欲と幸
いつだったか俺は思ったことがある。
ホントの幸せは満足に生きることかそれとも無意味に堕落してしまうことか…
幸せというのは不確かなもので俺の望む幸せと彼の望む幸せは必ずしも一緒とも限らず、必ずしも違うとも限らない
もしだ、世界征服なんてありきたりな悪役のセリフが俺に似合うのであれば俺は幸せで溢れている世界を征服してみたいと思う
幸せとはなにか、幸せとは…?
目覚めが悪い、いつもであれば心地よい光の差し込み気持ちよく目が覚めるはずなのだがとても気持ちいいと言えるような気分ではない
別に環境も体調も悪くは無い、あぁでも環境は少しいつもより悪いのかもしれない
寝返りをするたびに汚れた白い羽根が飛び出す
唐突で悪いとは思うが俺は天使だ。
汚れているからといいよく聞く堕天使なんてものではない、普通の天使だ。
「早く体を起こしてくれないか、時間はあるとはいえいつかはお前をあいつらは血眼になって探すだろうよ、めんどくさいことにお前はあいつら天使にとって厄介な存在なんだ理解してくれ」
寝ぼけた体をゆっくりと起こし声にする方をゆっくりと向く
声の主は髪は黒く、瞳は引き込まれるような美しい青、顔も美形であり白くこれを人はイケメンというのだろうか
「んなこた、わかってる、捕まらなきゃいいんだ、俺の邪魔をするやつは片っ端から潰す。どうせ終わるんだ、全部消しちまえばいい」
俺は青い瞳を持つ彼にきつい目線を送る
こんな世界どうにでもなってしまえばいい、きっとそう思ってるのは俺だけではないはずなのだ。
「でもほんとにいいのか?俺はいいよ?でもお前はそのうち気づき後悔する、お前の罪は晴れてもお前の後悔は消えないぞ?」
「罪なんかねぇよ」
青い瞳を持つ彼は控えめに笑う、彼の笑う顔は裏があるように見える、青い瞳は確かに綺麗で美しいでも、どこか憂鬱そうな瞳だった
「....そうだったな」
暖かい光が入ってこないこの薄暗い部屋に舞う埃が今の俺たちの気持ちを表すようだった。
薄暗く寒い、それもそのはずここは、数年前に崩壊したと思われる村の民家のひとつだった。正確には俺たち天使と敵である悪魔の神を争う戦争に巻き込まれた村の跡地であろう、すでに生きているものはここにはおらず、残ったのはこの腐りはてた木屑の塊ばかりだった。