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令嬢達はメイドに扮したり騎士に扮したりはたまた文官に扮したりとあの手この手を使い、窓から入ってくる者や仕舞いには天井裏からもやって来たらしい。


なかなかアクロバティックである。


「殿下がお渡りをすれば多分それも落ち着くんだろうって父ちゃんが言ってたけど、なんかお渡りってやつをされた令嬢は離宮から出られなくなるらしいぞ。」


「へえ、軽くホラーですね。

そもそもお渡りってなんなんですか?」


「なんか夜部屋で色々やるんだって父ちゃんが言ってた。

でも離宮も荒んでるし落ち着くんならお渡りってやつを公爵家2家にしとけば良いんじゃないか?って殿下に言ったら殴られたけど。」


「複雑な事情でもあるんでしょうね?」



「そうみたいだな。

お渡りが行われない今は殿下との茶会の回数で優劣が決まってるらしいぞ。

んでお渡りってやつをされれば一気に形勢逆転だから令嬢達も必死らしい。」


よく分からんが色々あるようだ。


文字通り箱入り娘のキャロルと天然馬鹿のレオンにはさっぱり分からない話だったが。


「じゃあアグネス嬢がお渡りってやつをされれば私の陣営が有利になるって事なんですかね?」


「アグネス嬢の派閥に入るならそうなるんじゃね?」


「何かいい案ないですかねー。」


キャロルは割りと勝負事が好きな質である。


派閥争いは初めてだが入るからには負けたくない。


「あっキャロルから殿下に頼めば良いんじゃないか?」


「嫌ですよ。

レオン殴られたんですよね?

私だって殴られる趣味はありませんよ。」


「あの魔王モード怖いもんなー。」


「そうですよ。

私はもう二度とごめんです。」


あの首の噛み跡は大分薄くはなったがまだ残っている。


どれだけの力で噛まれたのか。


思い出しても鳥肌が立つ。


「でも派閥に入ってその後何したらいいんですかね?

私派閥争いの戦い方を知らないんですが。」


「あーなんかよく食事に虫だー毒だー、部屋の扉に死骸だー、悪口言い合って掴み合いだーって報告受けるから多分それをするんじゃね?」


少年のイタズラを酷くしただけである。

稚拙極まりない。


「戦い方が地味ですね…。

派手にやる方が私好みなんですが。」


「派手なやり方って?」


「要は大将の首取れば勝ちなんですよね?

なら毒なんて使わずにサクッと一思いに。」


「いやそれじゃあ殺人になっちゃうからな。」


「あーなるほど。

バレちゃダメなんですもんね。」

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