第三話 ポップアップ
視点が切り替わりますので、ご注意ください。
天文二十二年(1553年)
信濃国佐久郡に根を張る望月氏は、甲斐武田家に臣従しつつも独自の動きを続けていた。
望月の里で優良な忍び衆を抱えており、情報収集に大いに活用している。
その望月衆にとって、敵は何も武田家の外部だけではない。
同じく武田家に臣従した各豪族や、そもそも武田家に仕える忍びたちとの暗闘にも明け暮れているのだった。
………。
……。
…。
* * *
私が虎の子を放ち、追従して切り抜けようと飛び出す。
敵は”繚乱苦無”を避けたり打ち落としたり、それぞれ行動を起こして隙が出来ていた。
目論見通りだ。
行けるっ
そう思ったことで、僅かに油断したらしい。
「甘いわっ」
視界の端で敵の頭目が一閃するのが見え、直後に肩が熱を持つ。
どうやら斬られたようだ。
重心が傾くが、それでも転ばぬ様に必死で足を動かす。
しかし背中を蹴られ、無様に倒れ込んでしまった。
何とか起きようと足掻いてみるが、右腕の自由が効かない。
「惜しかったな。」
「ぐぅっ」
斬られた肩口を踏み付けられ、再び突っ伏す。
くそっ
こんなところで……。
悔しさと情けなさで涙がにじむ。
「では、さらばだ。」
刃が逆さに持たれ、首筋を狙う様が何故だかよく分かる。
最期になって、覚醒でもしたというのか。
ははは。
全く以て笑えない。
せめて最期の瞬間まで、己が誇りを持ち続けよう。
そして刃に力が込められて、私の命は……。
………。
……。
…。
* * *
「ニンジャレェッグラリアァーットォォーーッ!」
明らかに場違いな叫び声を上げながら、飛び出してくる物体が一つ。
勿論俺だ。
今まで気配を消してた効果か、突然の奇襲に皆さんビックリ仰天の御様子。
そう。
絶対叫んで発動する忍術・武技だが、場の空気を壊すことにかけては正に逸品。
場合によっては、今回みたいにビックリし過ぎて固まらせる効果もある。
副次効果も甚だしい。
とりあえず、まずは寄って集ってボコッてた奴らをデストローイ!
ボコられてたアンノウンのNPCは、まあ流れで決めよう。
見張りの一人に珍しく決まり、残りの二人にもスプラッシュダメージが入る。
続けて俺のターン!
「レッコォーゥ、ケーンッ!」
手裏剣状の何かが飛び、頭目と思しき男に突き刺さる。
この技は「烈光券」
券の字が明らかに誤字なのに、運営は頑なに認めずそのままだ。
使用すると「レッコォーゥ、ケーンッ!」と叫び、気で成形された菱形の手裏剣を投げ付ける。
物理法則を無視して、ひたすらまっすぐ飛ぶ。
何かにあたるか、一定時間経過しないと消えることはない。
「手裏剣」との違いは、あっちが黒いことに対してこっちは青い。
あとこっちは忍術で、向こうは武技。
そんだけだ。
使い勝手もほとんど変わらず。
運営の拘りには付いて行けん。
おっと、スプラッシュダメージを受けた一人が逃げようとしてるな。
「飛ばし苦無!」
叫んで武技を発動、苦無を飛ばして撃ち落とす。
つーか、もう一人はスプラッシュダメージだけで死亡判定になったようだ。
うむ。
正に死屍累々。
中々にスプラッタな光景だが、ゲームと思えば然したるものでもない。
さて、ボコられてた死を覚悟していただろうユニークNPCの様子は、と。
おーおー、流石にポカンとしてるな。
肩を斬られて動かないであろう右手で、なおも刃を離さないのは褒めるべきかな。
まあ、それはそれとして。
ユニークNPCよ、どう出る?
そちらの行動によってはデストロイだぜっ!
NPCコマンド? 1.警戒して構える 2.謝意を示す 3.頑張って逃げる
或いはその他。次回も一週間後くらいの更新を予定しています。