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第一話 ログイン

皇紀三千某年、俺はとあるロールアクション・プレイングゲームにハマっていた。

様々な立場や職業を選び、ロールしてアクションするゲームである。

俺が選んだ職は”ニンジャ”


見た目は濃いグレーの装束に身を包み、帷子を着込んて頭には鉢巻。

腰に小太刀を差して、数々の小道具を仕込んだ闇の戦士。


古き時代に実在し活躍するも、時代が下るに従い淘汰されていった、あの忍者をオマージュした職らしい。

絶対こんな奴いねぇだろとは思うが、まあゲームだ。

ただの遊びだし、多少のおフザケも許容範囲だろう。


さて、このニンジャには数多の忍術と武技が搭載されている。

そりゃあもう、把握しきれん程に。


多種多様な場面で使用出来るようにと設定されたらしい、無駄に思える程数多くの技たち。

一部では、忍術や武技を発見すると言う遊び方もあると皮肉られている。


噂では四百七十個あるとか何とか。


そして忍術や武技を使用すると、その技名を無駄に爽やかなイケボで叫ぶ。

これがもう、本気で叫ぶ。


叫んだら忍べないだろと言う意見は、技名はカッコよく叫ぶべきとの運営の方針により圧殺された。

OFFに出来ないと言う仕様には、当初から賛否両論あったが未だに修正されてない。


まあ多数を占める、ニンジャ以外の職なら大丈夫だったのも大きい。

小数派だから仕方ないね。



そんな武技の例を上げてみよう。



例えば「炎龍拳えんりゅうけん

使用すると、「炎龍拳!」と叫び、両手でポーズをとって技が発動する。

効果は周囲の水を炎で相殺させること。

その際、炎の龍がバックに翻る演出が為されて格好良い。

周囲に水が無くても使用可能だが、何も起きずにポーズをとって叫ぶだけで終わる。

ネタとしてはアリかも知れない。



例えば「手裏剣しゅりけん

使用すると「シューリケーンッ」と叫び、気で形成された菱形の手裏剣を投げ付ける。

物理法則を無視して、ひたすらまっすぐ飛ぶ。

何かにあたるか、一定時間経過しないと消えることはない。

ジャンプ中に使用すると、突然地上と同じモーションを取って投げ付ける。

傍から見ると、その動きは非常にキモイと有名である。



実はどの技も共通で、どこでも使用可能という特徴がある。

効果は適正な場所でしか現れないから意味は薄いが、必殺変なポーズが可能。



このように、中々キワモノ揃いな忍術と武技たちだが、中でも逸品と言えるものがある。

それがこれ「ニンジャ・レッグ・ラリアット」


使用すると、「ニンジャレェッグラリアァーットォォーーッ!」と叫びながら飛び蹴りをかます。

直撃した相手は吹っ飛び、周囲にスプラッシュダメージを撒き散らす。


逸品の理由は、何と言っても使い辛いこと。


武技を発動させるとまず予備動作。

腰を捻り、上体を反らす。

そして叫びながらの飛び蹴りである。


短いながらも予備動作がある時点で、プレイヤー相手にはバレバレ。

技としては、真直ぐ正面に向かって飛び蹴りするだけ。

全てに共通ではあるが、叫ぶ時点で雑魚でも気付くから奇襲も出来ない。


そんな使い難い武技なのだが、つい使ってしまう。

他の忍術や武技と異なり、やけに甲高い声で息継ぎなしで発声するアレ。

ちょっとした中毒と言っても過言ではない。



ニンジャ以外のロールである、例えば”サムライ”とかだとこうなる。


武技「鬼切おにぎり

通称オニギリ。

発動すると、頭上段から「鬼、ギリィィィーーッ」と叫んで全力で振り下ろす。

名称はともかく、これと言って問題はない。



例えば”リキシ”だとこう。


武技「寄り切り」

相手を掴んでいる状態で発動すると、「ゥよりぃきりぃィーーッ」と叫んで相手を寄り切る。

これも問題ない……?

見た目はともかく、叫んだところで問題ない!



だってのに、ニンジャときたら……。



そう思いつつも、今日も今日とてロールでプレイするニンジャな俺。


「さーて、何か良い依頼クエストはあるかなー?」


自由に駆け回っても良いが、どこぞのお偉いさんに雇われたり依頼をこなすのも楽しい。

コンソールに入って来るメッセージを確認し、目新しい依頼が無いがを検索。


俺が好んでプレイするのはJAPONステージ。

ロールの設定では信州の隠れ里を拠点とする、凄腕のニンジャとなっている。


ステージにはJAPON以外にも、DAIMINやHANTO、ENTO、EZOCHIといったものがある。

他にもより大きなワールドワイドステージもあるが、やっぱニンジャはJAPONだよな。


おっと、面白げな依頼を発見。


【NEW!】「JAPON全土を網羅せよ、最強ニンジャはお主でござる!」


依頼の表記が頭悪いのは何時もの事だ。

ふむ、この依頼は初見だな。よし、今回はこれに決めた!


受諾ボタンをポチッとな。


さ、暴れるぜー!



開始ポイントは信州某所の廃屋か。


さて、ここからは全力でロールするぞ。

ゲームだからこそ、全力で楽しまなければ損と言うものだ。


「三印・気配周波ッ」


早速、印を結びながらイケボで叫ぶ。


自分の気配を殺し、周囲の気配を察知し、意識の向き先を知ることが出来る。

素晴らしく便利な忍術だ。


これで叫びさえしなけりゃ、万々歳なんだがなー。


おっと、早速気配察知に引っかかったな。


アンノウンが一名。

早歩きで移動中、どうやら気付かれてはないようだ。


その先にはアンノウンが四名。

先の一名とは仲間なのか何なのか。


一先ず様子を見るとしよう。



第一話では片鱗も見えませんが、本作は迷い込み系で歴史が舞台の作品です。

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