合っていると思っていいでしょう。ハウンドの詰所を使います。そのままお連れください」


 突然聞こえた浅木の声に琴絵がギョッとする。修司が着いた時点から聞いていたのだろう。改めて報告する必要性が無くて何よりだが、通信を入れていることを一言断っておいても良いのではないだろうか。

 琴絵のそんな視線を感じ取ったのか、修司がへらへらと笑う。

 空奏は先ほど連絡をしているためか、さほど驚いていない。視線を逸らして素知らぬふりをしているということは、同罪の自覚はあるようだ。

 基本的にノリでこなしてしまう修司は時折何を考えているのかわからない時がある。適当な物言いをしていると思ったら急に真面目になり、真面目にやっていると思ったらふらりといなくなったり。それでもどこか憎めない人なのだが、ただ驚かせるのが趣味なのではないかと疑いたくなる時もある不思議な人物だった。


「さて、行こうかね」

「伊藤さん」

「浅木さん? もしかして待った方が良いですか?」

「いえ、そうではありません。病院の前で立ち塞ぐようにして車が数台集まっています。報告では武装もしっかりしたもののようで、戦闘は避けられないかと」

「……あー」

「こちらから動かせる戦人員がいないので、そちらで……」


 申し訳なさそうに浅木が言う。

 修司が顎に手を当てて何か考える素振りをした後、空奏を振り返って言った。


「早計とか言って悪かったな」

「いえ。病院まで押しかけるとは思わなかったですね」

「元々討滅許可は下りてる。警備が交戦に入る前に俺らが行ったほうがいいだろ。琴絵ちゃんは彩那ちゃんを頼むわ。空奏、病院に流れ弾当たらないようにとっととやるぞ。ルウとバルドも行けるんだろ?」

『もちろんだ』


 笑いながらテキパキと指示を出す修司が声をかけると、二体の声が重なる。

 空奏は気合を入れ直すように腰に下げた愛刀の感触を確かめた。

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