第二話 エンカウント
視点が切り替わりますので、ご注意ください。
信濃国佐久郡。
甲斐武田を中心とした諸勢力に翻弄される中小豪族たちは、如何にしても生き残るべく策動していた。
そして信州忍びたちも、生き残りをかけて各処へ売り込みを図り、奮闘している。
彼らに共通して必要なものは、新鮮で有益な情報。
即ち、忍び込む力を持つ者たちの間でも、様々な駆け引きや暗闘が繰り広げられていたのだった。
………。
……。
…。
* * *
今回の仕事は割が良かった。
敵陣に忍び込み、絵図を盗んで持ち帰る。
それだけだ。
順当に仕事をこなし、あとはこの竹林を抜ければ最速で戻るのみ。
今しばらく油断せず、気を張って進もう。
そう思っていたが……。
「──ッ」
眼前で何かが煌めいた。
それが刃だと認識する前に身体は反応し、急停止。
気付けば前方に二人と右に一人、後ろにも一人居る。
私が此処に至るまで気付けないとは、不覚……。
チッ、どこでしくじったのか。
「その懐の絵図を渡せ。さすれば命まではとらぬ。」
正面に居る二人のうち、頭目と思しき男が言って来る。
相対してハッキリ判る。
コイツ、強い。
敵わないかもしれない。
しかし……。
「断る!」
この仕事は信用が命だ。
私の返答如何で己が信用はおろか、里の信用まで係って来る。
いくら私が里の有力者一族でも、おめおめと逃げ帰れば明日はない。
「ふっ、まあ我はどちらでも良い。殺すも殺さぬも同じことよ。」
「舐めるな。押し通るッ」
* * *
戦いは圧倒的に不利だった。
始めから判ってはいたが、ここまで差があるとは……。
まだ命があるのは、頭目一人で相対しているからだ。
他の三人は私が逃げないよう見張っているようで、手を出してこない。
そこに、唯一の突破口がある。
私の虎の子、”繚乱苦無”を出せば隙を見出すことくらいは出来るはず。
しかし……。
「何かを狙っておるようだが、それが当たると良いなぁ?」
眼前の敵もそれが判ってるようで、常に警戒されてる。
しかも余裕なのか、笑いながら。
このままじゃ……。
くっ、何を弱気な。
私は必ず生きて戻り、里の力と成らねばならんのだ!
止むを得ない。
ここは乾坤一擲、勝負をかけるっ
「むっ、来るか!」
薄笑いで楽しんで居られるのも今のうちよっ
食らえ、”繚乱苦無”!
………。
……。
…。
* * *
ふーむ。
NPC同士の戦い、といった感じか?
何時もそうだが、依頼には詳細がない。
受注したらクエストが始まり、時折イベントが発生することもあるが基本フリーだ。
好きに動いてたら何時の間にかストーリーに巻き込まれてて、クリアするという流れが多い。
ま、俺はロールして自由に遊ぶだけだし。
細かいとこはオマケのようなもんだ。
NPCにも幾つかある。
吹っ飛ばされるだけの雑魚から、重要なユニークNPCや特に意味が無いユニークNPCまで。
クエストで関わるNPCは、選んだ職によって大体決まってくる。
ニンジャの俺は関わるNPCも大体は忍者で、たまに侍とか商人もいたりするか。
稀に、大名級の奴らと会うこともあるけどな。
さて。目の前の奴らは皆、忍者だな。
因みに、ユニークNPCも余裕で吹っ飛ばせる。
全てを敵に回すロールだって出来るし、それでも何らかのエンディングに辿りつく。
実に素晴らしい。
と言う訳で、今の俺に選べる選択肢は大体三つ。
一つ、弱きを助け、強きを挫く!
二つ、勝ち馬に乗るぜっ!
三つ、デストローイ!
何もせずに様子見、なんて無粋な選択はないわな。
とは言え。
一番でも二番でも、結果的にデストロイしちゃうことも多い。
見られたからには殺す的な意味で。
NCPに比べてプレイヤーの強さは圧倒的。
不意を突かれたり油断したりしても、余程でないと負けやしない。
因みに負けちゃうと、「コンチニュー?」って嘲るような声が響いてくる。
誰が好き好んで嘲られるかってんだ!
負けることよりも、この声が聞きたくない。
いや本気で。
と言う訳なんだが。
さてさて、どうしよっかなー?
1.は王道系
2.は邪道系
3.は外道系
これら以外の選択肢は今のところ思い付きませんが、何かあれば教えて下さい。
次回の更新は一週間後くらいを予定しています。