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「御機嫌ようキャロル様。

今夜はローブなんですのね。」


「今日は魔術師会からの出席ですので。

アグネス様も赤いドレスがよくお似合いです。」


「本当?

懇意にしているデザイナーの新作なんですのよ。

きっと喜びますわ。」


ファッションセンス0のキャロルに褒められてデザイナーが喜ぶのかは非常に疑わしいが黙っておこう。


ぶっちゃけキャロルにオシャレのイロハなど分からないのだ。


フワリー嬢は今ルシウスと踊っている最中である。


アグネス嬢は扇子で口元を隠しながら目線を動かした。


「…ご覧なさいませ。

ジゼル嬢とアンジェリカ嬢がハリー第二王子様の側近と踊っていらっしゃいますわ。」


「あっ本当ですね。」


「ハリー第二王子様が優勢になったと判断した途端掌返しとは…呆れて物も言えませんわ。」


キャロルも2人の方に視線をやる。


あの2人がレオンに辞退も考えたいと言った2人なのだろうか。


「…まあ情勢を見極めて早めに動くのも大事かとは思いますがね。」


「あら、キャロル様もあちらに行くご予定ですの?」


アグネス嬢の胡乱気な視線にキャロルは首を横に振る。


「…いえ。

今日初めてハリー第二王子様を拝見致しましたがあの方に王は無理でしょうね。」


「…まあ。

どうしてそう思われましたの?」


キャロルは視線を動かしハリー第二王子に目を向ける。


ルシウスは母親似なのかハリー第二王子と似ているという印象はなかった。


栗色の柔らかそうなくせっ毛の気の強そうな釣り気味の目の少年。


ルシウスが天使と例えられるならばハリー第二王子は小悪魔に例えられるであろう。


「…ハリー第二王子様は明らかに殿下を妬み、羨み、その卑屈な感情が顔に出ていました。

あれは王に向かないかと。」


「…大きい声では言えませんけど、同意致しますわ。」


アグネス嬢も声を潜めて頷く。


ルシウスにはある絶対的な自信というか自尊心の様な物をハリー第二王子からは感じられないのだ。


絶対的な王という立場は彼には務まらないんじゃないかと思ってしまう。


まあまだ11歳らしいしこれから身に付けていくのかもしれないけれど。


あんな何でも出来てしまう魔王みたいな兄がいたら卑屈になるのも無理もない。


「キャロル様は聖女様と親交がございますのよね?

御挨拶には行かれました?」


「いえ。

…嫌われている様でしたので行く必要はないかと。」

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