『学園国家サルビア』
パチッパチッ...火花の弾ける音がする。
周りを見渡す。
死体、死体、死体。
「なんで...こうなっちゃったんだろうなあ...。」
体が重い。
両手で顔を覆う。
ネチョ..
手を顔から離すと、真っ赤になった自分の手が見える。
足元に転がっている死体から剣をとり、その剣の切っ尖を自分に向ける。
「...ごめんな、シズク。もうお兄ちゃんには、何も残ってないんだ。」
両手で剣のグリップを強く握る。
グサッ...
♦︎
ピピピピッ、ピピピピッ、ピピp
目覚まし時計を止め、むくりと布団をめくりながら起き上がる。
「ケントー!朝ごはんできてるよ、早く降りて来なさい!!」
一階から母が自分を呼ぶ声が聞こえる。
「ふー...よし行くか。」
のそりのそりと気怠そうに階段を降りていきリビングに着くと、そこにはもうご飯を食べ始めている母と妹がいた。
「...珍しく早いな、イズミ。」
「そう?」
「ぷっ。」っと母が噴き出す。
頬を膨らませて「何よー。」と妹が返す。
「聞いてよケント。この子、今日から学園だからってはしゃいじゃって、小学生かっての。」
「なっ!ちがっ」
「なるほど。」
「なるほどじゃない!」
「あははは」母がまた噴き出す。
「それはそうと、イズミも今日から学園かー。寂しくなるわねぇ。」
「...今みたいに、新学年始まる前には帰ってくるからあんまり変わらないだろ。」
「それでも、ほとんど家にはいなくなるわけじゃない。変わるわよ。」
「まぁ、そうか。」
支度も終わり、家を出る時間になる。
「うん!イズミもケントも制服似合ってる!」
「俺は去年から着てるだろ...」
母は、涙ぐみながら「頑張ってきなさい。」と言った。
「「行ってきます。」」
俺の住むアルビレオ帝国では15歳になった子供を3年間サルビアで過ごさせるという決まりがある。文面だけ見ると子供を働かせに行くように見えるが、サルビアというのは労働所などではなく学園だ。目的は、子供達に学ばせることだ。しかし、ここで学ぶのは数学や、国語などの知識ではない。
学ぶものは、権力だ。
学園ではあるものによって生徒がランキング付けされていく。そのランキングの順位が高ければ高いほど学園内での権力を得る。そのランキングの上位10名は生徒会役員と呼ばれ、その10名が生徒たちを操り学園を運営している。その様子がまるで国のようであることから、学園はこう呼ばれている。
学園国家サルビア、と。
♦︎
「...ここが、サルビア。」
「ああ、お前が3年間過ごす場所だ。」
「でっかーーーい!」
目の前にはとても現実のものとは思えないような巨大な城がそびえ立っていた。
そしてその城の周りはとてつもない数の人で埋め尽くされていた。
「私、今日からここで過ごすの?」圧倒されているようだった。
「そうだ。」
「...学園内で迷子になりそう。」
「安心しろ、1年間過ごしてきた俺でも今だに迷うときがある。」
「何も安心できないんだけど...」妹は呆れ顔でそう言った。
「じゃあ俺は二年生の寮に向かうから、また後で会おうな。...イズミ?」
イズミは違う方を見ていて、俺の話は全く聞こえていないようだった。
「どうした?」
「兄さん、あれ...なに?」
そう言ってイズミが指差した方向には首輪をされてその首輪から伸びている鎖で青年に引っ張られている少女の姿があった。
「...昨日話しただろ。」俺は呆れたような声でそう言った。
「この学園では権力が全てだ。そしてその権力はランキングの順位で定められている。ランキングには五つの階級がある。Sランク、Aランク、Bランク、Cランク、Dランクの五つだ。一つ、二つの差だったら命令されてもある程度拒否権を行使できるからああいうことにはならない。だが、三つ以上の階級差が生じたら話は別だ。SランクにCランク以下は、AランクにDランクはどんな命令をされても拒むことが出来ない。それがランキング制度だ。」
「そんな...あの人にも...あの人にも人権はあるはずでしょ!?アルビレオ帝国の法律で定められているじゃん!」
「だからここは、学園国家と呼ばれているんだ。この名前は伊達や酔狂で使われているわけじゃない。ここの中ではこのランキング制度こそが法なんだ。」
「そんな...」イズミは相当ショックを受けている様子だった。
「じゃあ...私にもああなる可能性があるってこと?」
「ああ、ある。...だからお互い頑張ろうな。Cランク以上に位置していれば大丈夫だから、そんなに難しいことじゃない。」
「そっか、そうだよね。」
「それじゃあ、寮行くな?」
「うん、また後で。」
俺には前世の記憶がある。しかもこことは違う世界の記憶だ。その世界では俺は、陳腐な言葉だが所詮『最強』だった。前世での俺はその力を思うがままに振りかざしていた。と言っても悪事に使っていたわけじゃない。自分の中の正義に則って自分が良いと思った行動を常に心がけていた。しかし当然その行動をよく思わない奴がいる。当時の俺はそこまで頭が回っていなかった。良いことをすればみんなが喜ぶと思っていた。最初に両親が殺された。次に友人達が殺された。最後に、妹が殺された。俺には力しかなかった、復讐することしかできなかった。そして復讐を終えた後には何も残っていなかった。だから俺は...自分で自分の命を絶った。
気づいたらこの世界でまた生きていた。最初は、自殺しようと思った。でも、今世の自分にはまだ家族がいる。だから死ねない。
過ぎた力は身を滅ぼす、周りを巻き込みながら。
そのことは嫌ってほど前世で学んだ。今世でこそは家族を守ってみせると誓った。だから俺は力を隠す。気づかれないように蓄える。
処女作なので、文章が拙いと思いますがご容赦願います。笑
誤字脱字等ありましたら知らせてもらえると嬉しいです。
完結までよろしくお願いします!